「サルモネラとノロウイルスって何が違うの?」
どちらも食中毒のニュースでよく聞く名前です。
腹痛や下痢、おう吐など似た症状が現れることもあるため、同じようなものだと思っている方もいるかもしれません。
しかし、サルモネラとノロウイルスには大きな違いがあります。
サルモネラは細菌、ノロウイルスはウイルスです。
原因となる食品や感染経路、潜伏期間、予防するときの注意点にも違いがあります。
この記事では、サルモネラとノロウイルスの違いを比較しながら、家庭で知っておきたい食中毒予防について解説します。
サルモネラとノロウイルスの違いを比較
| 比較項目 | サルモネラ | ノロウイルス |
|---|---|---|
| 分類 | 細菌 | ウイルス |
| 主な症状 | 腹痛、下痢、発熱、おう吐など | 吐き気、おう吐、下痢、腹痛など |
| 潜伏期間の目安 | 一般に6~72時間程度 | 一般に24~48時間程度 |
| 主な感染経路 | 汚染食品、動物、人や器具を介した汚染など | 汚染食品、感染者の便・吐物などを介した感染など |
| 食品中で増える? | 条件がそろえば増殖する | 食品中では増殖しない |
| 重要な予防 | 手洗い、低温管理、十分な加熱、二次汚染防止 | 手洗い、十分な加熱、便・吐物の適切な処理など |
このように、似た胃腸症状を起こす一方で、性質には大きな違いがあります。
最大の違い|サルモネラは細菌、ノロはウイルス
まず覚えておきたいのが、原因となる微生物の違いです。
サルモネラ属菌は細菌です。
条件がそろえば食品中でも増殖することができます。
一方、ノロウイルスはウイルスです。
ウイルスは食品中で自ら増殖することはできず、人の体内に入って細胞を利用して増殖します。
この違いが、食中毒予防の考え方にも関係します。
サルモネラはどこにいる?
サルモネラ属菌は、鶏、豚、牛などさまざまな動物の腸管や自然環境などに広く存在します。
食中毒では、
- 卵や卵を使用した食品
- 食肉や食肉を使用した料理
- 汚染された食品
- 手指や調理器具を介して二次汚染された食品
などが関係することがあります。
また、カメなどの爬虫類をはじめとする動物がサルモネラ属菌を保有している場合もあり、動物との接触後の手洗いも重要です。
ノロウイルスはどこから感染する?
ノロウイルスによる食中毒では、ウイルスに汚染された食品を食べるケースだけでなく、感染した調理従事者などを介して食品が汚染されるケースにも注意が必要です。
また、感染者の便や吐物には大量のウイルスが含まれることがあります。
便や吐物を処理した手、汚染された環境などを介して人から人へ感染が広がることもあります。
ノロウイルスは感染力が強いため、食品だけではなく感染者の便・吐物の処理も重要な対策です。
ノロウイルスと二枚貝の関係
ノロウイルスというと、カキなどの二枚貝を思い浮かべる方も多いでしょう。
二枚貝は海水中のプランクトンなどを取り込む際に、海域にノロウイルスが存在すると体内に蓄積することがあります。
そのため、ノロウイルスに汚染された二枚貝を生や加熱不十分な状態で食べることが感染につながる場合があります。
ただし、ノロウイルス食中毒の原因がすべて二枚貝というわけではありません。
感染した人を介して食品が汚染されるケースもあります。
潜伏期間はどう違う?
サルモネラとノロウイルスでは、感染してから症状が現れるまでの潜伏期間にも違いがあります。
サルモネラ
港区では、サルモネラ属菌の潜伏期間を一般に6~72時間としています。
ノロウイルス
厚生労働省では、ノロウイルスの潜伏期間を一般に24~48時間としています。
ただし、潜伏期間はあくまで目安です。
「発症まで○時間だったから絶対にサルモネラ」などと、時間だけで原因を判断することはできません。
症状はどう違う?
どちらも胃腸炎症状を起こすため、症状だけを見ると似ています。
サルモネラの主な症状
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
- 吐き気
- おう吐
サルモネラでは発熱がみられることがあり、港区では38~40℃の発熱を伴うことがあると説明しています。
ノロウイルスの主な症状
- 吐き気
- おう吐
- 下痢
- 腹痛
厚生労働省では、ノロウイルスでは発熱は軽度であることが多いとしています。
ただし症状には個人差があり、症状だけで原因となる微生物を特定することはできません。
食品の中で増えるかどうかも違う
食中毒予防を考えるうえで重要なのがこの違いです。
サルモネラ属菌は細菌なので、温度や水分などの条件がそろうと食品中で増殖することがあります。
そのため、調理した食品を適切な温度で保存する「増やさない」という対策が重要です。
一方、ノロウイルスは食品の中で増殖することはできません。
食品中のノロウイルスを「冷蔵して増やさない」というより、食品へウイルスを付着させないことや、必要な食品を十分に加熱することが重要になります。
冷蔵庫に入れれば安全?
サルモネラ対策では、低温保存によって菌の増殖を抑えることが重要です。
ただし、冷蔵庫に入れたからといってサルモネラ属菌がすべて死滅するわけではありません。
ノロウイルスについても、冷蔵や冷凍だけで安全にできるわけではありません。
「冷蔵庫に入れた=微生物がいなくなった」ではないことを覚えておきましょう。
加熱温度にも違いがある
加熱は、サルモネラとノロウイルスのどちらについても重要な予防方法です。
ただし、厚生労働省が示している加熱の目安には違いがあります。
一般的な細菌性食中毒対策
サルモネラなどの細菌性食中毒予防では、食品の中心部を75℃で1分間以上加熱することが目安です。
ノロウイルス対策
ノロウイルスによる汚染のおそれがある二枚貝などでは、中心部を85~90℃で90秒間以上加熱することが推奨されています。
同じ「十分に加熱する」でも、対象となる微生物によって目安が異なることがあります。
アルコール消毒だけでノロ対策になる?
ノロウイルス対策では、アルコール消毒だけに頼らないことが重要です。
厚生労働省は、ノロウイルス対策の基本として石けんと流水による手洗いを重視しています。
手洗いによって手指に付着したウイルスを物理的に洗い流します。
便や吐物などで汚染された場所の消毒では、次亜塩素酸ナトリウムなどを適切に使用する方法があります。
使用する製品の表示や公的な衛生指針に従い、安全に取り扱いましょう。
人から人への感染はどちらもある?
サルモネラも、感染者の便などを介して人から人へ感染する可能性があります。
一方、ノロウイルスは人から人への感染が非常に起こりやすく、家庭や施設などで集団感染につながることがあります。
どちらの場合も、トイレ後や調理前、食事前の手洗いが重要です。
「おう吐した=ノロ」とは限らない
冬におう吐すると、すぐに「ノロウイルスでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、おう吐はノロウイルスだけで起こる症状ではありません。
サルモネラを含む細菌性食中毒でも、おう吐がみられる場合があります。
逆に、下痢や腹痛があるからといって細菌性食中毒とは限りません。
症状だけで原因となる微生物を自己判断することはできません。
季節で判断していい?
「夏は細菌、冬はノロ」と覚えている方も多いかもしれません。
確かに、高温多湿になる時期には細菌性食中毒への注意が必要で、ノロウイルスによる食中毒は冬場に多くなる傾向があります。
しかし、食中毒は特定の季節にしか発生しないわけではありません。
年間を通して手洗いや適切な食品管理を続けることが大切です。
麻布十番の食中毒では両方を検査
2026年8月の麻布十番納涼まつりで発生した「冷やし蟹ラーメン」による食中毒では、細菌検査だけでなくノロウイルス検査も行われました。
港区が9月3日に公表した検査状況では、患者便について、細菌検査101検体のうち31検体からサルモネラ属菌が検出されていました。
一方、患者便のノロウイルス検査は90検体について行われ、その時点で78検体が陰性、12検体が検査中でした。
みなと保健所は、患者の喫食状況、症状や潜伏時間、患者・従事者の検査結果、医師からの届出などを総合し、サルモネラ属菌を原因物質とする食中毒と判断しています。
家庭で共通してできる予防
サルモネラとノロウイルスには違いがありますが、家庭で共通して重要な対策もあります。
- 調理前・食事前・トイレ後に手を洗う
- 生の食品と加熱済み食品を分けて扱う
- 加熱が必要な食品は中心部まで十分に加熱する
- 調理器具を清潔に保つ
- 体調不良時には食品の取り扱いに注意する
- 便や吐物を処理した後は十分に手を洗う
さらにサルモネラなどの細菌性食中毒では、食品中で菌を増やさないための温度管理も重要です。
症状が出たらどうする?
下痢やおう吐、腹痛、発熱などがある場合には、症状の程度に応じて医療機関へ相談してください。
特に、
- 水分がとれない
- おう吐や下痢が激しい
- ぐったりしている
- 高熱など強い症状がある
- 乳幼児や高齢者など重症化が心配される
場合には注意が必要です。
症状だけでサルモネラやノロウイルスと決めつけず、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
まとめ|似た症状でもサルモネラとノロは別物
サルモネラとノロウイルスは、どちらも下痢や腹痛、おう吐などの原因になりますが、性質は異なります。
- サルモネラは「細菌」
- ノロウイルスは「ウイルス」
- サルモネラは条件がそろうと食品中で増殖する
- ノロウイルスは食品中では増殖しない
- 潜伏期間の目安にも違いがある
- 加熱するときの目安も異なる
一方、手洗いや十分な加熱、二次汚染を防ぐことなど、共通する予防方法もあります。
「食中毒は全部同じ」と考えるのではなく、原因となる微生物の特徴を知ったうえで対策することが大切です。

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