秋鮭はなぜ減った?高水温・海洋環境の変化と北海道の資源減少を解説

未分類

北海道の秋を代表する魚、秋鮭。

ところが近年、その秋鮭が急激に減っています。

2026年に北海道へ来遊すると予測されている秋鮭は約365万尾。

記録的な低水準だった2025年から、さらに約47%減少する見通しです。

ニュースでは「海水温の上昇」や「温暖化」という言葉を目にすることがありますが、秋鮭が減っている理由はそれだけなのでしょうか。

秋鮭は川で生まれ、海へ下り、広い北太平洋を回遊して数年後に戻ってくる魚です。

そのため、資源量には稚魚の時期から成魚として戻るまでのさまざまな環境が関係します。

この記事では、北海道がまとめた秋鮭資源対策の資料などをもとに、秋鮭が減っている背景を整理します。

2026年の秋鮭来遊予測は約365万尾

北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場による2026年の秋鮭来遊予測は、364万4,700尾です。

約365万尾という非常に厳しい数字になりました。

2025年の来遊実績から46.9%減少する予測で、予測通りなら2年連続で1,000万尾を下回ることになります。

2025年もすでに記録的な不漁でした。

そこからさらに半減する可能性があるため、北海道の秋鮭資源は非常に厳しい状況にあります。

北海道の秋鮭はいつから減り始めた?

北海道の資料によると、秋鮭の漁獲尾数は2007年ごろまでは5,000万尾前後で比較的安定していました。

しかし2008年以降は減少傾向となり、2019年以降は2,000万尾程度の低い水準で推移。

2025年の沿岸漁獲尾数は約562万尾まで落ち込みました。

つまり2026年だけ突然魚がいなくなったわけではありません。

長期的な資源減少が続く中で、近年さらに厳しい状況になっているのです。

秋鮭は一生の大部分を自然界で過ごす

北海道では長年、秋鮭のふ化放流事業が行われています。

人工的にふ化させた稚魚を川から放流するため、「たくさん放流すれば、その分たくさん戻ってくるのでは?」と思うかもしれません。

しかし、サケは放流された後、一生の大部分を自然界で過ごします。

川から海へ下った稚魚は北海道沿岸を移動し、さらに広い北太平洋へ。

そこで数年間成長し、成熟した一部の魚が北海道へ戻ってきます。

この長い期間を生き残れるかどうかが、最終的な来遊数を大きく左右します。

減少要因① 稚魚が海へ出た後の海洋環境

北海道が秋鮭資源の減少要因として挙げているもののひとつが、北海道沿岸や沖合の海洋環境です。

特に重要なのが、稚魚が川から海へ下った直後です。

稚魚は北海道沿岸を移動しながら成長し、その後オホーツク海方面へ向かいます。

この時期に、生存や成長に適した環境に出会えるかどうかが重要になります。

水温だけでなく、餌となる生物の分布なども関係します。

海へ放流した後は、人が管理できる環境ではありません。

秋鮭資源を考えるうえで、この「放流後に何が起きているか」が大きなポイントになります。

減少要因② 海水温の上昇

近年、特に注目されているのが海水温です。

北海道は秋鮭資源の減少要因として、秋鮭が戻ってくる時期の高水温化による影響を挙げています。

秋鮭は冷たい海に適応した魚です。

沿岸の水温が高い状態が続けば、回遊経路や沿岸へ近づくタイミングなどに影響する可能性があります。

2026年も北海道周辺では高い水温が観測された時期がありました。

北海道立総合研究機構の観測では、8月下旬の旬平均水温は24.5℃。

平年より2.1℃高く、「かなり高い」と判定されています。

9月上旬も平年より0.6℃高い22.8℃で、「やや高い」状態でした。

9月中旬には平年並みまで下がった

一方、2026年9月中旬の旬平均水温は21.5℃で、平年並みとなりました。

ここは重要なポイントです。

「2026年はずっと異常な高水温だった」と一括りにすることはできません。

水温は地域や時期によって変化します。

秋鮭への影響を考えるときも、単純に年間平均水温だけを見るのではなく、稚魚が海へ出る時期や成魚が沿岸へ戻る時期にどのような環境だったかを見る必要があります。

減少要因③ 餌環境の変化

水温が変わると、魚だけでなく海の生態系も変化します。

秋鮭の稚魚が海で成長するには、十分な餌を確保する必要があります。

北海道の資源対策でも、水温形成や餌の分布が大きく変化していることが課題として挙げられています。

水温が適しているか。

必要な時期に餌があるか。

稚魚が十分に成長できるか。

こうした条件の組み合わせが、その後の生残に関係すると考えられています。

「プランクトンが減ったから秋鮭が減った」だけではない

2026年の秋鮭不漁について、一部の報道では海水温上昇やプランクトンの減少が背景として挙げられています。

ただし、「プランクトンが減ったことだけが原因」と断定するのは適切ではありません。

北海道がまとめた秋鮭資源対策では、沿岸・沖合の海洋環境、放流時期と水温の関係、餌分布、来遊期の高水温など、複数の要素が課題として整理されています。

秋鮭の一生は数年間に及ぶため、一つの原因だけで資源量の増減を説明するのは難しいのです。

減少要因④ 稚魚を放流するタイミングが難しくなっている

北海道が問題としているのが、「適切な放流時期」の判断です。

秋鮭の稚魚は、いつ放流しても同じように生き残れるわけではありません。

海へ出たときの水温や餌環境などが、生存や成長に適した状態になっていることが重要です。

ところが近年は、水温形成や餌の分布が大きく変化し、従来の経験だけでは放流に適した時期を判断しにくくなっています。

北海道では、沿岸環境の変化を踏まえた適期放流などを資源対策として進めています。

減少要因⑤ 親となる秋鮭そのものが足りない

秋鮭が減ることで、新たな問題も生じます。

人工ふ化に使う卵を確保するためには、北海道へ戻ってきた親魚が必要です。

ところが来遊数そのものが減れば、ふ化放流に必要な親魚を確保することも難しくなります。

北海道は、健康な稚魚を生産するための親魚不足も課題として挙げています。

秋鮭が減る。

すると次世代をつくるための親魚確保も難しくなる。

資源を回復させるには、現在の漁獲だけでなく数年先まで考える必要があります。

「放流しているのになぜ減る?」という疑問

北海道では毎年多くの秋鮭稚魚が放流されています。

それでも秋鮭が減っているため、「人工ふ化しているなら魚を増やせるのでは?」という疑問も出てきます。

しかし、ふ化放流は稚魚を海へ送り出すところまで。

その後の数年間は自然界で生き残らなければなりません。

海洋環境が変化すれば、同じ方法・同じ時期に放流しても、過去と同じ割合で戻ってくるとは限りません。

そのため現在は「何尾放流するか」だけでなく、「いつ・どのような状態で放流するか」も重要になっています。

北海道は放流方法そのものを見直している

北海道では秋鮭資源の回復に向け、環境変化に対応したふ化放流方法を検討しています。

主な取り組みには、沿岸環境に合わせた適切な放流時期の検討、海況予測システムの活用、健康で大型な稚魚の生産などがあります。

さらに、放流後の生残率を高めるための餌の研究や、中・後期に戻ってくる秋鮭資源を増やす取り組みも検討されています。

海の環境が変わるなら、放流する側もそれに合わせて変えていく必要があるということです。

高水温だけを原因にすると見えなくなるもの

2026年の秋鮭不漁を考えるとき、「温暖化で海が暑くなったから」という説明は分かりやすいものです。

しかし実際には、秋鮭は数年間にわたって川・沿岸・沖合を移動します。

稚魚期の水温。

餌の量や分布。

放流時期。

沖合の海洋環境。

成魚が戻る時期の沿岸水温。

そして次世代をつくる親魚の確保。

複数の条件が重なり合う問題です。

「原因はこれひとつ」と決めつけず、秋鮭の生活史全体を見る必要があります。

2026年の秋鮭漁はどうなる?

2026年の来遊予測は約365万尾ですが、これはあくまでシーズン前の予測です。

実際の水揚げは地域や時期によって差があります。

例えば9月1日の日高中央漁協3港では5.8トンと、前年初日の9.5トンから約4割減少しました。

一方、新ひだか町の春立漁港では9月2日の初水揚げが約1.8トンで、前年の初水揚げより約1.3トン多くなりました。

同じ北海道でも、港やタイミングによって状況は異なります。

一日の水揚げだけで「今年は豊漁」「今年は不漁」と判断せず、シーズン全体の数字を見ることが重要です。

秋鮭が減れば食卓以外にも影響する

秋鮭不漁の影響は、スーパーで売られる切り身の値段だけではありません。

生筋子やいくらの原料供給、加工業、流通業、定置網漁業、ふ化放流事業など、北海道では多くの産業が秋鮭と結びついています。

北海道も、秋鮭を地域経済を支える基幹的な水産資源のひとつとして位置づけています。

秋鮭資源の回復は「今年鮭を安く買えるか」という問題だけではないのです。

まとめ

北海道の秋鮭は長期的な減少傾向にあり、2026年の来遊予測は約365万尾まで落ち込みました。

秋鮭減少の背景として、北海道は稚魚が海へ出た後の海洋環境や、来遊期の高水温化などを挙げています。

さらに、水温や餌分布の変化によって放流に適した時期を判断しにくくなっていることや、親魚不足なども課題です。

2026年も8月下旬には北海道周辺の旬平均水温が平年より2.1℃高い「かなり高い」状態となりました。

一方、9月中旬には平年並みまで下がっており、水温は時期によって変化しています。

秋鮭不漁を「高水温だけ」が原因と断定するのではなく、稚魚期から成魚として戻るまでの海洋環境や、ふ化放流を含めて考えることが大切です。

北海道では現在、環境変化に合わせた放流時期や方法の改善、海洋調査などを進めています。

2026年の記録的な不漁予測は、秋鮭と変化する海の環境を改めて考える年になりそうです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました