2026年9月、青森市で70代女性が毒キノコ「イボテングタケ」を食べ、嘔吐やめまいなどを発症して入院する食中毒が発生しました。
イボテングタケという名前を聞くと、
「あんなに特徴的なキノコを、どうして食べてしまうの?」
「傘の白いイボを見れば分かるのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、野生キノコの見分けはそれほど単純ではありません。
東京都保健医療局は、テングタケやイボテングタケについて、傘にあるイボが落ちていることがあり、毒キノコだと思わず誤って食べて食中毒を起こすことがあると注意しています。
今回は、イボテングタケは何と間違えやすいのか、そしてなぜ野生キノコを見た目だけで判断してはいけないのかを整理します。
イボテングタケは何と間違えやすい?
最初に重要な点があります。
公的な資料を確認すると、「イボテングタケは必ずこの食用キノコと間違えやすい」と特定の1種類だけを挙げることは適切ではありません。
毒キノコの誤食は、特定の食用種との取り違えだけで起こるものではないからです。
野生で採取したキノコを「食べられそう」「以前食べたものに似ている」などと自己判断した結果、毒キノコを食べてしまうケースがあります。
厚生労働省も、食用と確実に判断できないキノコは絶対に採らない、食べない、売らない、人にあげないよう呼びかけています。
特徴的な「白いイボ」が落ちることもある
イボテングタケの大きな特徴のひとつが、傘の表面にある白いいぼ状のものです。
東京都保健医療局によると、テングタケ・イボテングタケは灰褐色からオリーブ褐色の傘に白いイボがあり、柄にはツバ、根元にはリング状のツボがあります。
ところが、このイボはいつでもきれいに残っているとは限りません。
東京都は「イボが落ちていることがある」と注意しています。
つまり、図鑑や写真で覚えた「白いイボだらけのキノコ」と、実際に野外で見つける個体の姿が違うことがあるのです。
「イボがないから大丈夫」は危険
ここで特に避けたいのが、特徴をひとつだけ使った消去法です。
たとえば、
「イボテングタケなら白いイボがあるはず」
「このキノコにはあまりイボがない」
「だからイボテングタケではない」
という判断です。
イボそのものが落ちる可能性がある以上、この方法では安全性を確認できません。
毒キノコの特徴を知ることは注意喚起には役立ちますが、それを「食べられるキノコを自己鑑定する方法」として使うのは危険です。
生えている場所でも姿が違って見える
日本中毒情報センターは、キノコは生息している場所や時期によって形が異なり、専門家でも見分けることが困難だと注意しています。
同じ種類だからといって、すべてが図鑑の代表写真と同じ姿になるわけではありません。
成長段階や環境などによって見え方が変わるため、インターネットで見つけた写真と並べて「似ているから食べられる」と判断することは避けましょう。
イボテングタケとテングタケも混同されてきた
イボテングタケには、分類上の少し複雑な歴史もあります。
現在のイボテングタケは、かつてテングタケと混同されていました。
現在では別種として扱われていますが、古い資料や図鑑では現在と分類が異なる場合があります。
東京都も「テングタケ(毒)・イボテングタケ(毒)」として両方を紹介しています。
ただし、食中毒予防という意味では、どちらを正確に見分けられるかを競う必要はありません。
どちらも毒キノコだからです。
イボテングタケの主な特徴
東京都保健医療局が紹介しているイボテングタケの特徴を整理すると、次のようになります。
- 傘は灰褐色~オリーブ褐色
- 傘の表面に白いイボがある
- 柄の上部に膜状のツバがある
- 柄の根元にリング状のツボがある
- 針葉樹林の地上に発生する
- 発生時期は夏から秋
ただし、これらはあくまで種類の特徴を説明するための情報です。
野外で見つけたキノコを食べるための鑑定表ではありません。
「昔食べたキノコに似ている」も危険
野生キノコによる食中毒で怖いのは、まったく知らないキノコを興味本位で食べるケースだけではありません。
「以前食べたものに似ている」
「昔から知っている」
「毎年この辺りに生えている」
といった経験による判断にも注意が必要です。
厚生労働省には、実際に毒キノコを食用キノコだと思い込んで採取した食中毒事例が報告されています。
毒キノコを食用キノコと間違えた実例
イボテングタケに限らず、野生キノコでは「似た食用キノコとの誤認」による食中毒が繰り返されています。
厚生労働省が公表した過去の事例では、山梨県で毒キノコのタマゴタケモドキを食用のタマゴタケと誤認して採取し、自宅で食べた女性が嘔吐や下痢などを発症しました。
また福島県では、ツキヨタケを食用のヒラタケと誤認して採取し、食べた男女が嘔吐する食中毒も報告されています。
これはイボテングタケそのものの誤認事例ではありません。
しかし、野生キノコの「似ているから大丈夫」という判断が実際の食中毒につながっていることを示しています。
2026年の青森事例では「何と間違えたか」は慎重に
2026年9月に青森市で発生したイボテングタケ食中毒では、70代女性が自ら採取した野生キノコを調理して食べています。
青森市保健所は、イボテングタケによる食中毒と断定しました。
一方、公表されている情報だけから「女性が○○という食用キノコだと思って採った」と特定することはできません。
原因キノコがイボテングタケだったことと、本人が何のキノコだと思っていたのかは別の情報です。
分かっていない部分を推測で補わないことも、食中毒事例を正確に理解するうえで重要です。
スマホの写真判定だけで食べるのも避ける
現在はスマートフォンで撮影した写真から、キノコの名前を調べることも簡単になりました。
しかし、写真による候補表示と「食べても安全」という判断は同じではありません。
白いイボが落ちることがあるように、野生キノコでは重要な特徴が写真に写っていない可能性もあります。
画像検索やAIなどで名前の候補が表示されても、それを根拠に野生キノコを食べないようにしましょう。
知人からもらったキノコにも注意
日本中毒情報センターは、自分で採取したキノコだけではなく、近所や知人からもらった野生キノコにも注意を呼びかけています。
採った本人が食用だと信じていても、その判断が正しいとは限りません。
また、採ったキノコの中に有毒種が混ざっている可能性もあります。
「キノコに詳しい人からもらったから大丈夫」と考えないことが大切です。
食中毒を防ぐ一番確実な方法は?
野生キノコによる食中毒を防ぐために、厚生労働省が呼びかけている原則は非常にシンプルです。
食用と確実に判断できないキノコは、
- 採らない
- 食べない
- 売らない
- 人にあげない
これを守ることです。
イボテングタケの特徴を覚えること以上に、「分からないものを食べない」という判断が重要です。
もし間違えて食べてしまったら
日本中毒情報センターは、有毒キノコを食べた可能性があり症状がある場合には、必ず医療機関を受診するよう呼びかけています。
受診する際には、残っているキノコや調理したものがあれば持参し、
- キノコの形
- 採取場所
- 調理方法
- 食べた量
- 食べた時刻
- 症状が出た時刻
- 一緒に食べた人の有無
などを伝えましょう。
イボテングタケなどイボテン酸群では、めまいや運動失調、せん妄、意識消失などが現れることがあります。
まとめ|「イボがあるか」だけではイボテングタケを判断できない
イボテングタケは、灰褐色からオリーブ褐色の傘に白いイボが見られる毒キノコです。
しかし東京都保健医療局は、その特徴的なイボが落ちていることもあり、毒キノコと思わず誤って食べて食中毒を起こすことがあると注意しています。
さらに日本中毒情報センターは、キノコは生息場所や時期によって形が異なり、専門家でも見分けることが困難だとしています。
「写真と同じ」「イボがない」「昔食べたキノコに似ている」といった外見や経験だけで、野生キノコが安全だと判断することはできません。
食用と確実に判断できない野生キノコは、採らない・食べない・売らない・人にあげないようにしましょう。

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