サンマの不漁が話題になると、よく聞かれるのが「中国や台湾などの外国船が先に獲ってしまうから、日本でサンマが獲れないのでは?」という疑問です。
サンマは日本の秋の味覚としてなじみ深い魚ですが、実際には日本だけが利用している魚ではありません。
広い北太平洋を回遊するため、日本のほか、中国、台湾、韓国、ロシアなど複数の国・地域が漁獲する国際的な水産資源です。
では、近年のサンマ不漁は外国船による漁獲が原因なのでしょうか。
結論からいうと、外国船による漁獲だけを原因とするのは適切ではありません。
一方で、複数の国・地域による漁獲がサンマ資源へ与える影響を無視することもできません。
この記事では、日本・中国・台湾などによるサンマ漁と、2026年の国際的な資源管理について整理します。
結論|外国船だけがサンマ不漁の原因ではない
サンマが減った理由をひとつだけ挙げることはできません。
近年のサンマ不漁には、
- サンマ資源量そのものの減少
- 海水温や海流の変化
- 回遊ルートの変化
- 漁場の沖合化
- 餌環境の変化
- 日本を含む各国・地域による漁獲
など、複数の要因が関係しています。
つまり、
「外国船が全部獲ってしまったからサンマが日本に来ない」
と単純に説明することはできません。
ただし、サンマは複数の国・地域が利用する資源であるため、国際的に漁獲量を管理する必要があります。
サンマは「日本だけの魚」ではない
日本では秋の味覚として非常になじみ深いサンマですが、その生息域は日本周辺だけではありません。
サンマは北太平洋を広く回遊します。
そのため、公海を含む広い海域で日本以外の漁船もサンマを漁獲しています。
北太平洋でサンマを利用する主な国・地域には、日本、中国、台湾、韓国、ロシアなどがあります。
サンマ資源を守るには、日本国内だけで漁獲を減らしても十分とは限りません。
資源を共有する国・地域が同じルールのもとで管理する必要があります。
なぜ「中国や台湾が獲っている」と話題になるの?
近年は、日本近海よりも沖合にサンマの漁場が形成される傾向があります。
日本の漁船がサンマを獲る前に、公海で外国漁船が漁獲しているのではないかという見方が広がった背景には、こうした漁場の沖合化があります。
特に大型船は遠くの公海まで移動して操業することができます。
一方、日本のサンマ漁船には小型・中型船も多く、漁場が遠くなるほど燃料や時間の負担が大きくなります。
そのため、サンマの分布が沖合へ移動すると、同じ資源を利用していても漁業者によって獲りやすさが変わることがあります。
では外国船が日本のサンマを「先取り」しているの?
この表現には注意が必要です。
サンマは国境を越えて回遊する魚であり、公海で漁獲されるサンマを単純に「日本のサンマ」と呼ぶことはできません。
もちろん、公海での漁獲がその後の資源や日本近海への来遊へ影響する可能性はあります。
しかし、サンマの回遊ルートや資源量は海洋環境によっても大きく変化します。
そのため、
「外国船が獲った分だけ、日本へ来るサンマが減った」
と一対一で結びつけることはできません。
サンマ資源はNPFCで国際的に管理されている
北太平洋のサンマ資源管理で重要な役割を果たしているのが、北太平洋漁業委員会、NPFCです。
NPFCには、日本のほか、中国、台湾、韓国、ロシア、カナダ、米国などが参加しています。
サンマのように国境を越えて回遊する魚では、ひとつの国だけで資源管理することは難しいため、こうした国際的な枠組みで漁獲上限などを決めています。
2026年のサンマ漁獲上限は5%削減
2026年4月に大阪で開かれたNPFC第10回年次会合では、サンマについて新たな漁獲上限が合意されました。
2026年の公海におけるサンマの漁獲上限は、前年の12万1500トンから5%削減され、11万5425トンとなりました。
また、EEZを含む分布域全体の年間漁獲量についても、前年の20万2500トンから5%削減し、19万2375トン以内に抑えることが決められています。
| 区分 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 公海の漁獲上限 | 121,500トン | 115,425トン |
| 分布域全体の年間漁獲上限 | 202,500トン | 192,375トン |
つまり国際的にも、サンマ資源の状況を踏まえて漁獲量を抑える方向へ動いていることがわかります。
日本とロシアの200海里水域にも上限がある
2026年の合意では、日本とロシアが協力し、それぞれの200海里水域内でのサンマ漁獲量を合計7万6950トン以内に抑えることも決められました。
これも前年から5%削減された水準です。
つまり、規制対象は公海で操業する外国船だけではありません。
日本を含めて、サンマを利用する側全体で漁獲量を抑える仕組みになっています。
なぜ2026年は「5%削減」なの?
NPFCでは、サンマ資源を将来にわたって利用するため、漁獲量を資源状態に応じて調整する仕組みが検討されています。
2026年については科学委員会で資源評価について完全な合意に至らず、従来の暫定的な漁獲管理ルールによる10%削減は適用されませんでした。
その代わり、年次会合で2026年の漁獲上限を前年から5%削減することで合意しました。
さらに2027年については、2026年の漁獲上限から10%削減することが合意されています。
外国船の漁獲はサンマ資源に関係ないわけではない
ここまで読むと、「外国船は関係ないの?」と思うかもしれません。
もちろん、関係がないわけではありません。
サンマ資源から魚を漁獲する以上、日本の漁船も外国の漁船も資源量へ影響を与えます。
そのため国際的に漁獲上限を設定し、各国・地域の漁獲を管理する必要があります。
問題なのは、外国船だけを切り取って原因と決めつけることです。
日本もサンマを漁獲する国であり、資源利用者のひとつです。
資源を回復させるためには、日本を含むすべての利用国・地域が管理に参加する必要があります。
海水温や回遊ルートの変化も同時に起きている
サンマ不漁を外国船だけで説明できない大きな理由が、海洋環境の変化です。
近年は親潮の南下が弱まるなど海流に変化がみられ、北海道や三陸沖の海水温も変化しています。
こうした環境変化によってサンマの分布や回遊ルートが沖合へ移動し、日本近海へ来遊する量が減っている可能性があります。
さらに沖合域では、サンマの餌となる動物プランクトンの密度が低いとされ、成長や生き残りへの影響も指摘されています。
漁獲圧だけを見るのではなく、こうした海洋環境も同時に考える必要があります。
「外国船のせい」だけでは説明できない理由
| 要因 | どう影響する? |
|---|---|
| 外国・地域漁船による漁獲 | 国際的なサンマ資源から漁獲するため資源へ影響 |
| 日本漁船による漁獲 | 同様にサンマ資源を利用する |
| 海水温・海流の変化 | 分布や回遊ルートを変える |
| 漁場の沖合化 | 日本の漁船がサンマを獲りにくくなる |
| 餌環境の変化 | サンマの成長や生存に影響する可能性 |
| 資源量の減少 | そもそも漁獲できるサンマが少なくなる |
資源管理には「誰が悪いか」より国際協力が重要
サンマは日本の食文化と深く結びついた魚なので、不漁になると「なぜ日本で獲れないのか」と考えたくなります。
しかしサンマから見れば、海に国境はありません。
広い北太平洋を回遊する資源だからこそ、ひとつの国だけで守ることも、ひとつの国だけに原因を求めることも難しい魚です。
重要なのは、資源量を科学的に調査し、その結果に応じて日本、中国、台湾、韓国、ロシアなど利用する国・地域が漁獲量を調整することです。
2027年はさらに10%削減へ
NPFCでは、2027年について2026年の漁獲上限からさらに10%削減することが合意されています。
これはサンマ資源を持続的に利用していくため、より厳しい管理へ進む動きといえます。
ただし、漁獲量を減らしたからといって、すぐにサンマが昔の水準まで戻るとは限りません。
資源回復には時間がかかるうえ、海水温や海流といった人間が直接管理できない要因も関係するためです。
まとめ
サンマ不漁について、「中国や台湾などの外国船が原因では?」という疑問を持つ人は少なくありません。
確かに、日本以外の国・地域によるサンマ漁獲も資源に影響する要因のひとつです。
しかし、外国船だけを不漁の原因とすることはできません。
日本も同じサンマ資源を利用しており、さらに海水温、親潮などの海流、回遊ルート、餌環境、資源量といった複数の要素が関係しています。
2026年にはNPFCで、公海の漁獲上限を11万5425トン、分布域全体の年間漁獲上限を19万2375トンとし、それぞれ前年から5%削減することが決まりました。
つまり現在のサンマ問題は、「どこの国が悪いか」を探すだけではなく、北太平洋全体で資源をどう管理するかという問題になっています。
サンマをこれからも秋の食卓で楽しむためには、科学的な資源評価と国際的な漁獲管理の両方が欠かせません。

コメント