麻布十番食中毒、店内のふき取り検査で黄色ブドウ球菌を検出|サルモネラとの関係は?

未分類

麻布十番納涼まつりで販売された「冷やし蟹ラーメン」による集団食中毒。

今回の食中毒について、みなと保健所はサルモネラ属菌による食中毒と断定しています。

ところが、検査結果を詳しく見てみると、サルモネラ属菌とは別の菌も検出されています。

そのひとつが「黄色ブドウ球菌」です。

しかも黄色ブドウ球菌は患者の便だけではなく、店舗内で行われた「ふき取り検査」からも検出されました。

すると気になるのが、

「黄色ブドウ球菌も食中毒の原因だったの?」

「サルモネラと黄色ブドウ球菌、結局どちらが原因なの?」

という点ではないでしょうか。

結論からいうと、今回の食中毒について行政が病因物質として断定したのはサルモネラ属菌です。

店舗から黄色ブドウ球菌が検出されたことと、黄色ブドウ球菌が今回の食中毒の原因だったことは同じ意味ではありません。

今回は、東京都が公表した検査結果をもとに、「検出された菌」と「原因菌」の違いを整理します。

店内のふき取り検査から黄色ブドウ球菌

東京都が公表した検査結果によると、施設のふき取り検体について細菌検査が6検体行われました。

その結果は、

  • 黄色ブドウ球菌陽性:1検体
  • 陰性:5検体

でした。

さらにノロウイルスについても2検体が検査され、こちらはいずれも陰性でした。

つまり、店舗環境から採取した検体の一部から黄色ブドウ球菌が実際に検出されていたことになります。

そもそも「ふき取り検査」って何?

ふき取り検査とは、調理施設の設備や器具などの表面を検体として採取し、衛生状態を確認するために行われる検査です。

食品そのものを調べる検査とは違い、「施設の環境にどのような微生物が存在していたのか」を調べる手掛かりになります。

食中毒が発生した施設では、患者や調理従事者の便、残っている食品などとともに、施設内の環境から検体を採取して調べることがあります。

今回も、患者、調理従事者、食品、施設のふき取りと、複数の種類の検体が調べられています。

黄色ブドウ球菌とは?

黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や鼻などにも存在することがある細菌です。

食品を扱う際には、手指などを介して食品へ付着する可能性があります。

特に手指に傷や化膿した部分がある場合などには、食品への汚染を防ぐため適切な衛生管理が重要になります。

食品中で黄色ブドウ球菌が増殖し、エンテロトキシンと呼ばれる毒素が作られた食品を食べると、食中毒を起こすことがあります。

つまり黄色ブドウ球菌そのものも、食品衛生上注意が必要な細菌です。

保健所は黄色ブドウ球菌の検出をどう説明した?

今回の店舗内のふき取り検査について、みなと保健所の前田光哉所長は報道取材に答えています。

清潔な状態で食品を扱う環境では通常検出されるものではないとしたうえで、清掃が十分に行き届いていない場合や、手洗いが十分でない場合などに起こり得るという趣旨の説明をしています。

ここで重要なのは、保健所が「黄色ブドウ球菌が今回の食中毒を起こした」と説明しているわけではないことです。

店舗環境の衛生状態を考えるうえで、注目される検査結果だったということになります。

では、今回の食中毒の原因菌は?

今回の食中毒について、行政が病因物質として断定したのはサルモネラ属菌です。

東京都が公表した初期の検査結果では、患者の便101検体について細菌検査が行われ、31検体からサルモネラ属菌が検出されていました。

さらに調理従事者の便からも、サルモネラ属菌が検出されています。

患者に共通する食事などの疫学的な状況と検査結果を合わせ、みなと保健所は「冷やし蟹ラーメン」を原因食品とするサルモネラ属菌による食中毒と断定しました。

「黄色ブドウ球菌が出た=黄色ブドウ球菌食中毒」ではない

ここが今回、特に混同しやすいポイントです。

検査で細菌が見つかった。

だから、その細菌が食中毒の原因だった。

必ずしも、このように一直線には結びつきません。

食中毒の原因を判断するときには、単に「どこから菌が出たか」だけではなく、患者の症状や発症までの時間、患者同士の共通食、検査結果など複数の情報を組み合わせて判断します。

今回の場合、黄色ブドウ球菌は施設のふき取り検体から検出されています。

しかし、行政が今回の食中毒の病因物質として断定したのはサルモネラ属菌です。

「黄色ブドウ球菌も検出された」という事実と、「黄色ブドウ球菌が食中毒を起こした」という結論は分けて考える必要があります。

患者からも黄色ブドウ球菌が検出されている

実は今回、黄色ブドウ球菌が検出されたのは店舗環境だけではありません。

東京都が9月3日時点で公表した患者便の細菌検査では、黄色ブドウ球菌が1検体から検出されています。

さらに患者便からは、サルモネラ属菌だけでなく、プレジオモナスや下痢原性大腸菌も一部で検出されていました。

複数種類の菌が検出されたため、検査結果だけを見ると非常に複雑に感じます。

しかし、この場合も「検出された菌をすべて今回の原因菌とみなす」わけではありません。

調理従事者からはサルモネラ属菌も検出

調理従事者については、便8検体の細菌検査が行われました。

東京都が公表した結果では、サルモネラ属菌が2検体、プレジオモナスが1検体から検出されています。

一方、施設のふき取りでは黄色ブドウ球菌が1検体陽性でした。

このように、検体の種類によって見つかっている菌も異なっています。

だからこそ、食中毒調査では「菌が出た・出なかった」だけを見るのではなく、患者、従事者、食品、施設環境などの情報を組み合わせて考える必要があります。

食品の検査は陰性だった

さらに興味深いのが食品の検査結果です。

東京都が公表した時点では、食品について細菌2検体、ノロウイルス2検体が検査され、いずれも陰性でした。

それでも、みなと保健所は冷やし蟹ラーメンを原因食品と断定しています。

「原因食品から菌が出なかったのに、なぜ原因食品だと分かるの?」と思うかもしれません。

食中毒の原因食品を判断する際には、食品検体から必ず原因菌が検出されなければならないわけではありません。

患者が何を食べたのか、どの食品を食べた人に症状が集中しているのか、患者からどの病原体が検出されたのかなど、疫学調査と検査結果を総合して判断されます。

黄色ブドウ球菌が出た場所は公表されている?

「店内のどこから黄色ブドウ球菌が出たの?」という点も気になるところです。

しかし、東京都の公表資料では「拭き取り検体6検体のうち1検体陽性」とされており、どの設備や場所から検出されたのかまでは示されていません。

そのため、具体的な汚染場所を推測して断定することはできません。

「まな板から出た」「トイレから出た」「調理台から出た」など、公表されていない場所を決めつけるのは避ける必要があります。

サルモネラの具体的な混入経路も特定されていない

さらに今回、原因食品と病因物質は特定されていますが、サルモネラ属菌が具体的にどこから入り込んだのかという混入源・混入経路については特定に至っていません。

みなと保健所も、手などが原因だった可能性だけでなく、食材に菌が存在していた可能性などもあり、菌がどこから来たのかは分からないと説明しています。

つまり、

  • 原因食品:冷やし蟹ラーメン
  • 病因物質:サルモネラ属菌
  • サルモネラの具体的な混入源・経路:特定されていない
  • 店舗ふき取り:黄色ブドウ球菌を1検体から検出

というように、それぞれを分けて整理する必要があります。

品質管理経験から感じる「検出」と「原因」の大きな違い

私は以前、飲料メーカーの品質管理部門で微生物検査に携わっていました。

微生物の検査結果を見るとき、「菌が検出された」という事実はもちろん重要です。

しかし、それだけで事故の原因や汚染経路まで決まるわけではありません。

どの検体から、何が、どのような状況で検出されたのか。

ほかの検査結果とどうつながるのか。

そこを切り分けて見る必要があります。

今回のケースは、まさに「検出された菌」と「行政が食中毒の病因物質として判断した菌」を混同しないことが重要な事例だと感じます。

ふき取り検査は「犯人探し」だけの検査ではない

施設のふき取り検査というと、「食中毒を起こした菌を見つけるための検査」と思われるかもしれません。

しかし、施設環境の衛生状態を確認することにも意味があります。

今回、黄色ブドウ球菌が検出されたという結果は、今回の食中毒の原因菌が黄色ブドウ球菌だったことを意味するものではありません。

一方で、店舗の衛生管理を見直すうえでは無視できない情報です。

実際、食中毒発生後には店舗の殺菌・消毒や衛生状態の再検査、スタッフの衛生講習などが行われています。

まとめ|黄色ブドウ球菌検出とサルモネラ食中毒は分けて考える

麻布十番納涼まつりの冷やし蟹ラーメンによる集団食中毒では、店舗のふき取り検査6検体のうち1検体から黄色ブドウ球菌が検出されました。

患者便からも黄色ブドウ球菌が1検体検出されています。

しかし、今回の食中毒について行政が病因物質として断定したのはサルモネラ属菌です。

また、サルモネラ属菌の具体的な混入源や混入経路については、現在まで特定されていません。

「菌が検出された」ことと、「その菌が今回の食中毒を起こした」ことは同じではありません。

患者、調理従事者、食品、施設環境など、それぞれの検査結果を切り分けて見ることで、今回の複雑な検査結果が理解しやすくなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました