福岡市博多区の保育施設で、園児46人と職員2人の合計48人が、嘔吐・下痢・発熱などを訴える感染性胃腸炎の集団発生が確認されました。
医療機関による検査では、園児1人からノロウイルスが検出されています。
今回、福岡市が公表しているのは感染性胃腸炎の集団発生です。
給食が原因の食中毒と確認されたわけではありません。
しかし、保育施設内でノロウイルスが広がっている場合、給食室は無関係ではありません。
なぜなら、保育室から調理従事者や食器、手指などを介して給食室へウイルスが持ち込まれれば、今度は食品を介した感染へつながる可能性があるからです。
今回は、保育施設で感染性胃腸炎が発生したときに、給食室を守るための衛生管理について整理します。
- 今回の発生は園児46人・職員2人
- 園児1人からノロウイルスを検出
- 給食が原因でなくても給食室対策は必要
- ノロウイルスは人から食品へ移ることもある
- だから「保育室だけの感染症」で終わらせない
- 給食室対策① 調理従事者の健康チェック
- 症状がある人は食品を扱わない
- 家族に胃腸炎症状がある場合も注意
- 本人が元気でも安心とは限らない
- 給食室対策② 手洗いを徹底
- 手袋は手洗いの代わりではない
- 手袋は作業ごとに交換
- 給食室対策③ 保育室からの出入りを減らす
- 保育と給食を兼務する職員は特に注意
- 必要なら着替えてから給食室へ
- 給食室対策④ 配膳動線を見直す
- 清潔なものと汚れたものを分ける
- 給食室対策⑤ 使用済み食器の回収
- 食器を触った後に盛り付けへ戻らない
- 洗浄前と洗浄後の動線を分ける
- 食器は十分に洗浄・加熱
- 給食室対策⑥ 調理器具の衛生管理
- 包丁・まな板だけではない
- 蛇口は見落とされやすい
- 給食室対策⑦ 調理済み食品を守る
- 加熱後の食品には素手で触らない
- 給食室対策⑧ 加熱が必要な食品は十分に加熱
- ただし今回、二枚貝が原因ではない
- 給食室対策⑨ 配膳前の子どもの手洗い
- 0~2歳児は大人が援助
- 机も食事前に清潔に
- 給食室対策⑩ おやつも同じ
- 市販菓子でも安心しすぎない
- 給食室対策⑪ 職員間で情報共有
- 発症人数を毎日確認する
- 保育室と給食室が同じ危機感を持つ
- 給食室対策⑫ 記録を残す
- 異常があったら「記録」だけで終わらない
- 給食室対策⑬ 職員不足でも無理をしない
- 1人出勤して感染を広げるほうが影響は大きい
- 今回10月8日・9日に40人発症
- 10月13日の新規発症は0人
- 栄養士として特に気になる「境界線」
- 外から入る人・物を意識する
- 厨房経験から感じる「清潔区域」の意味
- 給食が原因ではないからこそ守りたい
- 家庭でも調理者は注意
- 家庭でも「処理→手洗い→調理」を分ける
- まとめ
今回の発生は園児46人・職員2人
福岡市の発表では、有症状者は、
- 園児46人
- 職員2人
- 合計48人
です。
園児は0歳から6歳まで幅広い年齢にわたっています。
園児1人からノロウイルスを検出
医療機関による検査では、園児1人からノロウイルスが検出されています。
ただし、48人全員が検査で陽性だったわけではありません。
また、給食や特定の食品が原因と確認されたわけでもありません。
給食が原因でなくても給食室対策は必要
感染性胃腸炎が保育室で広がっている場合、給食室では、
- 感染した職員の手指
- 使用済み食器
- 配膳カート
- 返却された食器
- 保育室から出入りする職員
などを介して、ウイルスを持ち込まないよう注意する必要があります。
ノロウイルスは人から食品へ移ることもある
ノロウイルスは、感染者の便や嘔吐物を介して人から人へ広がります。
さらに、感染した人が十分な手洗いをせず食品を扱えば、食品へウイルスが付着する可能性があります。
その食品を別の人が食べれば、今度は食品を介した感染が起こる可能性があります。
だから「保育室だけの感染症」で終わらせない
保育園でノロウイルスが出たときに、
「給食室で患者は出ていないから大丈夫」
と考えるのは危険です。
給食室は食品を扱う場所だからこそ、施設内の感染情報を共有する必要があります。
給食室対策① 調理従事者の健康チェック
まず重要なのが、調理従事者の健康管理です。
毎日、
- 下痢
- 嘔吐
- 腹痛
- 発熱
- 吐き気
などがないか確認します。
症状がある人は食品を扱わない
下痢や嘔吐などの症状がある状態で食品を扱えば、食品へウイルスを付着させる可能性があります。
そのため、症状がある調理従事者は調理業務から外すことが重要です。
家族に胃腸炎症状がある場合も注意
本人に症状がなくても、同居家族が、
- 嘔吐
- 下痢
- 感染性胃腸炎
などを発症している場合は、家庭内で感染している可能性があります。
施設のルールに沿って報告し、必要に応じて業務内容を調整することが重要です。
本人が元気でも安心とは限らない
ノロウイルスでは、症状が軽い人や無症状の人もいます。
そのため、本人が元気そうだからといって、施設内での感染情報を無視してよいわけではありません。
給食室対策② 手洗いを徹底
給食室でのノロウイルス対策では、石けんと流水による手洗いが基本です。
特に、
- 調理開始前
- トイレ後
- 配膳前
- ごみ処理後
- 使用済み食器を触った後
- 保育室へ出入りした後
には丁寧な手洗いが必要です。
手袋は手洗いの代わりではない
使い捨て手袋を使用していても、手洗いは必要です。
手袋の外側へウイルスが付着している場合、外すときに手指へ移る可能性があります。
手袋は作業ごとに交換
同じ手袋で、
- 食材を触る
- 配膳する
- ドアを開ける
- 使用済み食器を回収する
といった複数の作業をすると、手袋そのものがウイルスを運ぶ可能性があります。
給食室対策③ 保育室からの出入りを減らす
感染性胃腸炎が発生している時期は、給食室への不要な人の出入りをできるだけ減らします。
保育室で子どもたちと接触した職員が、そのまま調理区域へ入ることは避ける必要があります。
保育と給食を兼務する職員は特に注意
小規模な保育施設などでは、職員が保育と給食補助を兼務する場合があります。
その場合、
- おむつ交換
- 嘔吐物処理
- 排泄介助
などを行った直後に、そのまま食品を扱わないことが重要です。
必要なら着替えてから給食室へ
嘔吐物処理や排泄介助をした場合は、手洗いだけでなく、衣類やエプロンが汚染されていないかも確認します。
必要に応じて着替えてから調理区域へ入ります。
給食室対策④ 配膳動線を見直す
給食室で作った料理は、保育室へ運ばれます。
その際、
- 配膳カート
- 食器
- トレー
- 取っ手
などが、保育室の環境へ接触します。
感染性胃腸炎が発生している時期は、配膳動線も確認する必要があります。
清潔なものと汚れたものを分ける
給食室では、
これから食べる料理と、食べ終わった後の食器
が交差しないようにします。
使用済み食器には子どもの唾液などが付着しているため、清潔な配膳物と接触させないことが重要です。
給食室対策⑤ 使用済み食器の回収
食後の食器は、保育室から給食室へ戻ってきます。
感染性胃腸炎が流行している場合は、この返却食器を汚染側として扱う意識が重要です。
食器を触った後に盛り付けへ戻らない
使用済み食器を回収した職員が、そのまま手洗いせずに、
- 盛り付け
- おやつ準備
- 調理済み食品
へ触れることは避けます。
洗浄前と洗浄後の動線を分ける
食器洗浄では、
- 汚れた食器
- 洗浄済みの食器
が交差しないように管理します。
洗浄済み食器を置く場所へ、汚れた食器の水滴などが飛ばないよう注意します。
食器は十分に洗浄・加熱
食器洗浄機などを使用する場合は、施設の設備やマニュアルに従って適切に洗浄・加熱します。
洗浄しただけでなく、十分に乾燥させることも重要です。
給食室対策⑥ 調理器具の衛生管理
福岡市は、ノロウイルス対策として、調理台や調理器具について、
- 85℃以上で1分間以上加熱
- 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒
などを案内しています。
器具の材質に応じて適切な方法を選びます。
包丁・まな板だけではない
調理器具というと、包丁やまな板を思い浮かべますが、
- ボウル
- トング
- しゃもじ
- 取っ手
- 冷蔵庫の扉
- 蛇口
なども頻繁に手が触れる場所です。
蛇口は見落とされやすい
手洗い前の汚れた手で蛇口を触り、手洗い後に再び同じ場所へ触れると、手指へ汚染が戻る可能性があります。
手が頻繁に触れる場所も定期的に清掃します。
給食室対策⑦ 調理済み食品を守る
加熱調理した食品であっても、その後に汚染されれば意味がありません。
特に、
- 盛り付け
- 配膳
- 食器へのセット
の工程では、調理済み食品への二次汚染を防ぐことが重要です。
加熱後の食品には素手で触らない
加熱後の食品は、その後再加熱されない場合があります。
トングや清潔な器具を使い、素手で直接触れないようにします。
給食室対策⑧ 加熱が必要な食品は十分に加熱
ノロウイルス対策では、食品を十分に加熱することも重要です。
特に二枚貝などについて、福岡市は、
中心温度85~90℃で90秒以上
の加熱を案内しています。
ただし今回、二枚貝が原因ではない
この加熱基準は一般的なノロウイルス対策です。
今回の福岡市博多区の保育施設で、二枚貝や給食が原因と判明したという意味ではありません。
給食室対策⑨ 配膳前の子どもの手洗い
給食室側だけが清潔でも、食べる側の手にウイルスが付いていれば感染につながる可能性があります。
食事前には、子どもたちも石けんと流水で手を洗います。
0~2歳児は大人が援助
0~2歳児では自分だけで十分な手洗いをするのは難しいため、職員が援助します。
手のひらだけではなく、指の間や指先まで丁寧に洗います。
机も食事前に清潔に
保育室では、普段遊んでいる机で給食やおやつを食べる場合があります。
食事前には机を清潔にし、遊びで付着した汚れを食事へ持ち込まないようにします。
給食室対策⑩ おやつも同じ
給食だけでなく、おやつの時間にも注意が必要です。
手洗い、配膳、食器、机の衛生管理は給食と同様です。
市販菓子でも安心しすぎない
個包装されたおやつ自体に問題がなくても、配る人の手指やテーブルが汚染されていれば、間接的に感染につながる可能性があります。
給食室対策⑪ 職員間で情報共有
給食担当者が、
「今日は何人休んでいるのか知らない」
「保育室で何人吐いているのか知らない」
という状態では対策が遅れます。
施設内の感染状況は、給食担当者にも共有する必要があります。
発症人数を毎日確認する
例えば、
- 嘔吐何人
- 下痢何人
- 欠席何人
- 職員の体調不良何人
などを共有すれば、感染状況の変化を把握しやすくなります。
保育室と給食室が同じ危機感を持つ
感染症対策では、
「保育側の問題」
「給食側の問題」
と分断しないことが重要です。
同じ施設内で子どもたちへサービスを提供している以上、情報を共有する必要があります。
給食室対策⑫ 記録を残す
衛生管理では、
- 調理従事者の健康
- 冷蔵庫温度
- 加熱温度
- 清掃
- 消毒
などの記録を残します。
感染症が発生したときにも、過去の管理状況を振り返る手掛かりになります。
異常があったら「記録」だけで終わらない
例えば、調理従事者に下痢があると記録しても、そのまま調理を続けさせていれば意味がありません。
異常があった場合に、
- 誰へ報告するか
- 業務から外すか
- 代替職員をどうするか
まで決めておく必要があります。
給食室対策⑬ 職員不足でも無理をしない
保育施設では、感染症が流行すると職員自身も休むことがあります。
人手不足になると、
「症状は少しだけだから出勤しよう」
となりやすいですが、食品を扱う職員では特に注意が必要です。
1人出勤して感染を広げるほうが影響は大きい
無理に出勤した1人から感染が広がれば、さらに多くの職員や子どもが休むことになる可能性があります。
短期的な人手確保より、感染拡大を防ぐことが重要です。
今回10月8日・9日に40人発症
今回の福岡市の事案では、
- 10月8日:25人
- 10月9日:15人
と、2日間で40人が発症しました。
施設内で感染性胃腸炎が広がるスピードの速さが分かります。
10月13日の新規発症は0人
その後、10月13日の新規発症者は0人となっています。
感染拡大防止策や健康観察を継続しながら、さらに新たな発症がないか確認する必要があります。
栄養士として特に気になる「境界線」
私は栄養士として保育施設で働いていますが、ノロウイルス発生時に特に重要だと感じるのが、
保育室と給食室の境界線を守ること
です。
給食室内だけをどれだけ清潔にしていても、外からウイルスを持ち込めば意味がありません。
外から入る人・物を意識する
給食室へ入るのは人だけではありません。
- 使用済み食器
- 配膳カート
- 返却トレー
- 連絡書類
なども保育室と給食室を行き来します。
こうした「人と物の動き」を整理することが重要です。
厨房経験から感じる「清潔区域」の意味
厨房では、汚れた物と清潔な物を分けて扱うことが基本です。
感染性胃腸炎が発生した場合は普段以上に、
どこまでが汚染側で、どこからが清潔側なのか
を意識する必要があります。
給食が原因ではないからこそ守りたい
今回、給食が原因の食中毒とは確認されていません。
だからこそ、施設内で感染が広がっている状況から給食室を守り、
新たに食品を介した感染経路を作らないこと
が重要です。
家庭でも調理者は注意
家庭内で子どもがノロウイルスに感染した場合も同じです。
嘔吐物やおむつを処理した人が、そのまま手洗いせず食事を作れば、家族へ感染を広げる可能性があります。
家庭でも「処理→手洗い→調理」を分ける
嘔吐物や便を処理した後は、
- 手袋を外す
- 石けんと流水で手を洗う
- 必要なら着替える
などを行ってから食品を扱います。
まとめ
今回は、福岡市博多区の保育施設で発生した感染性胃腸炎をもとに、ノロウイルス発生時の給食室の衛生管理について整理しました。
- 今回の有症状者は園児46人・職員2人の計48人
- 園児1人からノロウイルスを検出
- 給食が原因の食中毒とは確認されていない
- それでも給食室へのウイルス持ち込み防止は重要
- 調理従事者の毎日の健康確認が必要
- 嘔吐・下痢がある人は食品を扱わない
- 石けんと流水による手洗いを徹底する
- 保育室と給食室の不要な出入りを減らす
- 使用済み食器と清潔な食器の動線を分ける
- 配膳カート・取っ手・蛇口なども衛生管理する
- 調理済み食品への二次汚染を防ぐ
- 施設内の発症状況を給食担当者とも共有する
- 給食室を新たな感染経路にしないことが重要
今回の事案では、給食が原因とは確認されていません。
しかし、施設内でノロウイルス感染が広がっているとき、給食室は「無関係な場所」ではなく、「絶対に感染を持ち込みたくない場所」です。
調理従事者の健康管理、手洗い、配膳、食器回収、職員動線まで含めて管理し、保育室から食品へ感染経路を広げないことが重要です。


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