サンマの不漁が続くと、「そもそも獲りすぎたのでは?」という疑問が浮かびます。
昔は秋になるとスーパーにたくさん並んでいたサンマが、近年は水揚げ量も少なくなっています。
これだけ減っているなら、原因は乱獲なのでしょうか。
結論からいうと、漁獲による影響はありますが、サンマ資源の減少を「獲りすぎだけ」で説明することはできません。
海水温や海流の変化、回遊ルートの変化、餌環境なども関係しており、それらに漁獲圧が重なっていると考える必要があります。
この記事では、サンマは本当に獲りすぎなのか、乱獲と資源減少の関係をわかりやすく整理します。
- 結論|漁獲は関係するが「乱獲だけ」が原因ではない
- そもそも「乱獲」とは?
- サンマの水揚げ量は長期的に大きく減っている
- 「水揚げが減った」と「魚が同じ割合で減った」は別
- それでも漁獲圧は無視できない
- サンマは日本だけが獲っているわけではない
- だからNPFCで国際的に管理している
- 2026年はサンマの漁獲上限を5%削減
- 2027年はさらに10%削減へ
- 漁獲上限を下げているなら「乱獲だった」と証明された?
- 気候変動による資源減少も指摘されている
- 「獲りすぎ」と「環境変化」は同時に考える必要がある
- 「昔はたくさん獲れた」は安全の証拠にならない
- サンマを守るなら「禁漁すればいい」?
- 本当に重要なのは「資源に合わせて獲る量を変える」こと
- サンマは今後増える可能性がある?
- まとめ
結論|漁獲は関係するが「乱獲だけ」が原因ではない
魚を獲れば、その分だけ海に残る魚は減ります。
そのため、サンマ資源を考えるうえで漁獲量や漁獲圧を無視することはできません。
一方、近年のサンマには、
- 資源量そのものの減少
- 海水温や海流の変化
- 回遊ルートの変化
- 漁場の沖合化
- 餌環境の変化
- 日本を含む複数の国・地域による漁獲
などが複雑に関係しています。
したがって、
「昔たくさん獲ったから、それだけでサンマが減った」
と断定するのは適切ではありません。
そもそも「乱獲」とは?
乱獲とは、一般的には魚の資源が自然に回復できる水準を超えて漁獲を続けてしまう状態を指します。
魚は獲られても、残った親魚が産卵し、次の世代が十分に育てば資源を維持できます。
しかし、資源の増える量よりも漁獲によって減る量が大きい状態が続けば、資源量は減少していきます。
そこで漁業では、
- 現在どのくらい魚がいるのか
- どの程度獲れば資源を維持できるのか
- 親となる魚をどの程度残す必要があるのか
などを調査しながら漁獲量を管理します。
サンマの水揚げ量は長期的に大きく減っている
日本のサンマ水揚げ量は、長期的にみると大幅に減少しています。
水産研究・教育機構によると、日本のサンマ水揚げ量は2014年の約22万トンから、2025年には約6万トンまで減少しました。
わずか十数年の間に、大きく水揚げ量が落ち込んでいることになります。
ただし、この数字だけを見て「日本が獲りすぎた結果」と判断することはできません。
水揚げ量は資源量だけではなく、サンマがどこを回遊しているか、漁場までどれほど離れているか、漁船がどの程度操業できるかなどによっても変わるからです。
「水揚げが減った」と「魚が同じ割合で減った」は別
ここは重要なポイントです。
日本で水揚げされるサンマが減ったからといって、海にいるサンマの数がまったく同じ割合で減ったとは限りません。
たとえば、サンマの群れが日本近海ではなく遠い公海へ移動した場合、日本の漁船は漁場まで長距離を移動しなければなりません。
燃料代や航海時間が増えれば、魚がいても十分に操業できないことがあります。
そのため、
資源量の減少と、漁獲しにくくなったことは分けて考える必要があります。
それでも漁獲圧は無視できない
一方で、「海の環境が変わったのだから漁獲は関係ない」というわけでもありません。
サンマを漁獲すれば、その分だけ資源から魚を取り出すことになります。
特に資源量が少なくなっている時期には、同じ量を獲ったとしても資源への影響が相対的に大きくなる可能性があります。
たとえば、海に100匹いる状態で10匹獲る場合と、30匹しかいない状態で10匹獲る場合では、残る割合が大きく違います。
資源が少ないときほど、どれだけ獲るかを慎重に決める必要があります。
サンマは日本だけが獲っているわけではない
サンマは北太平洋を広く回遊する魚です。
そのため、日本だけでなく、中国、台湾、韓国、ロシアなど複数の国・地域が漁獲しています。
つまりサンマ資源を考える場合、日本国内の漁獲だけを管理しても十分とは限りません。
公海を含む広い範囲で漁獲されるため、資源を利用する国・地域が共同で漁獲量を調整する必要があります。
だからNPFCで国際的に管理している
北太平洋のサンマ資源は、北太平洋漁業委員会、NPFCの枠組みでも管理されています。
NPFCは、北太平洋公海における漁業資源を長期的に保存し、持続可能に利用することを目的とした国際的な地域漁業管理機関です。
日本、中国、台湾、韓国、ロシアなど、サンマを利用する国・地域も参加しています。
「獲れるだけ獲る」という状態ではなく、国際的な上限を設定して漁獲量を抑える仕組みが作られています。
2026年はサンマの漁獲上限を5%削減
2026年4月に開催されたNPFC第10回年次会合では、2026年のサンマ漁獲上限を前年より削減することが決まりました。
公海での漁獲上限は、前年から5%削減されて11万5425トンとなりました。
さらに、各国のEEZを含むサンマの分布域全体では、年間漁獲量を19万2375トン以内に抑えることが合意されています。
| 区分 | 2026年の上限 |
|---|---|
| 公海での漁獲上限 | 115,425トン |
| 分布域全体の年間漁獲量 | 192,375トン以内 |
| 日本・ロシアの200海里水域内漁獲量 | 76,950トン以内 |
いずれも前年から5%削減された水準です。
2027年はさらに10%削減へ
2026年のNPFC会合では、翌2027年の管理についても合意されました。
2027年は漁獲管理規則を適用し、2026年の漁獲上限からさらに10%削減する方針です。
これは、サンマ資源を持続的に利用するため、漁獲量をより抑える方向で国際管理が進んでいることを示しています。
漁獲上限を下げているなら「乱獲だった」と証明された?
ここも混同しやすいところです。
漁獲上限が削減されたからといって、それだけで「サンマ不漁の原因は乱獲だった」と証明されたわけではありません。
資源管理では、資源が少ない状態にある場合、その原因がひとつではなくても、資源への負担を減らすために漁獲量を抑えることがあります。
海水温や海流そのものを人間が直接コントロールすることは困難です。
一方、漁獲量は人間がルールによって調整できます。
そのため、資源回復を目指すうえで漁獲量の管理は重要な手段になります。
気候変動による資源減少も指摘されている
水産研究・教育機構は、近年の日本のサンマ水揚げ量減少について、気候変動によるサンマ資源の減少と、回遊経路の変化に伴う漁場の遠隔化を要因として挙げています。
海水温や海流が変われば、サンマが回遊する場所も変化します。
さらに、沖合の海域ではサンマの餌となるプランクトンの環境も異なります。
そのため、サンマ資源の変化には漁獲だけでなく、生育する海の環境そのものが深く関係しています。
「獲りすぎ」と「環境変化」は同時に考える必要がある
サンマ資源を考えるときに難しいのは、複数の要因が同時に作用することです。
| 要因 | 資源への影響 |
|---|---|
| 漁獲 | 資源から魚を取り出す |
| 海水温・海流の変化 | 回遊や分布、生育環境を変える |
| 餌環境 | 成長や生き残りに影響する可能性 |
| 競合する魚の増減 | 餌をめぐる競争に影響する可能性 |
| 回遊ルートの変化 | 漁場が沖合化し、日本で獲りにくくなる |
資源が環境変化によって減っているところへ強い漁獲圧が加われば、回復しにくくなる可能性があります。
反対に漁獲量を減らしても、海洋環境がサンマにとって厳しい状態であれば、すぐに資源が増えるとは限りません。
「昔はたくさん獲れた」は安全の証拠にならない
サンマはかつて日本で大量に水揚げされていました。
そのため、「昔は何十万トンも獲っていたのだから、今も同じくらい獲って大丈夫なのでは?」と思うかもしれません。
しかし、持続可能な漁獲量は資源の状態によって変わります。
魚が豊富だった時代に可能だった漁獲量が、資源が減少した現在も安全とは限りません。
大切なのは、過去の漁獲量を基準にすることではなく、現在の資源状態に応じて漁獲量を調整することです。
サンマを守るなら「禁漁すればいい」?
資源が減っているなら、完全に漁をやめればいいのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし漁業は、漁業者の生活だけでなく、水産加工、流通、飲食店、地域経済など多くの産業につながっています。
そのため資源管理では、単純に「獲るか、獲らないか」という二択ではなく、資源を回復させながら漁業も持続できる水準を探る必要があります。
漁獲上限や漁獲可能量を設定するのは、そのバランスを取るためでもあります。
本当に重要なのは「資源に合わせて獲る量を変える」こと
魚の資源量は毎年一定ではありません。
海洋環境や産卵、成長、生き残りなどによって増減します。
そのため、資源管理では一度決めた漁獲量をずっと続けるのではなく、資源評価を行いながら上限を調整することが重要です。
サンマについても、資源状態に応じて漁獲上限を変える漁獲管理規則が導入されています。
「たくさんいるときは利用し、減っているときは獲る量を抑える」という考え方が、持続可能な漁業につながります。
サンマは今後増える可能性がある?
漁獲量を適切に管理すれば、資源への人為的な負担を減らすことができます。
ただし、サンマの資源回復には海洋環境も関係するため、漁獲上限を下げれば必ず短期間で昔の水準へ戻るとは限りません。
今後は、
- サンマの資源量
- 加入する若い魚の量
- 海水温や海流
- 回遊ルート
- 各国・地域の漁獲状況
などを継続して確認していく必要があります。
まとめ
サンマの不漁について、「獲りすぎたから減ったのでは?」という疑問は自然なものです。
実際、漁獲はサンマ資源に影響するため、現在は日本を含む複数の国・地域が国際的な漁獲上限のもとで管理を行っています。
2026年には公海での漁獲上限が前年から5%削減され、11万5425トンとなりました。
さらに2027年には、2026年の上限から10%削減することも合意されています。
一方で、近年のサンマ資源減少には気候変動や海水温・海流の変化、回遊ルートの沖合化、餌環境なども関係しています。
したがって、「サンマが減った=乱獲だけが原因」と決めつけるのではなく、環境変化と漁獲圧の両方を見ることが重要です。
資源が少ないときには獲る量を抑え、状態を見ながら管理していくことが、これからもサンマを食べ続けるための重要な取り組みになります。

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