腸管出血性大腸菌とは?O157だけじゃない|O26・O111との違いも解説

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「腸管出血性大腸菌」と聞いて、最初にO157を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

確かにO157は、腸管出血性大腸菌の代表的な種類です。

しかし、腸管出血性大腸菌はO157だけではありません。

O26やO111、O145など、ほかにも複数の種類が知られています。

2026年9月には滋賀県で「腸管出血性大腸菌感染症多発警報」が発令されましたが、これも「O157だけが多発している」という意味ではありません。

今回は、そもそも腸管出血性大腸菌とはどんな菌なのか、O157・O26・O111とは何が違うのかを栄養士目線でわかりやすく整理します。

そもそも大腸菌とは?

大腸菌は、人や動物の腸管などに存在する細菌です。

「大腸菌」と聞くと、すべて危険な菌のように感じるかもしれません。

しかし、大腸菌のほとんどは人に害を与えるものではありません。

その一方で、一部には下痢などの消化器症状や重い合併症を引き起こすものがあります。

こうした病気を起こす大腸菌は「病原大腸菌」と呼ばれています。

腸管出血性大腸菌は病原大腸菌の一種

病原大腸菌には、病気を起こす仕組みによっていくつかの種類があります。

その一つが「腸管出血性大腸菌」です。

腸管出血性大腸菌は、強い毒性を持つ「ベロ毒素」を産生することが大きな特徴です。

この毒素によって、激しい腹痛や水様性の下痢、血便などを起こすことがあります。

「O157」は菌の名前そのものではない?

O157という言葉は非常に有名ですが、「腸管出血性大腸菌=O157」という意味ではありません。

大腸菌は、菌の表面にある抗原などの違いによって細かく分類されています。

その一つが「O抗原」です。

O157の「O」は、このO抗原による分類を表しています。

157番目に見つかったO抗原

厚生労働省によると、「O157」はO抗原として157番目に発見されたものを持つ大腸菌という意味です。

つまり、数字が大きいから毒性が強い、157番目だから特別危険という意味ではありません。

菌を分類するための番号です。

O157にもさらに種類がある

大腸菌にはO抗原のほか、べん毛由来の「H抗原」による分類もあります。

そのため、O157の中でもさらに細かく分類されます。

よく知られている「O157:H7」も、その分類の一つです。

O157以外にも腸管出血性大腸菌がある

腸管出血性大腸菌として知られている血清型には、O157以外にも、

  • O26
  • O111
  • O128
  • O145

などがあります。

そのため、「O157ではなかったから腸管出血性大腸菌ではない」とは言えません。

O26とは?

O26も、腸管出血性大腸菌として知られている血清型の一つです。

O157ほど一般に名前を知られていないかもしれませんが、日本でも感染例が確認されています。

ベロ毒素を産生するO26であれば、腸管出血性大腸菌として扱われます。

O111とは?

O111も腸管出血性大腸菌の代表的な血清型の一つです。

過去には日本国内でO111による食中毒事例も発生しています。

O157だけに注意すればよいのではなく、ベロ毒素を産生するさまざまな大腸菌に注意する必要があります。

「Oの番号」と「毒素」は別の情報

ここは少し難しいですが、腸管出血性大腸菌を理解するうえで重要なポイントです。

O157やO26、O111という数字は、菌の表面にあるO抗原による分類です。

一方、腸管出血性大腸菌で重要なのが「ベロ毒素を産生するか」という性質です。

つまり、血清型の番号と毒素の情報は別々に考える必要があります。

ベロ毒素とは?

腸管出血性大腸菌は、強い毒性を持つベロ毒素を産生します。

「志賀毒素群毒素」と呼ばれることもあります。

ベロ毒素にはVT1、VT2と呼ばれるタイプや、それぞれの亜型があります。

腸管出血性大腸菌によっては、一つまたは複数のタイプの毒素を産生します。

なぜ「出血性」と呼ばれるの?

腸管出血性大腸菌に感染すると、激しい腹痛や水のような下痢が起こり、その後、血便がみられることがあります。

腸管に強い炎症を起こし、出血性大腸炎につながることがあるため「腸管出血性大腸菌」と呼ばれています。

ただし、感染したすべての人に血便が出るわけではありません。

症状がまったく出ない人もいる

腸管出血性大腸菌に感染しても、症状の現れ方には大きな差があります。

まったく症状がない場合もあれば、軽い腹痛や下痢だけで終わる場合もあります。

一方で、頻回の水様便や激しい腹痛、著しい血便を起こす場合もあります。

潜伏期間が比較的長い

腸管出血性大腸菌感染症では、感染してから症状が出るまでに時間がかかることがあります。

厚生労働省や滋賀県の資料では、おおよそ3〜8日の潜伏期間を経て発症することがあるとされています。

そのため、発症直前に食べた食品だけを見て感染源を判断することはできません。

重い合併症「HUS」に注意

腸管出血性大腸菌で特に注意したいのが、溶血性尿毒症症候群(HUS)です。

ベロ毒素などの影響によって、

  • 溶血性貧血
  • 血小板減少
  • 急性腎障害

などを起こす重い合併症です。

脳症などを起こすこともあります。

下痢が始まって数日後にも注意

滋賀県や厚生労働省によると、症状がある人の一部では、下痢などの初発症状から数日〜2週間以内、特に5〜7日後ごろにHUSや脳症などを発症することがあります。

「下痢が少し落ち着いたからもう大丈夫」と自己判断せず、体調の変化に注意することが重要です。

子どもや高齢者では特に注意

厚生労働省は、特に小児や高齢者ではHUSや脳症などの重い合併症に注意が必要としています。

激しい腹痛や血便などがある場合には、早めに医療機関へ相談しましょう。

腸管出血性大腸菌はどこにいる?

腸管出血性大腸菌は、牛などの家畜や人の便から見つかることがあります。

家畜では菌を保有していても症状が出ないことが多く、外見だけで菌を持っているか判断することはできません。

感染源は牛肉だけではない

腸管出血性大腸菌による感染というと、生肉や焼肉をイメージするかもしれません。

しかし、過去には牛肉やその加工品だけでなく、サラダ、野菜、果物、漬物などが原因または原因と推定された事例もあります。

そのため、「肉を食べなければ感染しない」と考えるのは適切ではありません。

動物との接触で感染することもある

腸管出血性大腸菌は、食品だけを介して感染するわけではありません。

動物との接触によって感染した事例も報告されています。

動物と触れ合ったあとは、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。

人から人への二次感染もある

感染者の便に含まれる菌が手指などを介して口に入ることで、二次感染が起こる可能性があります。

家庭内で感染者のおむつ交換や排泄介助を行う場合には、特に手洗いが重要です。

少ない菌量でも感染する可能性

腸管出血性大腸菌は、比較的少ない菌量でも感染が成立する可能性があるとされています。

そのため、食品の加熱だけでなく、手洗いや調理器具の衛生管理、二次汚染防止も重要です。

加熱すれば予防できる?

腸管出血性大腸菌は、十分な加熱によって死滅させることができます。

そのため、生肉や加熱不十分な肉を避け、中心部まで十分に加熱することが重要です。

特にハンバーグや成形肉などでは、表面だけでなく中心まで火が通っていることを確認しましょう。

焼肉ではトングや箸の使い分けを

生肉をつかんだ箸やトングには菌が付着する可能性があります。

そのまま焼き上がった肉をつかむと、せっかく加熱した食品へ再び菌を付着させることがあります。

生肉用と食事用の箸やトングを分けることが重要です。

野菜も流水で洗う

滋賀県は今回の警報でも、生で食べる野菜や調理前の野菜を流水で洗うよう呼びかけています。

肉だけに注意を集中するのではなく、食品全体を衛生的に取り扱いましょう。

今回の滋賀県の警報は「O157警報」ではない

2026年9月10日に滋賀県が発令したのは、

「腸管出血性大腸菌感染症多発警報」

です。

今回の警報そのものを「O157だけが県内で多発している」と読み替えることはできません。

腸管出血性大腸菌には複数の血清型があることを理解しておくことが大切です。

O157・O26・O111より大事なのは「腸管出血性大腸菌か」

一般の生活で感染予防を考えるとき、O157、O26、O111という番号をすべて覚える必要はありません。

重要なのは、腸管出血性大腸菌には複数の種類があり、ベロ毒素を産生して重い症状を起こす可能性があるということです。

どの血清型であっても、基本的な予防は共通しています。

まとめ

腸管出血性大腸菌は、病気を起こす大腸菌の一種です。

代表的なO157だけでなく、O26やO111、O145など複数の血清型があります。

ポイントを整理すると、

  • 大腸菌のほとんどは無害だが、一部には病原性がある
  • 腸管出血性大腸菌はベロ毒素を産生する
  • O157は代表的な血清型の一つ
  • O26やO111なども腸管出血性大腸菌になり得る
  • 感染すると水様性下痢、激しい腹痛、血便などがみられることがある
  • HUSなどの重い合併症に注意が必要
  • 食品だけでなく人や動物を介して感染することもある

ということです。

「腸管出血性大腸菌=O157」という一つの菌名ではなく、O157など複数のタイプを含むグループとして理解すると分かりやすいでしょう。

次の記事では、腸管出血性大腸菌の潜伏期間について、感染してから何日後に症状が出るのか、食べたものを何日前まで振り返ればよいのかを詳しく解説します。

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