溶血性尿毒症症候群(HUS)とは?腸管出血性大腸菌で下痢が治りかけても注意したい理由

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腸管出血性大腸菌感染症で特に注意したい重い合併症の一つが、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」です。

O157などの腸管出血性大腸菌に感染すると、水様性の下痢や激しい腹痛、血便などがみられることがあります。

しかし、注意が必要なのは消化器症状が強い時期だけではありません。

下痢などの症状が始まってから数日後に、HUSなどの重い合併症が現れることがあります。

2026年9月に腸管出血性大腸菌感染症多発警報を発令した滋賀県も、HUSや脳症などの重症合併症について注意を呼びかけています。

今回は、HUSとはどのような状態なのか、なぜ下痢が始まって数日後にも注意が必要なのかを整理します。

HUSとは?

HUSは「Hemolytic Uremic Syndrome」の略で、日本語では「溶血性尿毒症症候群」と呼ばれます。

腸管出血性大腸菌感染症で起こることがある重い合併症の一つです。

腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素(志賀毒素群毒素)などの影響によって、全身にさまざまな障害が起こることがあります。

HUSの3つの大きな特徴

HUSでは主に、

  • 破砕赤血球を伴う溶血性貧血
  • 血小板減少
  • 腎機能障害

が特徴となります。

名前に「尿毒症」と入っていますが、単純に腎臓だけの病気として考えるものではありません。

血液や血管、腎臓などに関係する全身性の重い状態です。

「溶血」とは?

溶血とは、赤血球が壊れることです。

赤血球は全身へ酸素を運ぶ役割を持っています。

HUSでは赤血球が障害を受けることで貧血が起こり、顔色が悪くなるなどの変化がみられることがあります。

なぜ血小板が減るの?

血小板は、出血したときに血液を固める働きに関係しています。

HUSでは細い血管の中で血小板が消費され、血液中の血小板数が減少することがあります。

こうした血液の変化も、HUSを診断する重要なポイントになります。

なぜ腎臓が障害されるの?

腎臓には非常に細かな血管が集まっています。

HUSではこうした細い血管が障害され、腎臓の働きが低下することがあります。

その結果、尿の量が減るなどの変化が現れることがあります。

ベロ毒素がHUSに関係する

腸管出血性大腸菌の大きな特徴は、ベロ毒素を産生することです。

ベロ毒素は志賀毒素群毒素とも呼ばれ、VT1やVT2、その亜型などがあります。

この毒素が体内でさまざまな障害を起こすことで、HUSなどの全身性の重い症状につながると考えられています。

HUSになるのは感染者全員ではない

腸管出血性大腸菌に感染したからといって、すべての人がHUSを発症するわけではありません。

感染しても無症状の場合もあれば、軽い腹痛や下痢だけで終わる場合もあります。

一方で、重い出血性大腸炎やHUSなどへ進む人もいます。

症状がある人の6〜7%で重症合併症

厚生労働省や滋賀県によると、腸管出血性大腸菌感染症で症状がある人の6〜7%が、HUSや脳症などの重症合併症を発症するとされています。

割合だけを見ると少なく感じるかもしれません。

しかしHUSは重い状態につながる可能性があるため、症状の経過を確認することが重要です。

HUSはいつ起こる?

ここが腸管出血性大腸菌感染症で特に覚えておきたいポイントです。

HUSなどの重症合併症は、下痢などの初発症状から数日〜2週間以内に起こることがあります。

特に多いとされているのが、

初発症状から5〜7日後

です。

「感染して5〜7日後」ではない

ここは混同しやすいところです。

腸管出血性大腸菌そのものの潜伏期間は、おおよそ3〜8日とされています。

一方、HUSについて示される「5〜7日後」は、基本的に下痢などの初発症状が出てからの期間です。

感染した日から5〜7日という意味ではありません。

時間の流れで整理すると分かりやすい

腸管出血性大腸菌感染症では、

感染する

おおよそ3〜8日の潜伏期間

水様便・腹痛などが始まる

激しい腹痛や血便がみられることがある

症状がある人の一部で、数日〜2週間以内にHUSなどを発症

という経過をたどる可能性があります。

下痢が治りかけたころにも注意が必要

HUSについて知っておきたい理由の一つが、消化器症状だけを見ていると異変を見逃す可能性があることです。

下痢の回数が減ったり、腹痛が少し落ち着いたりすると、「もう回復した」と感じるかもしれません。

しかし、腸管出血性大腸菌感染症と診断されている場合には、その後の全身状態にも注意する必要があります。

HUSの初期にはどんな症状がある?

厚生労働省では、HUSの初期にみられる症状として、

  • 顔色が悪い
  • 尿量が減る
  • むくみ
  • 意識状態の変化

などを挙げています。

こうした変化がみられる場合には、速やかに医療機関へ相談する必要があります。

「尿が少ない」は重要な変化

下痢をしていると、脱水によって尿量が減ることもあります。

一方、HUSでは腎機能障害によって尿量が減少することがあります。

家庭でその原因を判断することはできません。

腸管出血性大腸菌感染症と診断されている、または疑われている状況で尿量が明らかに減っている場合には、医療機関へ相談しましょう。

顔色の変化にも注意

HUSでは溶血性貧血が起こるため、顔色が悪くなることがあります。

特に小さな子どもでは、自分から「体がおかしい」と詳しく説明できないことがあります。

普段と比べて顔色が悪い、ぐったりしているなどの変化にも注意が必要です。

むくみが出ることもある

腎機能が低下すると、体内の水分を適切に排出できなくなることがあります。

その結果、むくみがみられることがあります。

顔や手足など、普段と違うむくみがある場合にも注意しましょう。

意識状態の変化にも注意

腸管出血性大腸菌感染症では、HUSだけでなく脳症などの重い合併症が起こる場合があります。

呼びかけへの反応がおかしい、意識状態が普段と違うなどの変化がある場合には、緊急性の高い状態の可能性があります。

速やかに医療機関へ相談してください。

特に子どもと高齢者は注意

厚生労働省は、HUSは子どもと高齢者に起こりやすいとして、この年齢層では特に注意が必要としています。

小さな子どもでは症状をうまく説明できず、高齢者でも全身状態の変化が分かりにくい場合があります。

便の状態だけではなく、尿量、顔色、むくみ、元気の有無なども確認することが大切です。

子どもの「おしっこの回数」も確認する

小さな子どもの場合、「尿量が減った」と言われても具体的に分かりにくいかもしれません。

トイレへ行った回数や、おむつが濡れている回数など、普段と比べて明らかに少なくなっていないか確認することが一つの目安になります。

ただし、家庭でHUSかどうかを判断するためのものではありません。

異変がある場合には医療機関へ相談しましょう。

血便がある場合は早めに受診

HUSになるまで待って受診するものではありません。

滋賀県は今回の多発警報でも、症状がある場合には早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。

特に激しい腹痛と血便がある場合には注意が必要です。

血便=必ず腸管出血性大腸菌ではない

一方、血便には腸管出血性大腸菌感染症以外にもさまざまな原因があります。

便の状態だけでO157などと自己診断することはできません。

血便は重要な注意信号の一つとして、医療機関で原因を確認することが重要です。

下痢止めを自己判断で使わない

下痢が続くと、市販の下痢止めを使いたくなるかもしれません。

しかし、腸管出血性大腸菌感染症が疑われる場合には、薬の使用について医師や薬剤師へ相談しましょう。

血便や激しい腹痛がある場合には、症状だけを抑えようとせず、原因を確認することが重要です。

抗菌薬についても医師の判断が必要

腸管出血性大腸菌感染症に抗菌薬を使用するかどうかについても、患者の状態などを踏まえた医学的な判断が必要です。

家庭に残っている抗菌薬などを自己判断で服用することは避けましょう。

HUSは家庭で予防できる?

「HUSにならないために家庭で何かできる?」と考えるかもしれません。

しかし、HUSを家庭で直接防ぐ方法を考えるより、まず腸管出血性大腸菌そのものへの感染を予防することが重要です。

感染を防ぐ基本は食品の衛生管理

腸管出血性大腸菌への感染を防ぐためには、

  • 食肉を十分に加熱する
  • 生肉や加熱不十分な肉を避ける
  • 生肉用と食事用の箸を分ける
  • 生野菜を流水で洗う
  • 生肉を扱った器具から他の食品への二次汚染を防ぐ

といった対策が重要です。

患者からの二次感染も防ぐ

腸管出血性大腸菌は、患者や無症状病原体保有者の便を介して人から人へ感染することがあります。

特に家庭内では、下痢をしている子どものおむつ交換や、高齢者の排泄介助などで便に触れる機会があります。

排泄物を扱ったあとは、石けんと流水で十分に手を洗いましょう。

保育園などでは集団感染にも注意

腸管出血性大腸菌は少ない菌量でも感染する可能性があります。

そのため、乳幼児が集団生活をする保育園などでは、一人の感染から施設内へ広がらないよう注意が必要です。

おむつ交換後の手洗いや、子どもたちの食事前の手洗いなど、日常的な衛生管理が重要になります。

2026年の滋賀県でも多発警報

滋賀県は2026年9月10日、県内全域に本年度5回目となる腸管出血性大腸菌感染症多発警報を発令しました。

県内で患者などの発生が続いていることから、感染予防に注意するとともに、症状がある場合には早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。

HUSを怖がりすぎるのではなく「経過を知る」

HUSという重い合併症を知ると、不安になる人もいるかもしれません。

しかし、腸管出血性大腸菌に感染した人全員がHUSになるわけではありません。

大切なのは、どのような経過で起こる可能性があり、どんな変化に注意すればよいのかを知っておくことです。

まとめ

HUS(溶血性尿毒症症候群)は、腸管出血性大腸菌感染症で起こることがある重い合併症です。

主な特徴は、

  • 溶血性貧血
  • 血小板減少
  • 腎機能障害

です。

また、

  • 初期には顔色不良、尿量減少、むくみ、意識状態の変化などがみられることがある
  • 下痢などの初発症状から数日〜2週間以内に発症することがある
  • 特に5〜7日後に多いとされている
  • 子どもや高齢者では特に注意が必要

という特徴があります。

腸管出血性大腸菌感染症では、「下痢や血便がひどい時期」だけでなく、その後の全身状態まで見ることが重要です。

激しい腹痛や血便がある場合や、診断後に尿量減少、顔色不良、むくみ、意識状態の変化などがみられた場合には、速やかに医療機関へ相談しましょう。

次の記事では、家庭でも身近な「焼肉」をテーマに、生肉用の箸やトングと食事用の箸をなぜ分ける必要があるのか、腸管出血性大腸菌の二次汚染を防ぐ方法を解説します。

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