サンマの不漁や資源減少について調べていると、「TAC」「漁獲枠」「漁獲上限」といった言葉がよく登場します。
しかし、
「TACって何?」
「日本の漁獲枠と国際的な漁獲上限は同じもの?」
「サンマは誰が何トン獲っていいの?」
と、少し分かりにくいですよね。
実はサンマでは、日本国内のTACによる管理と、北太平洋漁業委員会(NPFC)による国際的な管理の両方が関係しています。
この記事では、2026年のサンマを例に、漁獲枠やTACの仕組みをできるだけシンプルに整理します。
- 結論|TACは「日本で獲ってよい量」の上限
- 2026年の日本のサンマTACは9万1554トン
- そもそもなぜTACが必要なの?
- TAC=実際に必ずその量を獲るという意味ではない
- 日本のTACはどうやって決まる?
- NPFCとは?
- 2026年の国際的なサンマ漁獲上限は?
- 日本のTACとNPFCの上限は同じものではない
- 2026年の日本TACはどう計算された?
- TACはどう配分される?
- 「国の留保」って何?
- IQとは?船ごとに漁獲量を割り当てる仕組み
- TACとIQの違いは?
- 2026年はなぜTACが途中で変更された?
- 昔よりTACは減っている?
- 漁獲枠を減らせばサンマはすぐ増える?
- 2027年はさらに漁獲上限を削減する方針
- サンマ資源管理を簡単に整理すると
- まとめ
結論|TACは「日本で獲ってよい量」の上限
TACとは、Total Allowable Catchの略で、日本語では「漁獲可能量」と呼ばれます。
簡単にいうと、
「この管理年度に、この魚をどこまで獲ってよいか」
という上限です。
資源量を調べたうえで、魚を獲りすぎて資源が減りすぎないように漁獲量を管理するために設定されます。
サンマもTACによって管理される魚のひとつです。
2026年の日本のサンマTACは9万1554トン
水産庁によると、2026年管理年度の日本のサンマTACは、9万1554トンです。
当初は9万5623トンとされていましたが、2026年4月に開催されたNPFC第10回年次会合で国際的な漁獲上限が変更されたことを受け、日本のTACも変更されました。
| 区分 | 数量 |
|---|---|
| 2026年当初のサンマTAC | 95,623トン |
| 変更後のサンマTAC | 91,554トン |
つまり2026年は、日本の漁船が無制限にサンマを獲れるわけではなく、TACの範囲内で漁獲する仕組みになっています。
そもそもなぜTACが必要なの?
魚は自然の中で増える資源ですが、無限にいるわけではありません。
漁獲量が多すぎる状態が続けば、親となる魚が減り、次の世代が十分に増えない可能性があります。
そこで、資源の状態を調査し、
- 現在どの程度の資源量があるのか
- どの程度まで漁獲してよいのか
- どれだけ残せば将来も利用できるのか
などを考えながら漁獲量を設定します。
TACは、魚をまったく獲らないための制度ではありません。
「獲りながら資源を維持する」ための管理方法です。
TAC=実際に必ずその量を獲るという意味ではない
ここは誤解されやすいポイントです。
TACが9万1554トンだからといって、日本が必ず9万1554トンのサンマを獲るわけではありません。
TACはあくまで「上限」です。
魚群が少なかったり、漁場が遠かったり、天候が悪かったりすれば、実際の漁獲量はTACより少なくなります。
反対に、たくさん魚が見つかったとしても、原則としてTACを超えて自由に漁獲することはできません。
日本のTACはどうやって決まる?
サンマは日本近海だけにいる魚ではありません。
北太平洋を広く回遊し、公海や日本・ロシアの200海里水域などを移動します。
そのため日本のTACを決める際も、日本国内の事情だけで完結するわけではありません。
国際的な資源管理措置を踏まえたうえで、日本の漁船が利用できる量を計算します。
2026年については、NPFCで決まった公海や200海里水域内の漁獲上限をもとに、日本のTACが9万1554トンとされました。
NPFCとは?
サンマの国際的な資源管理で重要なのが、北太平洋漁業委員会、NPFCです。
NPFCはNorth Pacific Fisheries Commissionの略です。
日本、中国、台湾、韓国、ロシア、カナダ、米国などが参加し、北太平洋の漁業資源を持続可能な形で利用するためのルールを話し合っています。
サンマのように複数の国・地域の海域や公海を回遊する魚は、日本だけで管理しても十分ではありません。
そのため国際的に漁獲上限などを設定します。
2026年の国際的なサンマ漁獲上限は?
2026年4月のNPFC第10回年次会合では、サンマの漁獲上限を前年から5%削減することが合意されました。
公海での漁獲上限は11万5425トンです。
さらに、日本やロシアなどの200海里水域を含む分布域全体では、年間漁獲量を19万2375トン以内に抑えることになっています。
| 区分 | 2026年の上限 |
|---|---|
| 公海での漁獲上限 | 115,425トン |
| 日ロ両国の200海里水域内 | 76,950トン以内 |
| 分布域全体 | 192,375トン以内 |
日本のTACとNPFCの上限は同じものではない
ここが一番ややこしいところです。
日本のサンマTACである9万1554トンと、NPFCが定めた分布域全体の19万2375トンは、同じ数字ではありません。
対象となる範囲が違うからです。
| 制度 | 対象 | 2026年 |
|---|---|---|
| 日本のTAC | 日本の漁船によるサンマ漁獲 | 91,554トン |
| NPFC公海上限 | 公海でのサンマ漁獲 | 115,425トン |
| NPFC分布域全体 | 公海・EEZを含む全体 | 192,375トン以内 |
つまり、
「日本のTAC=北太平洋全体で獲ってよいサンマの量」ではありません。
日本国内の管理と国際的な管理を分けて考える必要があります。
2026年の日本TACはどう計算された?
2026年の日本のTACは、大きく2つの部分から計算されています。
ひとつは、日本・ロシアの200海里水域内で日本漁船が利用する分です。
もうひとつは、公海で日本漁船が利用する分です。
水産庁の資料では、日本漁船による日ロ200海里水域内の漁獲分として7万6194トン、公海分として1万5360トンが算出されています。
これを合計すると、
76,194トン+15,360トン=91,554トン
となります。
TACはどう配分される?
TACが決まったあと、その全量をひとまとめにして自由に使うわけではありません。
国の留保分や、大臣が管理する漁業、都道府県が管理する漁業などに配分されます。
2026年のサンマTACでは、全体の10%にあたる9155トンが国の留保として設定されました。
残りについて、過去の漁獲実績などをもとに配分されます。
「国の留保」って何?
魚の来遊状況は毎年同じではありません。
ある地域へ予想以上に魚が来る年もあれば、逆にほとんど来ない年もあります。
最初からTACをすべて配分してしまうと、想定外の来遊があったときに調整しにくくなります。
そこで国が一部を留保し、必要に応じて追加配分できる仕組みを設けています。
2026年のサンマでは9155トンが留保分とされました。
IQとは?船ごとに漁獲量を割り当てる仕組み
サンマの資源管理では、「IQ」という言葉も登場します。
IQとはIndividual Quotaの略で、日本語では漁獲割当てと呼ばれます。
これはTACの一部を、漁船などにあらかじめ割り当てる仕組みです。
例えば、「この船は今季ここまで」という量を事前に決めておくことで、漁業者が計画的に操業しやすくなります。
2026年のサンマでも、北太平洋さんま漁業の一部でIQによる管理が行われています。
TACとIQの違いは?
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| TAC | 魚種全体で獲ってよい量の上限 |
| IQ | TACの中から個々の漁船などへ割り当てた漁獲量 |
TACが「大きな箱」だとすれば、IQはその箱の中身を個々の漁船へ分けたもの、と考えると分かりやすいでしょう。
2026年はなぜTACが途中で変更された?
2026年のサンマTACは、最初から9万1554トンだったわけではありません。
当初は9万5623トンとして設定されていました。
その後、2026年4月にNPFC第10回年次会合が開催され、公海や200海里水域における漁獲上限を前年から5%削減することが決まりました。
この新しい国際ルールを反映するため、日本のTACも9万1554トンへ変更されました。
このように、国際的な資源管理の変更が日本国内の漁獲可能量へ直接影響することがあります。
昔よりTACは減っている?
サンマのTACは近年、大きく変化しています。
水産庁資料では、2021年管理年度に当初26万4000トンだったTACは、その後の変更や資源管理の強化を経て減少してきました。
2026年は9万1554トンです。
これは、資源状態や国際的な保存管理措置に応じて、獲ってよい量が見直されていることを示しています。
漁獲枠を減らせばサンマはすぐ増える?
漁獲量を抑えることは、資源への人為的な負担を減らす重要な方法です。
ただし、漁獲枠を減らした翌年にサンマが一気に増えるとは限りません。
サンマの資源量には、
- 海水温
- 海流
- 餌となるプランクトン
- 回遊ルート
- 若い魚の生き残り
- 各国・地域による漁獲
など多くの要因が関係しています。
そのため、TACは資源回復のための重要な手段のひとつですが、それだけですべてを解決できるわけではありません。
2027年はさらに漁獲上限を削減する方針
2026年のNPFC会合では、2027年のサンマについても方向性が決まりました。
2027年は漁獲管理規則を適用し、2026年の漁獲上限から10%削減することが合意されています。
つまり、サンマ資源については今後も漁獲量を抑えながら、回復を目指す管理が続くことになります。
サンマ資源管理を簡単に整理すると
少し複雑なので、最後に流れを整理します。
- サンマの資源状態を調査する
- NPFCで国際的な漁獲上限を決める
- そのルールを踏まえて日本のTACを設定する
- TACを大臣管理漁業や都道府県などへ配分する
- 一部ではIQとして船ごとに漁獲量を割り当てる
- 実際の漁獲量を確認しながら管理する
つまり「今年はサンマを何トン獲っていい」と単純にひとつの数字を決めて終わるのではありません。
国際管理と国内管理を組み合わせながら、資源を利用しています。
まとめ
TACとは、魚を獲りすぎないように設定される「漁獲可能量」のことです。
2026年の日本のサンマTACは9万1554トンとなっています。
一方、NPFCによる国際的な管理では、公海の漁獲上限が11万5425トン、EEZを含む分布域全体では19万2375トン以内とされています。
日本のTACと国際的な漁獲上限は対象範囲が異なるため、同じ数字ではありません。
サンマは日本だけが利用する魚ではなく、北太平洋を回遊し、複数の国・地域が漁獲する国際資源です。
そのため、NPFCによる国際管理と、日本国内のTAC・IQによる管理を組み合わせて資源を守る必要があります。
今後もサンマを秋の味覚として楽しむためには、海洋環境の変化を調べるだけでなく、資源量に応じて獲る量を調整していくことが重要です。

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