だれウマさんが紹介し、SNSで話題になっている「柿プリン」。
材料は、
- 熟した柿
- 牛乳
の2つだけ。
卵もゼラチンも寒天も使わないのに、冷やすとプリンのように固まります。
「なんで?」
と不思議に思った人も多いでしょう。
実はこの現象、身近なお菓子でいえば、
フルーチェが牛乳を入れると固まる仕組みにかなり近い
と考えると分かりやすいです。
ポイントになるのが、柿に含まれる「ペクチン」と、牛乳に含まれる「カルシウム」。
ただし、柿プリンの場合はそれだけでは完全に説明できない部分もあります。
今回は栄養士の視点から、柿と牛乳だけで固まる不思議な仕組みをできるだけ分かりやすく解説します。
- 結論:柿のペクチンと牛乳のカルシウムが大きく関係
- つまり「天然の凝固剤」が柿の中にある
- そもそもペクチンとは?
- ジャムが固まるのもペクチン
- でも柿プリンは砂糖を入れない
- キーワードは「低メトキシルペクチン」
- 低メトキシルペクチンはカルシウムで固まりやすい
- イメージは「ペクチン同士をカルシウムが橋渡し」
- 「フルーチェと同じ?」
- 「天然フルーチェ」みたいなもの?
- なぜ熟した柿を使うの?
- 熟成するとペクチンの状態も変わる
- だから熟した柿のほうが作りやすい?
- ただし「熟せば熟すほど必ず固まる」ではない
- タンニンも関係している?
- 牛乳のたんぱく質と反応する可能性
- ただし「タンニンだけが原因」とは言えない
- 実は水でも固まることがある
- ペクチン+カルシウムだけでは説明し切れない
- だから「科学的には意外と複雑」
- フルーチェとの大きな違い
- 柿は1個ずつ成分が違う
- 牛乳の種類も影響する?
- フルーチェでも牛乳の種類が重要
- 柿プリンでも同じ結果になる?
- 豆乳ではどうなる?
- フルーチェではカルシウム強化豆乳なら固まる場合も
- 豆乳柿プリンは別記事で検証
- 牛乳のカルシウムはどんな状態?
- 牛乳はただの「白い水」ではない
- 栄養士目線では「食品化学の実験」みたいで面白い
- 「固まる=腐った」ではない
- ただし衛生管理は必要
- 固まり方に差が出る理由
- つまり「天然素材だからブレる」
- 固まらないときは何が原因?
- 「柿1:牛乳0.5」が目安
- 牛乳を増やしすぎると薄くなる
- なぜ「冷やす」の?
- ゼラチンとは固まる仕組みが違う
- 卵プリンとも全く違う
- 柿プリン・フルーチェ・普通のプリンを比較
- まとめ
結論:柿のペクチンと牛乳のカルシウムが大きく関係
柿プリンが固まる理由として有力なのが、
柿に含まれるペクチンと、牛乳に含まれるカルシウムの反応
です。
ペクチンは果物や野菜の細胞壁などに含まれている多糖類の一種です。
条件がそろうと、水分を抱き込みながら網目状の構造を作り、食品をゼリー状・ゲル状にする性質があります。
つまり「天然の凝固剤」が柿の中にある
通常、プリンやゼリーを固めるときには、
- 卵
- ゼラチン
- 寒天
などを使います。
しかし柿プリンでは、
柿そのものに含まれる成分がゲル形成に関わる
ため、別の凝固剤を加えなくてもプリン様の状態になります。
そもそもペクチンとは?
ペクチンは、果物や野菜の細胞同士をつなぐような役割を持つ成分です。
特に、
- りんご
- 柑橘類
- 柿
などの果物に含まれています。
ジャムが固まるのもペクチン
ペクチンと聞いてピンとこなくても、
ジャムがとろっと固まる成分
と考えると分かりやすいでしょう。
ジャムでは一般的に、
- ペクチン
- 糖
- 酸
などの条件がそろうことでゲル化が進みます。
でも柿プリンは砂糖を入れない
ここが柿プリンの面白いところです。
ジャムでは砂糖や酸が重要ですが、柿プリンは、
柿+牛乳だけ
で固まります。
これは、柿の中に含まれるペクチンの種類や状態が関係していると考えられています。
キーワードは「低メトキシルペクチン」
ペクチンには、大きく分けて、
- 高メトキシルペクチン
- 低メトキシルペクチン
があります。
柿プリンで注目されているのが、
低メトキシルペクチン
です。
低メトキシルペクチンはカルシウムで固まりやすい
低メトキシルペクチンには、
カルシウムなどの金属イオンと結びついてゲルを作る
性質があります。
そのため、
柿のペクチン
+
牛乳のカルシウム
という組み合わせによって、網目状の構造が作られ、水分がその中に取り込まれると考えられます。
イメージは「ペクチン同士をカルシウムが橋渡し」
少しイメージしてみましょう。
ペクチンを長いひもだとします。
そこへカルシウムが入ると、
複数のペクチン同士をカルシウムが橋のようにつなぐ
ことがあります。
すると立体的な網目構造ができ、その中に水分を抱え込むため、液体だったものがゲル状になります。
「フルーチェと同じ?」
かなり近いです。
ハウス食品は、フルーチェについて、
フルーチェに含まれる果物由来のペクチンと、牛乳に含まれるカルシウムが反応して固まる
と説明しています。
つまり、
フルーチェ
=ペクチン+牛乳のカルシウム
柿プリン
=柿由来のペクチン+牛乳のカルシウム
という点では非常によく似ています。
「天然フルーチェ」みたいなもの?
かなりざっくり表現するなら、
「柿そのものを使った天然フルーチェのような現象」
と考えるとイメージしやすいでしょう。
ただし、フルーチェは製品として安定して固まるように成分や配合が調整されています。
一方の柿は自然の果物です。
そのため、柿プリンは毎回まったく同じように固まるとは限りません。
なぜ熟した柿を使うの?
今回のレシピでは、
熟した柿
を使うことがポイントになっています。
果実が熟すと、果肉はどんどん柔らかくなります。
これは、果実の細胞壁にあるペクチンなどが変化するためです。
熟成するとペクチンの状態も変わる
果物が熟していく過程では、
- ペクチンの分子量
- 重合度
- メチルエステル化の状態
などが変化します。
研究では、熟した柿に低メトキシルペクチンが存在し、それが牛乳中のカルシウムと反応してゲル形成に関わる可能性が考えられています。
だから熟した柿のほうが作りやすい?
熟すことで果肉そのものがミキサーにかけやすくなり、なめらかなペーストになります。
さらにペクチンの状態も変化するため、
熟した柿を使うことがプリン状の仕上がりにつながる可能性があります。
ただし「熟せば熟すほど必ず固まる」ではない
ここは注意が必要です。
柿は天然の果物なので、
- 品種
- 熟度
- 保存状態
- 個体差
があります。
熟度だけで固まり方が完全に決まるわけではありません。
タンニンも関係している?
柿といえば、
タンニン
も特徴的な成分です。
特に渋柿の渋みの原因として知られています。
タンニンはたんぱく質と結合しやすい性質を持っています。
牛乳のたんぱく質と反応する可能性
牛乳には、
- カゼイン
- 乳清たんぱく質
などのたんぱく質が含まれています。
柿に含まれるタンニンが、こうした牛乳たんぱく質との相互作用に関わっている可能性も考えられます。
ただし「タンニンだけが原因」とは言えない
柿プリンのゲル形成は、
ペクチンだけでも、タンニンだけでも単純に説明できる現象ではない
と考えたほうがよいでしょう。
実は水でも固まることがある
ここがさらに面白いところです。
柿プリンについての研究では、
牛乳ではなく蒸留水と混ぜてもプリン様のゲルが形成された例
が報告されています。
つまり、
「牛乳のカルシウムがなければ絶対に固まらない」
という単純な仕組みではない可能性があります。
ペクチン+カルシウムだけでは説明し切れない
研究では、柿と牛乳によるゲル化について、低メトキシルペクチンとカルシウムの反応が妥当と考えられる一方、
ペクチン以外の要因もゲル形成に関係している可能性
が示されています。
だから「科学的には意外と複雑」
SNSでは、
「柿のペクチンと牛乳のカルシウムで固まる!」
と簡単に説明されることがあります。
大まかな理解としては間違いではありません。
ただ、より正確には、
ペクチンとカルシウムを中心に、柿に含まれる複数の成分が関わってプリン様ゲルが形成されている可能性がある
と考えるのが適切です。
フルーチェとの大きな違い
フルーチェは食品メーカーが設計した加工食品です。
そのため、
- ペクチン量
- 酸度
- 糖度
- 配合
などが製品ごとに調整されています。
一方、柿プリンは天然の柿を使います。
柿は1個ずつ成分が違う
同じ品種でも、
- 熟し具合
- 収穫時期
- 栽培環境
- 保存方法
などで成分は変わります。
そのため、フルーチェほど安定して同じ硬さになるとは限りません。
牛乳の種類も影響する?
牛乳にはカルシウムが含まれています。
そのため、ペクチンとのゲル形成を考えると、
使用する乳製品のカルシウム量も仕上がりに影響する可能性
があります。
フルーチェでも牛乳の種類が重要
ハウス食品では、フルーチェについて、牛乳の種類によってカルシウム量などが異なるため、固まり方が変わると説明しています。
フルーチェでは、
- 種類別「牛乳」
- 成分調整牛乳
- 低脂肪牛乳
- 無脂肪牛乳
などが使用可能とされています。
一方、加工乳・乳飲料などでは固まらない場合があります。
柿プリンでも同じ結果になる?
ただし、フルーチェのメーカー公式条件を、そのまま柿プリンへ当てはめることはできません。
柿プリンは別の食品だからです。
「フルーチェで固まる牛乳なら柿プリンも必ず固まる」
とは断定しないようにしましょう。
豆乳ではどうなる?
ここで気になるのが、
「牛乳を豆乳に変えたら?」
という疑問です。
一般的な豆乳は、牛乳よりカルシウムが少ない製品があります。
そのため、牛乳と同じ条件で必ず固まるとは限りません。
フルーチェではカルシウム強化豆乳なら固まる場合も
ハウス食品では、フルーチェについて、
100mlあたりカルシウム110mg程度を含む豆乳
であれば、冷蔵庫で1時間ほど冷やすことで固まると案内しています。
一方、一般的な成分無調整豆乳ではカルシウムが少なく、固まらないとしています。
これは柿プリンそのものの検証ではありませんが、ペクチンとカルシウムの関係を理解するうえで参考になります。
豆乳柿プリンは別記事で検証
柿プリンの場合、ペクチン以外の要因も関係するため、
豆乳=絶対固まらない
とも断定できません。
牛乳以外の代用については別記事で詳しく整理します。
牛乳のカルシウムはどんな状態?
牛乳中のカルシウムの多くは、
カゼインミセル
と呼ばれる構造と関連して存在しています。
農林水産省によると、牛乳中のカルシウムの約3分の2はリン酸カルシウムとしてカゼインと結びつき、カゼインミセルを形成しています。
牛乳はただの「白い水」ではない
牛乳の中には、
- 水分
- たんぱく質
- 脂質
- カルシウム
- 乳糖
など、さまざまな成分が複雑な状態で存在しています。
そのため、柿と混ぜたときにも複数の相互作用が起きる可能性があります。
栄養士目線では「食品化学の実験」みたいで面白い
私は栄養士ですが、今回の柿プリンは、
家庭で作れる簡単なおやつでありながら、食品化学としてかなり面白い現象
だと思います。
果物に含まれる多糖類と牛乳のミネラルが組み合わさり、加熱も凝固剤もなしに食感が変わる。
普段何気なく食べている食品の中でも、こうした化学反応はたくさん起きています。
「固まる=腐った」ではない
牛乳が固まると、
「傷んでいる?」
と思うかもしれません。
しかし柿プリンの場合は、ペクチンなどの成分によって意図的にゲル状になっているものです。
正常に作った柿プリンが固まること自体は、腐敗とは別の現象です。
ただし衛生管理は必要
柿プリンは加熱しません。
そのため、
- 柿をよく洗う
- 清潔なミキサーを使う
- 清潔な容器に入れる
- 作ったらすぐ冷蔵する
- 早めに食べる
ことが重要です。
固まり方に差が出る理由
柿プリンの仕上がりが毎回違う可能性があるのは、
- ペクチン量
- ペクチンの状態
- 柿の熟度
- 品種
- 牛乳量
- 牛乳中のカルシウム
など複数の条件が関係するからです。
つまり「天然素材だからブレる」
市販のゲル化剤なら分量を量ればかなり再現性があります。
しかし柿の場合、
天然の果実そのものを凝固材料として使っている
ようなものです。
多少の個体差が出るのは自然です。
固まらないときは何が原因?
代表的に考えられるのは、
- 柿の状態
- 牛乳を入れすぎた
- 使用した飲料の種類
- 冷やす時間が短い
などです。
詳しい失敗原因については次の記事で解説します。
「柿1:牛乳0.5」が目安
だれウマさんのレシピでは、
柿に対して牛乳を半量
加えます。
たとえば、
| 柿 | 牛乳 |
|---|---|
| 100g | 50g程度 |
| 150g | 75g程度 |
| 200g | 100g程度 |
という割合です。
牛乳を増やしすぎると薄くなる
牛乳を多くすると、柿由来の成分が相対的に薄まります。
そのため、プリンというより、
柿ミルクやスムージーに近い状態
になる可能性があります。
なぜ「冷やす」の?
冷蔵庫で冷やすことで、ゲル構造が安定し、プリンらしい食感になりやすくなります。
ただし、固まる反応自体は単純に「冷たいから固まる」というだけではありません。
ペクチンなどの成分同士の相互作用が重要です。
ゼラチンとは固まる仕組みが違う
ゼラチンは、温めて溶かし、冷やすことで網目構造を作って固まります。
一方、柿プリンでは、
柿に元々含まれる成分と牛乳成分との相互作用
によってゲル化します。
卵プリンとも全く違う
普通のカスタードプリンは、
卵たんぱく質の熱凝固
を利用して固めます。
柿プリンは加熱しないため、卵プリンとはまったく違う仕組みです。
柿プリン・フルーチェ・普通のプリンを比較
| 食品 | 主に固まる仕組み |
|---|---|
| 柿プリン | 柿のペクチンなどと牛乳成分の相互作用 |
| フルーチェ | 果物由来ペクチン+牛乳のカルシウム |
| カスタードプリン | 卵たんぱく質の加熱凝固 |
| ゼラチンプリン | ゼラチンのゲル化 |
まとめ
今回は、柿と牛乳だけでプリンのように固まる理由を解説しました。
- 柿にはペクチンが含まれている
- 牛乳にはカルシウムが含まれている
- 低メトキシルペクチンはカルシウムと結びついてゲルを作りやすい
- フルーチェもペクチンと牛乳のカルシウムで固まる
- そのため柿プリンとフルーチェはかなり近い仕組み
- 熟成による柿のペクチンの変化も関係すると考えられる
- タンニンや牛乳たんぱく質などほかの成分も関与する可能性がある
- 研究では蒸留水でもプリン様ゲルが形成された例がある
- ペクチン+カルシウムだけでは完全には説明できない
- 天然素材なので固まり方には個体差がある
一番分かりやすく言えば、
「フルーチェと似ていて、柿のペクチンと牛乳のカルシウムが手をつないで網目を作り、水分を抱え込むことでプリンのようになる」
というイメージです。
ただし、柿の場合はそれだけでは説明できない現象も確認されています。
材料2つの簡単レシピに見えて、実はかなり奥深い食品科学が隠れているデザートです。

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