「毒キノコでも、しっかり火を通せば食べられるのでは?」
野生キノコについて調べていると、そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし、イボテングタケを「加熱すれば安全になるキノコ」と考えて食べるのは危険です。
2026年9月に青森市で発生した食中毒では、70代女性が自ら採取したキノコを自宅で調理して食べたあと、嘔吐やめまいなどを発症して入院しました。
青森市保健所は、イボテングタケによる食中毒と断定しています。
今回は、イボテングタケを加熱調理しても食べるべきではない理由と、毒キノコの加熱について注意したいポイントを整理します。
結論|イボテングタケを「加熱すれば食べられる」と考えない
最初に結論からいうと、イボテングタケは毒キノコです。
家庭で加熱したことを理由に「これで安全になった」と判断して食べるべきではありません。
厚生労働省は、食用と確実に判断できないキノコについて、
- 採らない
- 食べない
- 売らない
- 人にあげない
ことを呼びかけています。
そこに「十分加熱すれば食べてもよい」という例外はありません。
青森の食中毒では自宅で「調理して」食べていた
2026年9月に青森市で発生した食中毒は、加熱と毒キノコについて考えるうえでも重要な事例です。
患者となった70代女性は、自ら採取した野生キノコを自宅へ持ち帰りました。
その後、自宅で調理して食べています。
そして食後に嘔吐やめまいなどの症状を発症し、医療機関へ入院しました。
青森市保健所による調査で、イボテングタケによる食中毒と断定されています。
つまり少なくとも今回の事例では、「家庭で調理した」という事実は食中毒を防ぐことにつながりませんでした。
イボテングタケにはイボテン酸やムシモール
イボテングタケは、テングタケ科テングタケ属の毒キノコです。
厚生労働省の自然毒に関する資料では、イボテングタケと近縁のテングタケについて、毒成分としてイボテン酸やムシモールなどが挙げられています。
日本中毒情報センターでも、イボテングタケはベニテングタケやテングタケなどとともに「イボテン酸群」に分類されています。
これらのキノコを食べると、消化器症状だけではなく、中枢神経系に関係する症状が現れることがあります。
「火を通せば毒が消える」とは限らない
食中毒対策では「十分に加熱する」という言葉をよく聞きます。
しかし、ここで混同してはいけないのが、細菌やウイルスによる食中毒対策と、キノコに含まれる自然毒への対策です。
食品に付着した一部の病原微生物は、適切な加熱によって死滅させることができます。
一方、毒キノコの場合は、キノコそのものに自然毒が含まれています。
そのため「加熱した=毒キノコが安全な食材になった」と考えることはできません。
加熱は、野生キノコが安全かどうかを判定する方法ではないのです。
実際に「油炒め」で食中毒になった事例も
過去には、テングタケ属のキノコを油炒めにして食べたあと、食中毒を起こした事例も報告されています。
北海道で発生した事例では、市内に自生していたテングタケ属のキノコを採取。
3人が油炒めにして食べたところ、3人とも症状を発症しました。
1人には腹痛や嘔吐、意識障害が現れて救急搬送され、残る2人にも嗜眠の症状がみられました。
原因物質としてイボテン酸やムシモールなどが報告されています。
「フライパンでしっかり炒めれば大丈夫」という考え方が危険であることが分かる事例です。
煮れば大丈夫?焼けば大丈夫?
では、油炒めではなく、煮たり焼いたりすればどうなのでしょうか。
これも家庭で安全性を判断する方法にはできません。
野生キノコについて、
- 長時間煮れば大丈夫
- 焼けば毒が抜ける
- 何度かゆでこぼせば食べられる
などと自己判断して食べるのは避けてください。
調理方法を工夫して毒キノコを食べようとするのではなく、毒キノコや食用と確実に判断できない野生キノコは食べないことが基本です。
「水溶性ならゆでれば大丈夫」でもない
イボテン酸やムシモールについて調べると、「水溶性」という情報を目にすることがあります。
厚生労働省の資料でも、イボテン酸とムシモールは水溶性が高いことが分析法の説明の中で示されています。
しかし、「水に溶けやすい」という性質と、「家庭でゆでれば安全に食べられる」という話は別です。
家庭調理で毒成分がどれだけ残っているのかを確認することはできません。
水溶性という化学的性質だけを根拠に、安全な調理方法を自己判断しないようにしましょう。
イボテングタケ中毒では神経症状にも注意
イボテングタケで特に注意したいのは、胃腸症状だけではありません。
日本中毒情報センターによると、イボテン酸群のキノコでは、摂取後15~90分以内に、
- めまい
- 運動失調
- 昏迷
- せん妄
- 意識消失
などが現れることがあります。
青森市で今回発生した食中毒でも、女性には嘔吐とともに「めまい」が現れました。
「少し気持ち悪いだけ」と軽く考えず、野生キノコを食べたあとに異常が現れた場合には医療機関へ相談する必要があります。
毒キノコと細菌性食中毒は対策が違う
普段の食中毒予防では、肉や魚などを十分に加熱することが重要です。
食品衛生の基本として加熱が重要なのは間違いありません。
しかし、それをそのまま毒キノコに当てはめることはできません。
「生肉は加熱すればリスクを下げられる。だから毒キノコも加熱すればいい」という考え方ではないのです。
毒キノコによる食中毒を防ぐ第一歩は、毒のあるキノコを食卓へ持ち込まないことです。
味見だけなら大丈夫?
「少しだけ食べて確認する」という方法も危険です。
毒キノコを食べて症状が出るかどうかを、自分の身体を使って確認することはできません。
摂取した量や個体に含まれる成分などによって、症状の程度が異なる可能性もあります。
少量なら安全と自己判断しないようにしてください。
人からもらった野生キノコにも注意
自分で採取しなければ安全とも限りません。
日本中毒情報センターは、採ったキノコを近所や知人へ配らないよう呼びかけています。
また、もらった側についても同様に注意が必要です。
採取した本人が「これは食べられる」と思っていても、種類を誤認している可能性があります。
調理する前の段階で、本当に食用と確実に判断できるものなのかが重要です。
もし調理した毒キノコを食べてしまったら
日本中毒情報センターは、有毒キノコを食べた可能性があり症状がある場合には、必ず医療機関を受診するよう呼びかけています。
受診する際には、残っているキノコや調理済みのものがあれば、原因究明の手掛かりになる可能性があります。
また、
- 採取した場所
- どのように調理したか
- どのくらい食べたか
- 食べた時刻
- 症状が始まった時刻
- 一緒に食べた人がいるか
などを伝えられるようにしておくとよいでしょう。
まとめ|「加熱したから安全」は毒キノコには通用しない
イボテングタケは毒キノコです。
2026年9月に青森市で発生した食中毒では、70代女性が採取したキノコを自宅で調理して食べたあと、嘔吐やめまいなどを発症して入院しました。
過去には、テングタケ属のキノコを油炒めにして食べた3人全員が発症した食中毒事例も報告されています。
「煮た」「焼いた」「炒めた」という事実だけで、毒キノコが安全になったと判断することはできません。
厚生労働省が呼びかけている基本は、食用と確実に判断できないキノコを「採らない・食べない・売らない・人にあげない」ことです。
毒キノコをどう料理すれば食べられるのかではなく、最初から食べないことが食中毒を防ぐ最も重要な対策です。

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