メイトー「なめらかプリン」などの商品が自主回収されたことで、
「サルモネラ菌による食中毒が起きたの?」
「プリンからサルモネラ菌が出たの?」
「健康被害がないのに、どうして約1万9千個も回収するの?」
と疑問に思った人もいるかもしれません。
今回のニュースを理解するうえで、とても重要なのが、
「食品衛生法上の不適合」と「食中毒の発生」は同じ意味ではない
ということです。
食品の自主回収は、実際に誰かが食中毒を発症した場合だけに行われるものではありません。
今回のメイトー「なめらかプリン」などでは、使用原料の一部である「殺菌液全卵」からサルモネラ菌が検出され、食品衛生法上の不適合が判明したことから対象商品の自主回収が行われています。
では、「規格に適合していないこと」と「食中毒が起きること」は何が違うのでしょうか。
今回の自主回収を例に整理してみます。
- まず今回のメイトープリン自主回収を整理
- 「食品衛生法上の不適合」とは?
- 「不適合」と「食中毒」は同じではない
- 自主回収は「食中毒が起きてから」だけではない
- 「健康被害なし」でも自主回収はあり得る
- 逆に食中毒が疑われる場合はどうなる?
- 今回のプリンは「サルモネラ食中毒」と呼んでいい?
- 「サルモネラ検出」という言葉だけを切り取らない
- 「製品陰性」だけを切り取るのも違う
- 回収対象なら「健康被害なし」でも食べない
- 元品質管理の視点|「菌が出た=食中毒」ではない
- 今回の事案を5段階に分けると分かりやすい
- 自主回収制度は健康被害を防ぐための仕組みでもある
- 食品衛生法上の不適合と食中毒についてよくある質問
- まとめ|「自主回収」「規格不適合」「食中毒」は分けて考えよう
まず今回のメイトープリン自主回収を整理
今回の情報を簡単にまとめると、
- 対象商品に使用された原料の一部は「殺菌液全卵」
- その殺菌液全卵からサルモネラ菌を検出
- 殺菌液卵に求められる成分規格に不適合
- その原料を使用した対象商品を自主回収
- 対象製品には加熱殺菌工程がある
- 製品の保存品検査ではサルモネラ菌陰性
というものです。
ここで特に大切なのが、
「完成したプリンからサルモネラ菌が検出されたため回収した」という事案ではない
という点です。
サルモネラ菌が検出されたと公表されているのは、使用原料の一部である殺菌液全卵です。
「食品衛生法上の不適合」とは?
食品には、安全性を確保するためにさまざまな規格や基準が設けられています。
今回問題となった殺菌液卵にも、サルモネラ属菌についての成分規格があります。
厚生労働省が定める「食品、添加物等の規格基準」では、
殺菌液卵は、サルモネラ属菌が検体25gにつき陰性でなければならない
とされています。
つまり「殺菌液卵」という原料には、満たす必要のある基準があるわけです。
その検査でサルモネラ属菌が検出されれば、求められている成分規格に適合していないことになります。
これが今回の自主回収を理解する大きなポイントです。
「不適合」と「食中毒」は同じではない
では、規格に適合していない食品が見つかったら、それは「食中毒」なのでしょうか。
そうとは限りません。
簡単に分けると、
| 言葉 | 考えるポイント |
|---|---|
| 食品衛生法上の不適合 | 食品や原料などが求められる法令上の規格・基準に適合しているか |
| 自主回収 | 問題のある、または問題のおそれがある食品を事業者が流通・消費から取り除く対応 |
| 食中毒 | 食品などを原因として実際に健康被害が発生し、原因について調査・判断されるもの |
この3つは関係することがありますが、同じ意味ではありません。
自主回収は「食中毒が起きてから」だけではない
「リコール」と聞くと、
「もう誰かが被害を受けたから回収している」
というイメージがあるかもしれません。
しかし食品の自主回収制度は、健康被害が発生してから対応するためだけのものではありません。
食品衛生法に違反する食品や、違反するおそれがある食品などについて事業者が自主回収を行う場合には、行政への届出制度があります。
その目的には、行政がリコール情報を把握し、監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生を防止することも含まれています。
つまり自主回収には、
「健康被害が広がってから回収する」のではなく、問題が判明した段階で流通から取り除く
という予防的な役割があります。
「健康被害なし」でも自主回収はあり得る
ここまで分かると、
「健康被害が確認されていないのに回収する」
という状況も不思議ではなくなります。
例えば、
原料の規格不適合が判明
↓
その原料を使用した商品を特定
↓
健康被害が確認される前に自主回収
という対応があり得ます。
したがって、
「自主回収された=すでに食中毒が発生した」
と考えるのは正確ではありません。
逆に食中毒が疑われる場合はどうなる?
食品を食べた人に下痢、腹痛、発熱などの症状が発生し、食中毒が疑われる場合には、別の仕組みで調査が進みます。
食品衛生法では、食中毒患者等を診断した医師は保健所長へ届け出ることとされています。
届出などを受けて食中毒患者等が発生していると認められる場合、保健所は原因を調査します。
その際には、
- 患者の症状
- 患者が食べたもの
- 発症までの時間
- 患者などからの検査結果
- 食品の検査結果
- 施設の衛生状況
- 共通して食べた食品
など、さまざまな情報を調べることがあります。
単に「食品から菌が出た」という情報だけで、すべての食中毒事案が決まるわけではありません。
今回のプリンは「サルモネラ食中毒」と呼んでいい?
今回の公表内容をもとに、
「メイトーのプリンでサルモネラ食中毒が発生した」
と表現するのは適切ではありません。
今回サルモネラ菌が検出されたとされているのは、使用原料の一部である殺菌液全卵です。
さらに、対象製品の保存品検査ではサルモネラ菌は陰性とされています。
したがって今回の記事では、
「サルモネラ菌が検出された原料を使用した対象商品の自主回収」
と整理するのが適切です。
「サルモネラ検出」という言葉だけを切り取らない
食品ニュースでは、
「サルモネラ菌検出」
という言葉には非常に強いインパクトがあります。
しかし、その言葉を見たら次に、
- 何から検出された?
- 原料?完成品?
- どの検査で分かった?
- 実際に患者は発生している?
- メーカーや行政は何を発表している?
まで確認したいところです。
今回の場合、
「サルモネラ菌検出」
だけを見て、
「サルモネラ菌が入ったプリンが販売された」
と変換してしまうと、公表情報とは違う内容になってしまいます。
「製品陰性」だけを切り取るのも違う
反対に、
「保存品が陰性だった」
という情報だけを見て、
「それなら回収なんて必要なかったのでは?」
と考えるのも適切ではありません。
今回問題になっているのは、原料の殺菌液全卵が求められる規格に適合していなかったことです。
さらに、保存品の「陰性」は、検査した検体について所定の条件でサルモネラ菌が検出されなかったという結果です。
原料不適合と製品検査陰性は、同時に成立します。
回収対象なら「健康被害なし」でも食べない
今回のニュースを詳しく調べると、
「加熱工程もある」
「保存品も陰性」
という情報が出てきます。
しかし、それを理由に、
「じゃあ手元の回収対象品を食べても大丈夫」
と自己判断することは避けましょう。
手元の商品が回収対象に該当する場合は、メーカーが案内している回収方法に従ってください。
食品回収について調べる目的は、「食べてもいい理由を探す」ことではなく、何が起きていて自分の商品が対象なのかを正しく確認することです。
元品質管理の視点|「菌が出た=食中毒」ではない
私は以前、飲料メーカーの品質管理で微生物検査に携わっていました。
微生物に関するニュースを見るとき、特に気になるのが、
「菌が検出された」という検査結果と、「食中毒が発生した」という出来事が一緒にされてしまうこと
です。
微生物検査では、
- 原料
- 製造途中の検体
- 完成品
- 製造環境
など、さまざまなものを調べることがあります。
そこで何らかの微生物が検出されたとしても、
「その商品を食べた人が食中毒を起こした」
という意味になるわけではありません。
だからこそ食品ニュースを見るときは、
「どこから、何が検出されたのか」
を最初に確認することが大切です。
今回の事案を5段階に分けると分かりやすい
今回のメイトープリン自主回収を整理するなら、次の5段階に分けると理解しやすくなります。
①原料
使用原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出されました。
②規格
殺菌液卵には「サルモネラ属菌が検体25gにつき陰性」という成分規格があります。
③製造
対象となったプリンには、その後の加熱殺菌工程があります。
④完成品
保存品についてサルモネラ菌検査を行った結果、陰性とされています。
⑤対応
原料の食品衛生法上の不適合が判明したため、対象商品が自主回収されています。
このように分けると、
「原料から菌が出た」「製品は陰性」「それでも回収」
という、一見不思議に見える3つの情報が矛盾していないことが分かります。
自主回収制度は健康被害を防ぐための仕組みでもある
食品の自主回収情報について、現在は事業者から行政への届出制度があります。
食品衛生法に違反する、または違反するおそれがある食品などを事業者が自主回収する場合、一定の場合を除いて回収情報を届け出る仕組みです。
行政が回収情報を把握することで、
- 監視や指導
- 消費者への情報提供
- 健康被害の発生防止
などにつなげます。
つまり自主回収は、
「被害が出た証拠」だけではなく、「被害を防ぐための対応」でもある
ということです。
食品衛生法上の不適合と食中毒についてよくある質問
自主回収された食品は食中毒を起こした食品?
必ずしもそうではありません。食品衛生法に違反する、または違反するおそれがある食品などについて、健康被害が確認される前に自主回収が行われる場合もあります。
今回のプリンからサルモネラ菌が検出された?
今回サルモネラ菌が検出されたと公表されているのは、対象商品に使用された原料の一部である殺菌液全卵です。完成品の保存品検査ではサルモネラ菌陰性とされています。
殺菌液全卵はなぜ不適合になった?
殺菌液卵には「サルモネラ属菌が検体25gにつき陰性」という成分規格があります。今回、使用原料の一部からサルモネラ菌が検出されたため、規格への不適合が問題となりました。
製品が陰性なのに回収することはある?
あります。製品の検査結果と、使用した原料が法令上の規格に適合しているかは別に評価する必要があります。
回収対象の商品を持っていたらどうすればいい?
メーカーが案内している最新の対象商品・賞味期限・ロット番号を確認し、対象品であれば回収方法に従ってください。
まとめ|「自主回収」「規格不適合」「食中毒」は分けて考えよう
メイトー「なめらかプリン」などの自主回収では、使用原料の一部である殺菌液全卵からサルモネラ菌が検出され、食品衛生法上の不適合が判明しました。
一方、完成した製品には加熱殺菌工程があり、保存品検査ではサルモネラ菌陰性とされています。
今回の事案から覚えておきたいのは、
- 原料からサルモネラ菌が検出されたこと
- 完成品から検出されたという意味ではないこと
- 規格不適合と食中毒発生は同じではないこと
- 健康被害が発生する前でも自主回収は行われることがあること
- 回収対象品はメーカーの案内に従うこと
です。
食品回収のニュースでは、
「菌が出た!」
という強い言葉だけが目に入りがちです。
しかし本当に確認したいのは、
「何から検出されたのか」「どの規格に適合しなかったのか」「製品検査はどうだったのか」「実際に健康被害は確認されているのか」
という情報です。
そこまで分けて見ることで、必要以上に怖がることも、反対に問題を軽く考えることも避けやすくなります。
今回の自主回収は、「サルモネラ菌」という言葉だけでは分からない、食品の原料管理・加熱殺菌・微生物検査・保存品検査・自主回収制度まで考えられる事例となっています。


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