食品の「保存品」とは何?食中毒や自主回収で保存検体を調べる理由を元品質管理が解説

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メイトー「なめらかプリン」などの自主回収では、

「保存品のサルモネラ菌検査は陰性」

という情報が出ています。

ここで気になるのが「保存品」という言葉です。

「売れ残ったプリンを調べたの?」
「工場では作った商品を取っておくの?」
「どうして販売せずに保存しているの?」

食品工場で働いた経験がなければ、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。

保存品や保存検体は、製造後に問題が判明したとき、その時点の商品を確認するための重要な手掛かりになります。

今回は、食品の「保存品」とは何なのか、食中毒や自主回収が起きたときに何のために調べるのかを、元品質管理の視点も交えて解説します。


食品の「保存品」とは?

食品製造の現場では、製造した商品などの一部を、後から確認できるよう一定期間保存することがあります。

呼び方は現場や制度によって、

  • 保存品
  • 保存検体
  • 保管サンプル
  • 検食

などさまざまです。

ただし、これらの言葉がすべてまったく同じ制度・意味を指すわけではありません。

例えば給食や弁当などで使われる「検食」は、食中毒などが発生した場合の原因究明に利用できるよう、原材料や調理済み食品を一定条件で保存するものです。

一方、食品メーカーが品質管理のために保存している製品サンプルについては、企業や商品、衛生管理計画などによって保存方法や期間が異なることがあります。

そのため、

「食品は法律ですべて○日間保存しなければならない」

と一律に考えないことが大切です。


なぜ食品をわざわざ保存しておくの?

食品は工場から出荷されたあと、全国のスーパーやコンビニなどへ流通していきます。

そして数日、数週間、あるいはそれ以上たってから、

  • 原料に問題が見つかった
  • 消費者から異常の申し出があった
  • 微生物に関する問題が判明した
  • 自主回収が必要になった

といった事態が起きる可能性があります。

そんなとき、

「その日に工場で作った商品は、実際にどんな状態だったのか?」

を確認したくても、すべて出荷してしまっていたら手元に商品がありません。

そこで保存していた製品が、後から調査するための重要な資料になります。


保存品があると「当時の商品」を調べられる

保存品の大きな役割は、

問題が判明したあとから、製造当時の商品を調べられること

です。

例えば微生物に関する問題が発生した場合、保存していた製品について必要な検査を行うことで、

「保存していた完成品から対象微生物が検出されるのか」

を確認する材料になります。

今回のメイトープリンでも、使用原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出された一方、製品の保存品検査ではサルモネラ菌陰性とされています。

つまり保存品があったことで、原料で問題が判明したあとから完成品の状態を確認するための情報が得られたわけです。


今回のメイトープリンでは何を調べた?

今回の情報を整理すると、

段階公表されている情報
原料殺菌液全卵からサルモネラ菌検出
製造対象製品には加熱殺菌工程あり
保存品サルモネラ菌陰性

となります。

ここでも注意したいのが、

原料の検査と保存品の検査は、同じ検体を調べたものではない

ということです。

原料はプリンになる前の殺菌液全卵。

保存品は製造工程を経た完成品です。

この間にはプリンの製造・加熱工程があります。


保存品は食中毒が起きたときにも重要

保存検体の考え方が特に分かりやすいのが、給食や弁当などです。

もし大勢の人が同じ食事を食べたあとに体調不良を訴えた場合、

「何を食べたのか」
「どの食品が原因なのか」
「どんな微生物が関係しているのか」

などを調べる必要があります。

しかし、提供した食事はすでに食べられてしまっています。

そこで、あらかじめ保存していた検食が原因究明のための重要な手掛かりになります。

厚生労働省が示してきた衛生管理に関する資料でも、弁当やそうざい、集団給食などでは、検食や原材料を一定条件で保存する考え方が示されています。


「保存品」と「検食」は完全に同じ?

ここは少し注意が必要です。

日常的には似た意味で説明されることがありますが、

保存品と検食を、どんな食品でも完全に同じ制度だと考えるのは適切ではありません。

「検食」は特に、給食や弁当・そうざいなどの衛生管理で使われる言葉です。

一方、食品メーカーでは品質確認などのため、製造した製品をサンプルとして保存している場合があります。

目的には共通する部分がありますが、

  • 何を保存するか
  • どのくらい保存するか
  • 何℃で保存するか
  • 何のために保存するか

などは食品や業態、管理方法によって異なります。


保存品はどのくらい保存するの?

これも一律ではありません。

例えば、弁当・そうざいに関する厚生労働省の衛生規範では、製造工程終了ごとに製品から1食分を検食として取り、5℃以下で48時間以上保存することが示されています。

一方、大量調理施設などでは別の衛生管理方法が示されることがあります。

食品メーカーの保存サンプルについても、商品の賞味期限、保存条件、社内基準などを踏まえて管理される場合があります。

つまり、

「保存品は必ず○日」ではなく、どの制度・食品・施設について話しているのかを確認する必要があります。


保存品があれば原因を100%特定できる?

いいえ。

保存品は非常に重要な情報源ですが、それだけですべての原因が分かるとは限りません。

問題が発生した場合には、

  • 原材料
  • 保存品
  • 製造記録
  • 温度記録
  • 製造設備
  • 作業環境
  • 使用した器具
  • 製造ロット
  • 出荷記録

など、さまざまな情報を合わせて調べることがあります。

保存品はその中のひとつの重要な証拠・手掛かりと考えると分かりやすいでしょう。


保存品が陰性なら、そのロット全部が陰性?

ここも今回のニュースで誤解しやすいポイントです。

保存品を検査してサルモネラ菌が陰性だったとしても、

製造された全商品を一つ残らず検査したことにはなりません。

微生物検査では、検体を採取して決められた方法で検査します。

したがって「保存品陰性」という結果は重要ですが、

「対象となった全商品に菌が絶対に1個も存在しないことを直接証明した」

という意味ではありません。

そのため食品の安全管理では、保存品の検査だけでなく、原料や製造工程、衛生管理の記録などを組み合わせて判断します。


保存品は「問題が起きてから作る」ことができない

保存品の大きな価値は、問題が発生するに確保されていることです。

例えば数週間後に、

「この日に使った原料に問題があったことが分かりました」

となったとします。

その時点から、

「では、その日に作った商品を保存しておこう」

と思っても、時間を戻すことはできません。

すでに出荷され、消費されている可能性があります。

だからこそ、日頃から必要な記録や検体を残しておくことに意味があります。


「商品」と「製造記録」をセットで考える

問題が発生したときに役立つのは、食品そのものだけではありません。

食品製造では、

  • いつ作ったのか
  • どの原料を使ったのか
  • どのロットだったのか
  • どこへ出荷したのか
  • どんな製造条件だったのか

といった記録も重要です。

厚生労働省の衛生管理に関する指針でも、原材料や製品をロットごとに管理・記録することや、仕入元、製造・加工、出荷・販売先などの記録を保存する考え方が示されています。

保存品とこうした記録を組み合わせることで、

「どの商品が影響を受ける可能性があるのか」

を追跡しやすくなります。


だから回収対象をロットで絞れる

自主回収のニュースを見ると、

「同じ商品なのに、どうして賞味期限やロット番号によって回収対象が違うの?」

と思うことがあります。

これは、製造記録や原料の使用記録などから、

問題となった原料がどの商品・どの製造ロットに使われたのか

を追跡できる場合があるためです。

今回のメイトープリンについても、すべての「なめらかプリン」が回収対象というわけではなく、対象となる賞味期限やロット番号が示されています。

食品工場で記録を残すことは、問題が発生したときの回収範囲を確認するためにも重要なのです。


元品質管理の視点|「その時の商品」が残っている強さ

私は以前、飲料メーカーの品質管理で微生物検査に携わっていました。

品質管理の仕事を経験すると、何か問題が発生したときに、

「そのときの状態を後から確認できるものがある」

ことの重要性を感じます。

食品は製造した瞬間からどんどん流通していきます。

そして時間が経てば、同じ日に作った商品を工場へ戻して調べることは難しくなります。

そんなとき、保存していた製品や製造記録があれば、

「その製造日の商品はどうだったのか」

を確認するための材料になります。

ただし、保存品ひとつの検査結果だけで全商品について断定するのではありません。

保存品、原料、製造工程、記録、検査結果を組み合わせて見る。

ここまで含めて品質管理です。


今回のメイトープリンで保存品検査が重要な理由

今回の自主回収では、原料の殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出されています。

一方、対象製品には加熱殺菌工程があり、保存品のサルモネラ菌検査は陰性とされています。

つまり保存品の検査によって、

「問題となった原料を使用した完成品について、保存されていた製品を後から調べた結果」

という情報が得られています。

ただし、それでも原料の食品衛生法上の不適合がなくなるわけではないため、対象商品は自主回収されています。

保存品検査は「回収する必要があるかないかを一発で決める魔法の検査」ではありません。

状況を評価するための重要な情報のひとつなのです。


食品の保存品についてよくある質問

保存品とは売れ残った商品?

必ずしもそうではありません。製造時に後から確認できるよう確保・保存された製品サンプルなどを指す場合があります。

食品メーカーは全部の商品を保存している?

すべての商品を1個ずつ保存しているという意味ではありません。また、保存する対象・数量・期間・条件などは食品や業態、衛生管理方法によって異なります。

保存品と検食は同じ?

似た目的を持つ場合がありますが、必ずしも同じ制度・意味ではありません。「検食」は特に給食や弁当などの衛生管理で使われる言葉で、保存条件などが具体的に定められている場合があります。

保存品を調べれば食中毒の原因は必ず分かる?

必ず分かるとは限りません。保存品の検査に加えて、患者の検査、原材料、製造工程、設備、製造記録など複数の情報から原因を調査することがあります。

今回のメイトープリンの保存品はサルモネラ陰性だった?

公表されている情報では、対象製品の保存品検査はサルモネラ菌陰性とされています。一方、使用原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出されたため、対象商品が自主回収されています。


まとめ|保存品は「問題が分かったあと」に過去の商品を調べる重要な手掛かり

食品の保存品・保存検体は、製造後に問題が判明したとき、その時点の商品を確認するための重要な手掛かりになります。

今回のメイトー「なめらかプリン」などの自主回収でも、

  • 原料の殺菌液全卵からサルモネラ菌検出
  • 対象製品には加熱殺菌工程あり
  • 保存品検査ではサルモネラ菌陰性

という複数の情報が公表されています。

保存品があったことで、原料の問題が判明したあとから、保存されていた完成品を検査することができました。

ただし、

保存品陰性=全商品が絶対に安全と証明された

という意味ではありません。

また、保存品の保存ルールも、すべての食品・業態で一律ではありません。

食品事故を調べるときには、

保存品+原料+製造工程+記録+検査結果

を組み合わせて見ることが大切です。

そして今回もうひとつ重要なのが、保存品ではサルモネラ菌陰性で、健康被害が確認されていない状況でも、原料の「食品衛生法上の不適合」を理由に自主回収が行われていることです。

では、そもそも「食品衛生法上の不適合」と「食中毒」は何が違うのでしょうか。

次の記事では、この2つの違いを今回のメイトープリン自主回収から整理します。

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