福岡市博多区の保育施設で、園児46人と職員2人の合計48人が嘔吐・下痢・発熱などを訴える感染性胃腸炎の集団発生が確認されました。
医療機関による検査では、園児1人からノロウイルスが検出されています。
今回の事案を見て、
「なぜ保育園ではこんなに一気に広がるの?」
「給食じゃなくても48人も発症する?」
「おもちゃやおむつ交換でも感染する?」
と気になる人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、ノロウイルスは食品だけでなく、感染者の便や嘔吐物、手指、環境表面などを介して人から人へ広がることがあります。
そして保育施設には、ノロウイルスが広がりやすい条件がいくつも重なっています。
今回は、保育施設でノロウイルスが集団発生しやすい理由を、おむつ交換・嘔吐物・玩具・手指・共用環境という視点から整理します。
- 今回の集団発生は48人
- 園児1人からノロウイルスを検出
- ノロウイルスは食品だけから感染するわけではない
- 保育施設で広がりやすい理由① 子ども同士の距離が近い
- 理由② 乳幼児は手を口に入れる
- 理由③ 玩具を共有する
- 理由④ 0~2歳ではおむつ交換が多い
- おむつ交換後の手洗いが重要
- おむつ交換台も清潔に保つ
- 理由⑤ 子どもは突然吐くことがある
- 嘔吐物には大量のウイルスが含まれることがある
- 嘔吐物処理で周囲に広げることもある
- 嘔吐した子どもの周囲を一度離す
- 理由⑥ 手洗いを一人で十分にできない
- ノロ対策では石けんと流水が基本
- アルコールだけに頼らない
- 理由⑦ トイレを共有する
- トイレ後に手を洗うまでにも触る場所がある
- 理由⑧ 保育者が複数の子どもを援助する
- 感染した職員が無理に勤務すると広がることも
- 症状が治ってもすぐ安心とは限らない
- 理由⑨ 昼寝の寝具も共有空間になる
- 理由⑩ 食事スペースと保育空間が近い
- 給食が原因でなくても食事場面は感染対策が必要
- 給食室への持ち込みにも注意
- 調理従事者の健康管理も重要
- 保育室と給食室を切り離して考えない
- 今回2日間で40人が発症
- 10月12日にも5人発症
- 10月13日の新規発症は0人
- 感染経路は「1本」とは限らない
- ノロは少量でも感染しやすい
- 清掃と消毒は別物
- 次亜塩素酸ナトリウムを使う場面も
- 塩素系消毒剤は扱いにも注意
- 保育施設勤務経験から一番怖いのは「気づく前」
- 「胃腸炎が出てから対策」では遅い
- 嘔吐物処理セットを準備しておく
- 新人職員も処理方法を知っているか
- 家庭でも同じ感染経路に注意
- きょうだいへ広がることも
- まとめ
今回の集団発生は48人
福岡市の発表では、有症状者は、
- 園児46人
- 職員2人
- 合計48人
です。
園児は0歳から6歳までと、乳幼児を中心とした集団です。
園児1人からノロウイルスを検出
医療機関の検査では、園児1人からノロウイルスが検出されています。
ただし、48人全員が検査でノロウイルス陽性だったという発表ではありません。
また、今回の福岡市の発表は感染性胃腸炎の集団発生であり、給食が原因の食中毒と確認されたわけではありません。
ノロウイルスは食品だけから感染するわけではない
ノロウイルスというと、牡蠣や二枚貝などを思い浮かべる人も多いかもしれません。
確かに食品を介した感染はあります。
しかし、ノロウイルスは、
- 感染者の便
- 感染者の嘔吐物
- 汚染された手指
- 汚染された玩具
- ドアノブ
- トイレ
- テーブル
などを介して、人から人へ広がることもあります。
保育施設で広がりやすい理由① 子ども同士の距離が近い
保育施設では、子どもたちが同じ部屋で長時間過ごします。
一緒に、
- 遊ぶ
- 食べる
- 昼寝する
- 排泄する
- 手洗いする
ため、人との距離が非常に近くなります。
1人が感染すると、周囲の子どもたちへ広がる機会が多くなります。
理由② 乳幼児は手を口に入れる
0~2歳頃の子どもでは、
- 指を口に入れる
- 玩具を舐める
- 床に触った手を口へ持っていく
といった行動が珍しくありません。
環境表面にノロウイルスが付着していれば、手や玩具を介して口へ入る可能性があります。
理由③ 玩具を共有する
保育園では、多くの玩具を子どもたちで共有します。
特に、
- 積み木
- ブロック
- ままごと用品
- 絵本
- ボール
などは、複数の子どもが短時間に触れます。
誰かの手指にウイルスが付着していれば、玩具を介して別の子どもの手へ移る可能性があります。
理由④ 0~2歳ではおむつ交換が多い
保育施設で特に重要なのがおむつ交換です。
ノロウイルスは感染者の便中に排出されます。
おむつ交換の際に便が手袋・手指・交換台などへ付着すると、そこから周囲へ広がる可能性があります。
おむつ交換後の手洗いが重要
使い捨て手袋を使用していても、手洗いが不要になるわけではありません。
手袋を外すときに手が汚染される可能性もあります。
そのため、おむつ交換後は石けんと流水でしっかり手を洗うことが重要です。
おむつ交換台も清潔に保つ
おむつ交換では、子どもの体だけでなく交換台や周囲の設備にも触れます。
交換後は、汚染が疑われる場所を適切に清掃・消毒し、次の子どもへ広げないことが大切です。
理由⑤ 子どもは突然吐くことがある
ノロウイルス感染では、突然の嘔吐がみられることがあります。
大人なら、
「気持ち悪い」
と訴えてトイレへ移動できることもあります。
しかし、小さな子どもでは前触れなく保育室内で嘔吐することがあります。
嘔吐物には大量のウイルスが含まれることがある
ノロウイルス感染者の嘔吐物には、ウイルスが含まれている可能性があります。
そのため、嘔吐があった場所を普通の雑巾で拭くだけでは不十分です。
嘔吐物処理で周囲に広げることもある
慌てて嘔吐物を処理すると、
- 手袋をせず触る
- 雑巾で広く拭き広げる
- 処理後に手洗いを忘れる
- 汚染された雑巾をそのまま使う
などによって、かえって感染範囲を広げてしまう可能性があります。
嘔吐した子どもの周囲を一度離す
嘔吐が起きた場合は、可能であれば他の子どもたちをその場から離します。
処理中に子どもが近づけば、床や周囲の汚染物へ触れる可能性があります。
理由⑥ 手洗いを一人で十分にできない
乳幼児は、自分だけで十分な手洗いをするのが難しい年齢です。
水で少し濡らしただけで終わったり、石けんをすぐ流してしまったりすることもあります。
大人が年齢に応じて援助する必要があります。
ノロ対策では石けんと流水が基本
ノロウイルス対策では、手指についたウイルスを物理的に洗い流すことが重要です。
特に、
- トイレ後
- おむつ交換後
- 嘔吐物処理後
- 食事前
- 調理前
には丁寧な手洗いを行います。
アルコールだけに頼らない
感染対策というと、アルコール消毒を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしノロウイルス対策では、アルコールだけで十分と考えず、まず石けんと流水による手洗いを徹底することが基本です。
理由⑦ トイレを共有する
保育施設では複数の子どもたちが同じトイレを使います。
便中のウイルスが、
- 便座
- 水洗レバー
- ドアノブ
- 手すり
- 蛇口
などへ付着する可能性があります。
トイレ後に手を洗うまでにも触る場所がある
トイレを終えた子どもが、手を洗うまでの間にドアや壁などへ触れる場合があります。
そのため、手洗いだけでなく、環境面の清掃も重要です。
理由⑧ 保育者が複数の子どもを援助する
保育者は、
- 排泄介助
- 食事介助
- 着替え
- 抱っこ
- 鼻水を拭く
など、多くの子どもと接触します。
手洗いのタイミングが不十分になると、保育者自身が感染を媒介してしまう可能性があります。
感染した職員が無理に勤務すると広がることも
ノロウイルス感染では、職員自身が下痢や嘔吐などを発症することもあります。
症状がある状態で出勤すれば、さらに感染が広がる可能性があります。
今回も職員2人に症状が確認されています。
症状が治ってもすぐ安心とは限らない
ノロウイルスでは、症状が治った後もしばらく便中にウイルスが排出されることがあります。
そのため、回復後も手洗いを丁寧に続けることが重要です。
理由⑨ 昼寝の寝具も共有空間になる
保育施設では、子どもたちが同じ室内で昼寝をします。
寝具そのものを共有していなくても、隣との距離が近かったり、布団の周囲を歩いたりします。
嘔吐などがあった場合には、寝具や周辺まで汚染される可能性があります。
理由⑩ 食事スペースと保育空間が近い
保育施設によっては、普段遊んでいる保育室で給食やおやつを食べることがあります。
食事前にテーブルや手指が十分清潔になっていなければ、環境から口へウイルスが入る可能性があります。
給食が原因でなくても食事場面は感染対策が必要
今回、給食が原因とは確認されていません。
それでも、食事場面では手から口へ直接ウイルスが入りやすいため、
- 食事前の手洗い
- テーブルの清掃
- 配膳前の衛生管理
が重要です。
給食室への持ち込みにも注意
施設内で感染性胃腸炎が発生した場合、保育室だけでなく給食室でも警戒が必要です。
保育室で使った物品や汚染された手指をそのまま調理区域へ持ち込まないようにします。
調理従事者の健康管理も重要
調理従事者に、
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
などの症状がある場合は、食品を扱わせないことが重要です。
家族に感染性胃腸炎症状がある場合も、施設のルールに沿って報告することが望まれます。
保育室と給食室を切り離して考えない
感染性胃腸炎が発生した場合、
「給食室は給食室」
「保育室は保育室」
と完全に別問題にするのではなく、施設全体の衛生管理として考える必要があります。
今回2日間で40人が発症
今回の発症者は、
- 10月8日:25人
- 10月9日:15人
と、最初の2日間だけで40人にのぼっています。
短期間に多くの人が症状を訴えたことからも、集団生活の中で感染が広がる怖さが分かります。
10月12日にも5人発症
発症者はその後減っていますが、10月12日にも5人の発症が確認されています。
感染が広がった後は、数日間にわたって新しい発症者が出る可能性があります。
10月13日の新規発症は0人
一方、10月13日の新たな有症状者は0人でした。
感染拡大のピークを越えた可能性はありますが、施設内では引き続き健康観察が必要です。
感染経路は「1本」とは限らない
集団発生では、
「最初の1人から全員へ直接うつった」
とは限りません。
例えば、
- AさんからBさんへ
- Bさんから玩具へ
- 玩具からCさんへ
- Cさんの嘔吐からDさんへ
というように、二次感染・三次感染が連鎖する可能性があります。
ノロは少量でも感染しやすい
ノロウイルスは感染力が強いことで知られています。
そのため、目に見えない程度の汚染でも感染につながる可能性があり、
「汚れて見えないから大丈夫」
とは判断できません。
清掃と消毒は別物
汚れを取り除く「清掃」と、病原体を減らす「消毒」は目的が違います。
嘔吐物がある場合は、まず汚れを適切に除去したうえで、必要な消毒を行います。
次亜塩素酸ナトリウムを使う場面も
ノロウイルスに汚染された可能性がある環境では、次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒が推奨される場面があります。
使用する場合は、製品濃度を確認し、用途に応じて適切に希釈することが必要です。
塩素系消毒剤は扱いにも注意
次亜塩素酸ナトリウムは有効な一方、扱い方を誤ると危険です。
特に酸性洗剤などと混ぜると有毒な塩素ガスが発生する危険があります。
製品表示に従って使用し、他の洗剤と混ぜないようにしましょう。
保育施設勤務経験から一番怖いのは「気づく前」
私は栄養士として保育施設で働いていますが、感染症対策で難しいのは、
最初の子どもが発症した時点では、まだ集団発生だと分からない
ことです。
最初は、
「少し吐いた」
「下痢した」
という1人の体調不良に見えることがあります。
その段階から嘔吐物処理や手洗いを丁寧に行えるかどうかが、その後の感染拡大を左右することがあります。
「胃腸炎が出てから対策」では遅い
ノロウイルス対策は、流行が始まってから急に始めるものではありません。
日頃から、
- 手洗い
- おむつ交換手順
- 嘔吐物処理
- 玩具の清掃
- 職員の健康確認
を決めておくことが重要です。
嘔吐物処理セットを準備しておく
保育施設では、突然の嘔吐にすぐ対応できるよう、必要な物品をまとめて準備しておく方法があります。
例えば、
- 使い捨て手袋
- マスク
- 使い捨てエプロン
- ペーパー類
- ビニール袋
- 消毒に必要な物品
などです。
新人職員も処理方法を知っているか
マニュアルが事務室に置いてあるだけでは、実際の嘔吐時に使えないことがあります。
全職員が、
- どこに処理セットがあるか
- 誰が子どもを誘導するか
- 誰が処理するか
- 処理後はどうするか
を知っておくことが重要です。
家庭でも同じ感染経路に注意
保育園で感染した子どもが家庭へ帰ると、家族へ広がる可能性があります。
家庭でも、
- トイレ後の手洗い
- おむつ交換後の手洗い
- 嘔吐物の適切な処理
- タオルの共用を避ける
ことを意識しましょう。
きょうだいへ広がることも
子ども同士は距離が近く、同じ玩具や家具を触ることも多いため、家庭内でもきょうだいへ感染することがあります。
症状がある子どもだけでなく、周囲の家族も丁寧な手洗いを行うことが大切です。
まとめ
今回は、福岡市博多区の保育施設で起きた感染性胃腸炎の集団発生をもとに、なぜ保育施設ではノロウイルスが広がりやすいのかを整理しました。
- 今回の有症状者は48人
- 園児46人・職員2人
- 園児1人からノロウイルスを検出
- 給食が原因の食中毒とは確認されていない
- ノロウイルスは便や嘔吐物から人へ広がることがある
- 乳幼児は玩具や指を口へ入れることが多い
- おむつ交換は感染拡大の重要ポイント
- 嘔吐物の処理方法が不適切だと周囲へ広げる可能性がある
- 玩具・トイレ・ドアノブなどの共用環境も感染経路になり得る
- 手洗いは石けんと流水が基本
- 給食原因でなくても給食室への感染持ち込み防止は重要
保育施設でのノロウイルス対策は、給食室だけ、トイレだけ、おむつ交換だけを対策すればよいものではありません。
子ども・職員・玩具・排泄・嘔吐物・手指・食事環境をすべてつなげて考えること
が重要です。
今回の事案でも、給食が原因とは確認されていないため、特定の感染経路を決めつけず、施設全体で感染拡大を防ぐ視点が必要です。

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