秋の味覚として親しまれてきたサンマですが、近年は「昔ほど獲れなくなった」というニュースを目にする機会が増えています。
2026年も、水産庁が公表した8月から12月の長期漁海況予報では、道東から常磐海域へのサンマの来遊量について「昨年の水準を下回る」と予測されています。
では、なぜサンマは少なくなっているのでしょうか。
「海水温が高いから?」
「サンマが日本に来なくなった?」
「そもそも海にいるサンマ自体が減っている?」
実は、どれかひとつだけで説明できる問題ではありません。
海水温や海流が変わればサンマの回遊ルートが変わり、回遊する場所が変われば餌環境も変化します。
さらに、成長や生き残り、資源量、漁場までの距離なども絡み合って、日本での漁獲量に影響します。
この記事では、2026年のサンマが少ないと予測されている背景を、海水温・回遊・餌・資源量という視点からわかりやすく整理します。
- 結論|サンマ不漁は「海水温だけ」が原因ではない
- そもそもサンマは日本の近くにずっといる魚ではない
- 海水温が上がるとサンマはどうなる?
- ポイントになる「親潮」とは?
- 2026年も親潮の南限は北寄りと予測
- サンマの漁場が日本から遠くなっている
- 2026年も公海中心の魚群来遊が予測されている
- 回遊ルートが変わると「餌」も変わる
- 餌不足はサンマのサイズにも関係する?
- マイワシなど「餌を奪い合う魚」も関係?
- そもそもサンマ自体の資源量も減っている
- 「日本に来ない」と「サンマが減った」は分けて考える
- 2026年はなぜ「前年より少ない」と予測された?
- 9月に大量水揚げがあっても矛盾しない?
- 外国船の漁獲も原因なの?
- サンマが減った理由を整理すると
- 今後サンマは戻ってくる?
- まとめ
結論|サンマ不漁は「海水温だけ」が原因ではない
サンマが少なくなった理由について、「海水温が上がったから」と説明されることがあります。
海洋環境の変化が重要な要因であることは確かですが、実際にはもっと複雑です。
水産庁は近年のサンマ漁獲量減少について、海水温や海流の変化に伴う分布・回遊の変化、漁場の沖合化、餌環境の悪化、競合する魚の増加、資源量の減少など、複数の要因を挙げています。
大きな流れとして考えると、
- 海水温や海流など海洋環境が変化する
- サンマの分布や回遊ルートが変化する
- 日本近海へ来るサンマが減ったり、漁場が沖合へ移動したりする
- 沖合では餌環境も異なり、成長や生き残りに影響する可能性がある
- 資源量そのものにも影響する
- 日本で獲れるサンマが減る
という複数の要素がつながっています。
そもそもサンマは日本の近くにずっといる魚ではない
サンマは、広い北太平洋を回遊する魚です。
日本沿岸だけで一生を過ごしているわけではありません。
季節や成長段階に応じて広い海域を移動するため、海水温や海流などの海洋環境が変わると、その分布や回遊経路も変化する可能性があります。
つまり、サンマ漁を考えるときは、単純に「日本の近海に魚がいるか」だけを見ることはできません。
海水温が上がるとサンマはどうなる?
魚には、それぞれ生活しやすい水温や海洋環境があります。
サンマのような回遊魚の場合、海水温や海流が変化すると、適した環境を求めて分布する場所や回遊するルートが変わることがあります。
水産庁は、海水温の上昇や海流の変化が回遊性魚介類の分布や資源量に影響していると説明しています。
ここで大切なのは、
「海水温が上がったからサンマが死んで全部いなくなる」
という単純な話ではないことです。
海の環境が変わることで、サンマがいる場所や移動する道が変わり、それが日本の漁場形成にも影響します。
ポイントになる「親潮」とは?
サンマの回遊を考えるうえで重要な海流のひとつが親潮です。
親潮は、北海道や東北の太平洋側へ南下する冷たい海流です。
栄養分が豊富で、植物プランクトンや動物プランクトンが多い海域を形成することから、多くの水産資源と関係しています。
しかし近年は、親潮の南下が弱まるなど海洋環境に変化がみられています。
水産庁は、親潮の南下の弱まりと、それに伴う釧路沖・三陸沖の海水温上昇を、サンマの分布や回遊の変化に関係する要因として挙げています。
2026年も親潮の南限は北寄りと予測
2026年度のサンマ長期漁海況予報でも、海流の状態について注目すべき予測が示されています。
8月から9月上旬について、親潮第1分枝の南限はかなり北寄り、親潮第2分枝の南限は極めて北寄りで推移すると予測されました。
一方、近海の黒潮続流の北限はやや北寄りで推移するとされています。
こうした海流の位置は、サンマがどこを回遊し、どこに漁場が形成されるのかを考える重要な材料になります。
サンマの漁場が日本から遠くなっている
近年のサンマ不漁で大きな問題となっているのが、漁場の沖合化です。
かつて日本の漁船が利用しやすかった海域からサンマの分布が変化し、より沖合へ漁場が形成されるようになると、魚がいたとしても簡単に獲りに行けるとは限りません。
特に小型漁船の場合、遠く離れた漁場まで操業に行くことが難しくなります。
漁場が遠くなれば、燃料も多く必要です。
移動時間も長くなり、天候や船の大きさなどによっては操業そのものを見合わせる場合もあります。
つまり、
「サンマがいる」ことと「日本の漁船が効率よく獲れる」ことは別問題です。
2026年も公海中心の魚群来遊が予測されている
2026年の長期漁海況予報では、8月から9月にかけて、北海道からウルップ島の東方沖となる東経152度から168度の公海を中心に、小規模な魚群が来遊すると予測されています。
10月には東経160度以西の公海を中心に魚群が来遊する見通しです。
「秋になれば日本沿岸へ大量にサンマが押し寄せてくる」と単純に考えられる状況ではなく、2026年も沖合の魚群を追う漁になる可能性があります。
回遊ルートが変わると「餌」も変わる
海流や海水温の変化によって回遊する場所が変わると、もうひとつ重要な問題が生まれます。
それが餌です。
サンマは動物プランクトンなどを食べて成長します。
しかし、どの海域を回遊しても同じ量の餌があるわけではありません。
水産庁は、沖合域ではサンマの餌となる動物性プランクトンの密度が低いことを指摘しています。
餌の少ない場所を回遊するようになれば、十分に成長できなかったり、生き残る割合に影響したりする可能性があります。
餌不足はサンマのサイズにも関係する?
餌となるプランクトンが十分に得られなければ、サンマの成長にも影響する可能性があります。
2026年の長期漁海況予報では、漁獲物に占める1歳魚の割合が前年を下回るだけでなく、1歳魚の体重も前年を下回ると予測されています。
つまり2026年は、「どれだけ獲れるか」という量だけでなく、「どのくらいの大きさのサンマが獲れるか」という魚体サイズにも注目する必要があります。
ただし、個々のサンマが小さい理由をすべて餌不足だけで説明することはできません。
年齢構成や回遊状況なども関係するため、複数の要因を合わせて見る必要があります。
マイワシなど「餌を奪い合う魚」も関係?
サンマだけが海のプランクトンを食べているわけではありません。
同じような餌を利用する魚が増えれば、餌をめぐる競争が強くなる可能性があります。
水産庁は、サンマ資源量減少の可能性に関係する要因として、マイワシなど競合種の増加や餌の減少も挙げています。
つまりサンマの問題は、「サンマだけ」を見ても全体像を理解しにくいのです。
海流、水温、プランクトン、ほかの魚など、海の生態系全体の変化が関係しています。
そもそもサンマ自体の資源量も減っている
もうひとつ忘れてはいけないのが、サンマの資源量です。
日本近海へ来るサンマのルートが変わっただけなら、「日本で獲れないだけで、沖には大量にいるのでは?」と考えたくなります。
しかし、近年のサンマについては資源量そのものの減少も問題となっています。
水産庁は、回遊経路や生育場が餌環境の悪い沖合域へ移ったことなどにより、資源量が減少した可能性を示しています。
したがって近年の不漁は、
- サンマが日本近海へ来にくくなった
- 漁場が遠くなった
- 餌環境が変化した
- 資源量自体も減少している
といった問題が重なっていると考える必要があります。
「日本に来ない」と「サンマが減った」は分けて考える
ここはサンマ不漁を理解するときに重要なポイントです。
日本のサンマ漁獲量が減る理由には、大きく分けて2つの方向があります。
| 要因 | どう影響する? |
|---|---|
| 分布・回遊の変化 | サンマが日本近海へ来にくくなり、漁場が沖合化する |
| 資源量の減少 | 北太平洋に存在するサンマ資源そのものが少なくなる |
この2つは別の問題ですが、実際には同時に起こる可能性があります。
だからこそ、「海水温が高いから日本に来ないだけ」「全部外国船に獲られたから」と、ひとつの理由だけで説明するのは難しいのです。
2026年はなぜ「前年より少ない」と予測された?
2026年の予報は、単に最近の水揚げ量だけを見て出されたものではありません。
水産研究・教育機構などは、5月から7月に表層トロールによるサンマ資源量の直接推定調査を行っています。
こうした資源調査や海況の情報などを踏まえ、8月から12月の漁況が予測されています。
その結果、2026年については漁期を通じた来遊量が昨年の水準を下回るとの見通しが示されました。
一方で、これはあくまでシーズン前から途中にかけて示される「予報」です。
最終的な2026年の漁獲量そのものではありません。
9月に大量水揚げがあっても矛盾しない?
2026年9月には、北海道の花咲港で一日に500トンを超えるまとまった水揚げが確認される日も出ています。
「それなら不漁予報は外れたのでは?」と思うかもしれません。
しかし、一日の水揚げと漁期全体の来遊量は同じものではありません。
魚群にうまく当たれば、特定の日や港でまとまった水揚げが出ることはあります。
年間の漁獲状況を判断するには、その後の水揚げを含めてシーズン全体を見る必要があります。
外国船の漁獲も原因なの?
サンマ不漁については、中国や台湾など外国・地域の漁船による漁獲が話題になることがあります。
外国漁船による漁獲がサンマ資源へ影響した可能性は、これまで水産庁の不漁問題に関する検討でも指摘されています。
一方で、近年のサンマ不漁を外国漁船だけで説明することはできません。
海洋環境の変化、回遊ルートの変化、餌環境、資源量、漁獲圧などを総合的に考える必要があります。
サンマは広い北太平洋を回遊するため、日本だけでなく複数の国・地域が利用する国際的な水産資源でもあります。
そのため現在は、国際的な枠組みの中でも資源管理が行われています。
サンマが減った理由を整理すると
| 要因 | サンマへの影響 |
|---|---|
| 海水温の変化 | 適した分布域や回遊ルートが変化する可能性 |
| 親潮など海流の変化 | 日本近海への回遊や漁場形成に影響 |
| 漁場の沖合化 | 日本の漁船が操業しにくくなる |
| 餌環境の変化 | 成長や生き残りに影響する可能性 |
| 競合種の増加 | 餌をめぐる競争が強くなる可能性 |
| 資源量の減少 | そもそも漁獲できるサンマが少なくなる |
| 漁獲圧 | 日本を含む各国・地域による漁獲が資源に影響 |
今後サンマは戻ってくる?
海洋環境は毎年同じではありません。
海流や水温、魚群の分布が変われば、日本周辺への来遊状況が変化する可能性もあります。
一方、資源量そのものが低い状態にある場合、海流が変わっただけですぐ昔のような漁獲量へ戻るとは限りません。
そのため今後は、海洋環境を継続して観測するとともに、サンマ資源そのものを適切に管理していくことが重要になります。
まとめ
2026年のサンマについて、水産庁は8月から12月の来遊量が昨年の水準を下回ると予測しています。
しかし、「サンマが少ない理由=海水温が高いから」とひとことで説明することはできません。
親潮など海流の変化によって回遊ルートが変わり、漁場が沖合化すると、日本の漁船がサンマを獲りにくくなります。
さらに沖合域の餌環境、マイワシなど競合種との関係、成長や生き残り、資源量そのものの減少なども関係している可能性があります。
つまり、近年のサンマ不漁は「海の環境が変わった」「日本へ来るルートが変わった」「サンマ自体も減っている」という複数の問題が重なって起きていると考える必要があります。
2026年の漁はまだ続いています。
今年最終的にどれだけのサンマが水揚げされるのかを見るとともに、長期的な資源量や国際的な資源管理にも注目していきたいところです。

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