メイトー「なめらかプリン」などの自主回収について調べていると、一見すると矛盾しているように見える情報があります。
それが、
原料の殺菌液全卵:サルモネラ菌検出
完成したプリンの保存品:サルモネラ菌陰性
という結果です。
「原料が陽性なのに、完成品は陰性ってどういうこと?」
「どちらの検査結果を信じればいいの?」
「製品が陰性なら、原料の陽性は気にしなくていいの?」
と疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、この2つの結果は矛盾しているわけではありません。
なぜなら、原料検査と製品検査では、そもそも調べているもの・段階が違うからです。
今回は食品工場の微生物検査をイメージしながら、「原料陽性・製品陰性」をどう読み解けばよいのか解説します。
- 今回の「陽性」と「陰性」をまず整理
- 原料検査とは?
- 製品検査とは?
- 原料陽性→製品陰性はなぜ起こり得る?
- じゃあ製品が陰性なら、原料陽性は無視していい?
- 微生物検査は「製造した商品全部」を検査しているわけではない
- 「陰性」は“世界中どこにも菌がいない”という意味ではない
- 検査で「陰性」になる仕組みをもう少し簡単に
- 菌は食品の中に均一に存在するとは限らない
- 「検出限界」という考え方もある
- 元品質管理の視点|培地に出た結果だけを見る仕事ではない
- 厚生労働省も「原料・中間体・最終製品」を分けて考えている
- 「原料陽性・製品陰性」をどう読めばいい?
- 原料検査と製品検査についてよくある質問
- まとめ|「陽性・陰性」の前に“何を検査したか”を見る
今回の「陽性」と「陰性」をまず整理
今回のメイトー「なめらかプリン」などの自主回収では、対象商品に使用された原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出されたことが問題となりました。
一方、対象製品については加熱殺菌工程があり、保存品検査ではサルモネラ菌は陰性とされています。
つまり、調べたものを分けると、
| 検査対象 | 今回の情報 |
|---|---|
| 原料の殺菌液全卵 | サルモネラ菌検出 |
| 完成したプリンの保存品 | サルモネラ菌陰性 |
となります。
「同じプリンを2回検査したら結果が違った」という話ではありません。
製造工程の異なる段階にある、別の検体を調べた結果です。
原料検査とは?
食品を作るには、さまざまな原材料を使用します。
プリンであれば、卵や乳原料など複数の原料を組み合わせて製造します。
そして食品工場では、完成品だけを管理するのではなく、使用する原料についても規格や安全性を確認します。
今回問題となった殺菌液全卵には、食品衛生上の明確な成分規格があります。
厚生労働省の「食品、添加物等の規格基準」では、
殺菌液卵は、サルモネラ属菌が検体25gにつき陰性でなければならない
と定められています。
そのため、殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出されたこと自体が、原料側で重要な問題になります。
製品検査とは?
一方、製品検査は製造された食品について品質や衛生状態などを確認するために行われます。
微生物検査では、対象となる食品や目的に応じて、決められた検体を採取して検査します。
今回のメイトープリンでは、保存されていた製品を検査した結果、サルモネラ菌は陰性だったとされています。
つまり、
原料を調べた検査と、完成したプリンを調べた検査では対象が違う
ということです。
原料陽性→製品陰性はなぜ起こり得る?
今回のケースでは、原料と完成品の間に製造工程があります。
単純化すると、
殺菌液全卵
↓
プリン原料として使用
↓
混合・製造
↓
加熱殺菌工程
↓
完成したプリン
となります。
今回の対象製品には、90℃・50分の加熱殺菌工程があるとされています。
サルモネラ属菌は加熱に弱い細菌であり、適切な加熱は重要な食中毒予防策です。
そのため、原料段階と製造後の製品では、微生物の状態が同じとは限りません。
「原料で陽性だったのだから、完成品も必ず陽性になる」わけではないのです。
じゃあ製品が陰性なら、原料陽性は無視していい?
いいえ。
ここが今回の自主回収を理解するうえで重要なところです。
殺菌液卵にはサルモネラ属菌についての成分規格があります。
原料として使用された殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出された以上、
「後から作ったプリンが陰性だったから、原料も問題なかったことにする」
とはなりません。
原料が規格に適合していたかどうかと、完成品の保存品検査がどうだったかは、別々に評価する必要があります。
微生物検査は「製造した商品全部」を検査しているわけではない
ここからは微生物検査そのものについて考えてみましょう。
食品工場で1日に何千個、何万個もの商品を作ったとして、そのすべてを微生物検査することは現実的ではありません。
そもそも食品の微生物検査では、検査するために商品を開封して一定量を採取することがあります。
一度検査に使用した食品を、そのまま商品として販売することはできません。
そのため、決められた方法で検体を採取して検査します。
これがサンプリングという考え方です。
「陰性」は“世界中どこにも菌がいない”という意味ではない
微生物検査のニュースを見ると、
「陰性=菌が完全にゼロ」
と思ってしまうことがあります。
しかし、より正確には、
検査した検体について、定められた方法・条件で対象微生物が検出されなかった
と考える必要があります。
例えば、あるロットから保存品を取り出して検査した場合、その検査結果は非常に重要な情報です。
しかし、それだけで製造された全商品を一つずつ直接検査したことにはなりません。
そのため食品の安全管理は、完成品検査だけに頼るのではなく、
- 原料管理
- 製造工程の管理
- 温度・時間管理
- 設備の洗浄・殺菌
- 二次汚染の防止
- 製品検査
などを組み合わせて行います。
検査で「陰性」になる仕組みをもう少し簡単に
例えば100個の商品があるとします。
そこから決められた方法で検体を採取して検査し、対象となる微生物が検出されなかったとします。
このとき言えるのは、
「検査した検体では検出されなかった」
ということです。
100個すべてを丸ごと検査して「菌が1個も存在しない」と証明したわけではありません。
これは今回の保存品検査が信用できないという意味ではありません。
むしろ、微生物検査とは何を確認できる検査なのか、その範囲を正しく理解することが大切ということです。
菌は食品の中に均一に存在するとは限らない
微生物検査を理解するとき、もうひとつ知っておきたいのが菌の分布です。
食品に微生物汚染があったとしても、必ず食品全体に均一な濃度で存在するとは限りません。
ある場所には存在し、別の場所には存在しないということも考えられます。
だからこそ、検査では、
- どこから検体を採取するか
- どのくらいの量を調べるか
- どの検査法を使うか
- 何を「陽性」「陰性」と判定するか
といった条件が重要になります。
サルモネラ属菌の試験でも、検体量や培養など、定められた検査方法に基づいて判定します。
「検出限界」という考え方もある
検査には、その方法によって検出できる範囲があります。
微生物検査でも、
「検査したけれど検出されなかった」ことと、「対象物全体に絶対に存在しないことを証明した」ことは同じではありません。
ただし、だからといって微生物検査に意味がないわけではありません。
決められた試験法やサンプリング方法を使うことで、食品が求められる規格に適合しているか、製造工程に異常がないかなどを確認する重要な手段になります。
検査結果は、
原料管理や工程管理と組み合わせて使うもの
と考えると分かりやすいでしょう。
元品質管理の視点|培地に出た結果だけを見る仕事ではない
私は以前、飲料メーカーの品質管理で微生物検査に携わっていました。
寒天培地を使った検査などを経験していますが、微生物検査は単純に、
「菌が出た」
「菌が出なかった」
だけを見て終わるものではありません。
大切なのは、
- 何を検査したのか
- いつ採取した検体なのか
- どの工程の検体なのか
- どんな条件で検査したのか
- 前後の製造工程に異常はなかったか
などを合わせて考えることです。
例えば「陽性」という結果が出れば、
「じゃあ商品全部が同じ状態だ」
と即断するのではなく、どの検体から何が検出されたのかを確認します。
反対に「陰性」でも、
「これで世界中のどこにも菌はいないと証明できた」
という読み方はしません。
検査結果は、原料・工程・製品という製造全体の情報の中で読む。
今回のメイトープリンの事例も、この考え方を知っているとかなり整理しやすくなります。
厚生労働省も「原料・中間体・最終製品」を分けて考えている
厚生労働省が示すサルモネラ試験についても、サルモネラの検査は最終製品だけではなく、原料や製造工程の中間体などの微生物汚染を評価する場合にも重要とされています。
つまり食品製造では、
原料
↓
製造途中
↓
完成品
それぞれの段階を見るという考え方があります。
今回、
原料=陽性
保存品=陰性
という結果が並んでいても、検査対象となった段階が違うため、矛盾する結果ではありません。
「原料陽性・製品陰性」をどう読めばいい?
今回の情報を、誤解しやすい表現と一緒に整理してみましょう。
| 表現 | 今回の情報から言える? |
|---|---|
| 原料の殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出された | ○ |
| 完成したプリンからサルモネラ菌が検出された | × |
| 保存品検査ではサルモネラ菌陰性だった | ○ |
| 販売された全商品を検査して陰性だった | × |
| 原料と完成品では検査対象が異なる | ○ |
この違いを押さえるだけでも、今回のニュースをかなり正確に理解できます。
原料検査と製品検査についてよくある質問
原料が陽性なのに製品が陰性になることはある?
あります。原料と完成品は同じ検体ではなく、その間には製造工程があります。今回の対象製品にも加熱殺菌工程があるため、「原料陽性・保存品陰性」という結果そのものは矛盾しません。
製品が陰性なら原料の陽性は問題ない?
いいえ。今回問題となった殺菌液卵には、サルモネラ属菌が検体25gにつき陰性という成分規格があります。完成品の検査結果とは別に、原料が規格に適合していたかを考える必要があります。
陰性なら菌はゼロ?
「検査した検体について、定められた方法・条件で検出されなかった」と理解するのが適切です。製造されたすべての商品に菌が1個も存在しないことを直接証明したという意味ではありません。
全部の商品を微生物検査しないの?
通常、食品の微生物検査では決められた方法で検体を採取して検査します。検査そのものに商品を使用するため、大量生産した商品をすべて販売前に破壊検査することはできません。そのため原料管理や工程管理などと検査を組み合わせます。
今回のプリンは食中毒を起こしたの?
今回の自主回収は、原料の殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出され、食品衛生法上の不適合が判明したことによるものです。自主回収と、実際に食中毒患者が発生したことは同じ意味ではありません。
まとめ|「陽性・陰性」の前に“何を検査したか”を見る
メイトー「なめらかプリン」などの自主回収では、
原料の殺菌液全卵:サルモネラ菌検出
完成したプリンの保存品:サルモネラ菌陰性
という2つの情報があります。
一見すると矛盾しているようですが、原料と完成品という別の段階の検体を調べた結果です。
食品の微生物検査を見るときは、
- 何を検査したのか
- どの工程の検体なのか
- どのくらいの量を検査したのか
- どの検査方法を使ったのか
- その検査結果からどこまで言えるのか
を確認することが大切です。
特に覚えておきたいのは、
「陰性=世の中の全商品に菌が絶対ゼロと証明された」という意味ではない
ということです。
では今回発表された「保存品検査でサルモネラ菌陰性」という言葉は、具体的に何を意味するのでしょうか。
次の記事では、「陰性」という検査結果の意味と限界をさらに詳しく解説します。

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