メイトー「なめらかプリン」などの自主回収について調べていると、少し不思議に感じる情報があります。
今回、対象商品に使用された原料の一部である「殺菌液全卵」からサルモネラ菌が検出されました。
ところが対象となったプリンについては、
- 90℃・50分の加熱殺菌を実施
- 保存品検査ではサルモネラ菌陰性
- 現時点で健康被害の報告なし
とされています。
ここまで見ると、
「それなら、どうして商品を回収する必要があるの?」
と思いますよね。
今回の自主回収を理解するポイントは、
「完成品の検査結果」と「使用した原料が食品衛生法上の規格に適合しているか」は別の問題
だということです。
この記事では、「加熱している」「製品検査は陰性」という情報があるのに、なぜ自主回収するのかを整理していきます。
- まず今回の自主回収を時系列で整理
- 殺菌液卵には「サルモネラ陰性」という規格がある
- 完成品を加熱することと原料の規格は別問題
- 「90℃50分」は何を意味する?
- 保存品検査が陰性でも回収するのはなぜ?
- 「健康危害の可能性」と「法令上適合しているか」も別
- 「回収=完成品からサルモネラ菌検出」ではない
- 逆に「保存品陰性だから絶対安全」とも言えない
- 食品工場では「原料→工程→製品」を分けて管理する
- 元品質管理の視点|「最後の検査がOKなら全部OK」ではない
- 「検査で陰性」と「原料不適合」は矛盾していない
- 「健康被害なし」でも回収することはある
- 90℃50分加熱と自主回収についてよくある質問
- まとめ|「安全性の評価」と「原料が規格に適合しているか」は分けて考える
まず今回の自主回収を時系列で整理
今回の情報は、ひとつずつ分けると理解しやすくなります。
大まかな流れは、
殺菌液全卵を原料として使用
↓
その原料からサルモネラ菌が検出
↓
殺菌液卵の規格に不適合
↓
その原料を使用した対象商品を特定
↓
対象商品を自主回収
というものです。
一方、完成したプリンについては、
プリン製造
↓
90℃・50分の加熱殺菌工程
↓
保存品を検査
↓
サルモネラ菌陰性
という別の情報があります。
この「原料側の問題」と「完成品側の情報」を一緒にしてしまうと、今回の回収が分かりにくくなります。
殺菌液卵には「サルモネラ陰性」という規格がある
まず押さえておきたいのが、今回問題となった「殺菌液全卵」です。
殺菌液全卵は、卵黄と卵白を含む液卵を殺菌処理したものです。
そして殺菌液卵には、サルモネラ属菌についての成分規格があります。
つまり、殺菌液卵として使用される原料についてサルモネラ属菌が検出された場合、
「その後プリンとして加熱すればいいから問題なし」
というだけでは済みません。
原料そのものが求められる規格に適合しているか、という問題が存在するためです。
完成品を加熱することと原料の規格は別問題
ここが今回の最大のポイントです。
例えば食品工場で、
「この原料には○○という規格があります」
と定められていたとします。
その原料が規格に適合していなかった場合、
「でも、この後もっと加熱するからいいですよね」
というだけで、原料の不適合そのものがなかったことになるわけではありません。
今回も、
- 原料の殺菌液全卵に求められる規格
- プリン製造時の加熱工程
- 完成した製品の検査結果
は、それぞれ別の段階の情報です。
後工程に加熱があることと、使用原料が規格に適合していたかどうかは分けて考える必要があります。
「90℃50分」は何を意味する?
今回の対象製品については、90℃・50分の加熱殺菌工程があるとされています。
サルモネラ属菌は加熱に弱い細菌であり、十分な加熱は重要な食中毒予防策です。
そのため、この加熱工程は完成品の健康危害を考えるうえで重要な情報です。
ただし、
「90℃・50分の工程がある」=「原料で確認された食品衛生法上の不適合が消える」
という意味ではありません。
加熱工程は加熱工程。
原料規格は原料規格。
分けて考える必要があります。
保存品検査が陰性でも回収するのはなぜ?
もうひとつ気になるのが、
「保存品検査ではサルモネラ菌陰性」
という情報です。
「完成した商品を検査して菌が出なかったなら、それで安全確認できたのでは?」
と思うかもしれません。
しかし微生物検査の「陰性」には、正しく理解しておきたい意味があります。
一般に検査結果が陰性というのは、
調べた検体について、定められた検査方法・条件のもとで対象微生物が検出されなかった
という意味です。
製造したすべての商品を一つ残らず検査して、
「全商品に菌が1個も存在しないことを証明した」
という意味ではありません。
したがって、保存品検査の陰性結果は完成品の状態を評価するうえで重要な情報ですが、原料の規格不適合を取り消す情報ではありません。
「健康危害の可能性」と「法令上適合しているか」も別
食品回収のニュースでは、
「危険なら回収」
「危険でなければ回収しない」
という二択で考えてしまいがちです。
しかし実際には、それほど単純ではありません。
食品について問題が判明した場合には、
- どのような法令・規格に関係するのか
- どの商品が影響を受けるのか
- 健康危害が起こる可能性はどの程度か
- すでに健康被害が発生しているか
- どの範囲を回収する必要があるか
などを整理する必要があります。
つまり、
「健康被害が起こる可能性が低い」という評価と、「食品衛生法上の不適合がある」という事実は両立します。
今回の件がまさに分かりやすい例です。
「回収=完成品からサルモネラ菌検出」ではない
ニュースの見出しだけを見ると、
「プリンからサルモネラ菌が出たから回収した」
と受け取ってしまう可能性があります。
しかし今回公表されている内容では、サルモネラ菌が検出されたのは使用原料の一部である殺菌液全卵です。
完成したプリンの保存品検査では、サルモネラ菌は陰性とされています。
したがって、
「サルモネラ菌入りのプリンが約1万9千個販売された」
などと表現するのは適切ではありません。
今回回収されているのは、問題となった原料を使用した対象商品です。
逆に「保存品陰性だから絶対安全」とも言えない
反対方向への誤解にも注意が必要です。
「保存品検査で陰性だったなら、対象商品を持っていても食べていいのでは?」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、メーカーが対象商品を自主回収している以上、手元に対象品がある場合は回収案内に従うのが基本です。
検査結果を自己判断で解釈して、回収対象の商品を食べることはおすすめできません。
今回の「陰性」という情報は、
なぜ健康危害の可能性が低いと評価されているのかを理解する材料
として見るのがよいでしょう。
食品工場では「原料→工程→製品」を分けて管理する
食品製造を考えるとき、私は次の3段階に分けると分かりやすいと思います。
①原料
まず、工場へ入ってくる原材料です。
原料にはそれぞれ規格や受け入れ基準などがあり、適切な原料を使用することが食品製造の出発点になります。
②製造工程
次に、原料を食品へ加工する工程です。
加熱、冷却、混合、充填、包装など、それぞれの工程で管理すべきポイントがあります。
③完成品
最後に完成した商品です。
必要に応じて微生物検査や品質検査などを行い、製品が規格に適合していることを確認します。
今回なら、
| 段階 | 今回のポイント |
|---|---|
| 原料 | 殺菌液全卵からサルモネラ菌検出 |
| 製造工程 | プリンを90℃・50分で加熱殺菌 |
| 完成品 | 保存品検査でサルモネラ菌陰性 |
となります。
こうして並べると、今回のニュースがかなり見えやすくなります。
元品質管理の視点|「最後の検査がOKなら全部OK」ではない
私は以前、飲料メーカーの品質管理で微生物検査に携わっていました。
食品工場について一般の人から見ると、
「最後に完成品を検査して合格なら出荷」
というイメージがあるかもしれません。
しかし食品の品質管理は、最後の検査だけに安全性を任せるものではありません。
原料を管理し、工程を管理し、設備を管理し、そのうえで検査も行います。
なぜなら、完成した大量の商品をすべて破壊して検査することはできないからです。
例えばプリンを微生物検査するために開封して検体として使えば、そのプリンを商品として販売することはできません。
だからこそ、
「最後に検査して菌が出なければ大丈夫」ではなく、最初から問題が起こりにくい製造工程を作り、その工程を管理し、さらに検査で確認する
という考え方が重要になります。
今回の事案は、その仕組みを理解するうえでも興味深いケースです。
「検査で陰性」と「原料不適合」は矛盾していない
今回の情報を初めて見ると、
「原料はサルモネラ陽性なのに、完成品は陰性って矛盾してない?」
と思うかもしれません。
しかし矛盾ではありません。
原料と完成品は別の段階の検体だからです。
しかもその間にはプリン製造時の加熱工程があります。
そのため、
原料検査:陽性
完成品の保存品検査:陰性
という結果が同時に存在すること自体はおかしくありません。
重要なのは、それぞれの検査が「何を調べた結果なのか」を確認することです。
「健康被害なし」でも回収することはある
今回、現時点では健康被害の報告はないとされています。
ここでも、
「健康被害がないのに、なぜ回収?」
と思うかもしれません。
しかし自主回収は、すでに食中毒患者が発生してから行うものだけではありません。
問題が判明した食品を流通から取り除き、消費者がさらに購入・喫食することを防ぐという役割もあります。
つまり、
回収された=食中毒が発生した
ではありません。
今回も「自主回収」と「食中毒発生」を混同しないようにしましょう。
90℃50分加熱と自主回収についてよくある質問
90℃50分加熱したならサルモネラ菌は死んでいる?
サルモネラ属菌は加熱に弱く、十分な加熱は重要な対策です。ただし、公表されている「90℃・50分」という製造条件について、公表情報以上に製品中心温度などを推測して安全性を断定するのは避けるべきです。
保存品検査ではサルモネラ陰性なの?
はい。今回公表されている情報では、対象製品の保存品検査ではサルモネラ菌陰性とされています。
ではなぜ回収するの?
対象商品に使用した原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出され、食品衛生法上の不適合が判明したためです。完成品の加熱工程や保存品検査とは別に、原料そのものの規格適合性という問題があります。
自主回収ということは食中毒が起きた?
今回の件で現時点では健康被害の報告はありません。自主回収と食中毒の発生は同じ意味ではありません。
保存品が陰性なら対象品を食べてもいい?
いいえ。回収対象の商品を持っている場合は、メーカーが案内している回収方法に従ってください。保存品検査の結果だけを根拠に自己判断で喫食することは避けましょう。
まとめ|「安全性の評価」と「原料が規格に適合しているか」は分けて考える
メイトー「なめらかプリン」などの対象製品には、90℃・50分の加熱殺菌工程があり、保存品検査ではサルモネラ菌は陰性とされています。
それでも自主回収が行われているのは、使用原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出され、食品衛生法上の不適合が判明したためです。
今回の情報を整理すると、
- 原料:殺菌液全卵からサルモネラ菌検出
- 工程:対象製品には90℃・50分の加熱殺菌工程
- 製品:保存品検査ではサルモネラ菌陰性
- 健康被害:現時点で報告なし
- 対応:対象商品を自主回収
となります。
一見すると「陽性なの?陰性なの?」と混乱しそうですが、調べているものが違います。
原料の検査結果と、完成品の検査結果は同じ検査ではありません。
次の記事では、この「原料では陽性、完成品では陰性」という結果がなぜ矛盾しないのか、原料検査と製品検査の違いからさらに詳しく解説します。

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