岩手県産小麦から、国の基準値を超えるDON(デオキシニバレノール)が検出され、自主回収が進んでいます。
ニュースを見て、
「DONって何?」
「カビ毒って聞くとかなり怖いけど大丈夫?」
「基準値1.0mg/kgを少しでも超えたら中毒になるの?」
「パンを焼いたり、うどんを茹でたりすれば減る?」
と気になった人も多いのではないでしょうか。
DONは、小麦や大麦、とうもろこしなどで問題になることがあるかび毒の一種です。
ただし、「基準値を超えた=一口食べただけで直ちに中毒になる」という意味ではありません。
今回は、岩手県産小麦の自主回収をきっかけに注目されているDONについて、赤かび病との関係、基準値、健康影響、加熱でどうなるのかまで分かりやすく整理します。
- DONとは何?正式名称はデオキシニバレノール
- DONを作るのはどんなカビ?
- 赤かび病とは?
- DONは「カビそのもの」とは違う
- 日本の小麦のDON基準値は1.0mg/kg
- 今回の岩手県産小麦はどのくらいだった?
- 1.3mg/kgなら30%オーバー?
- DONを食べるとどんな症状が出る?
- 長期間とり続ける影響は?
- DONの耐容一日摂取量は?
- 体重20kgの子どもなら20μg?
- 基準値を超えた食品を一度食べたら危険?
- 今回の小麦粉を少量食べてしまったら?
- 子どものほうが注意が必要?
- DONは加熱すればなくなる?
- 茹でればDONはお湯に流れる?
- パンをしっかり焼けば大丈夫?
- 冷凍すればDONは消える?
- カビ部分だけ取れば大丈夫?
- DONは味やにおいで分かる?
- どうやってDONを検査するの?
- 「基準値」と「TDI」は何が違う?
- なぜ基準値は厳しく設定されている?
- 岩手県産小麦全部がDONで危険なわけではない
- 今回の問題はDON発生だけでなく管理ミス
- 元品質管理経験者として見る今回のポイント
- 今回の自主回収品は食べずに返却を
- まとめ
DONとは何?正式名称はデオキシニバレノール
DONは、正式にはデオキシニバレノールと呼ばれるかび毒です。
英語の「Deoxynivalenol」の頭文字を取って、DONと呼ばれています。
食品安全委員会では、小麦・大麦・とうもろこしなどの穀類で汚染例があるかび毒として紹介しています。
特に、小麦の赤かび病と深い関係があります。
DONを作るのはどんなカビ?
DONは、フザリウム属などのカビが作り出します。
小麦では、赤かび病の原因となるカビが穂などに感染し、その過程でDONが産生されることがあります。
つまり、
「DONというカビがいる」のではなく、「カビがDONという毒素を作る」
という関係です。
赤かび病とは?
赤かび病は、小麦などの穂に発生する病気です。
感染した穂が赤やピンク色っぽく見えることがあるため、この名前で呼ばれています。
発生には天候が影響し、特に開花期以降に雨が多いなど、湿度の高い条件が続くとリスクが高まります。
そのため、農家では防除や収穫後の選別、検査などによってリスクを下げています。
DONは「カビそのもの」とは違う
ここはとても重要です。
DONはカビそのものではなく、カビが作り出す化学物質です。
そのため、
- 見た目にカビがない
- 小麦粉が真っ白
- 異臭がしない
- パンや麺に加工されている
といった状態でも、DONが含まれているかどうかを家庭で見分けることはできません。
安全性の確認には分析が必要です。
日本の小麦のDON基準値は1.0mg/kg
日本では、小麦についてDONの基準値が設定されています。
基準値は、
1.0mg/kg
です。
厚生労働省では、2022年4月1日からこの基準値を適用しています。
つまり、小麦1kg中にDONを1.0mgを超えて含むものは、食品として流通させないことが基本となります。
今回の岩手県産小麦はどのくらいだった?
今回問題となった岩手県産小麦では、DONが最大1.3mg/kg検出されています。
基準値は1.0mg/kgなので、数値としては基準を超えています。
そのため、本来は食用として流通させない扱いになっていました。
ところが保管管理上の取り違えによって製粉会社へ誤出荷され、加工品まで流通したため自主回収となっています。
1.3mg/kgなら30%オーバー?
数値だけで見ると、1.0mg/kgに対して1.3mg/kgなので、基準値を30%上回る値です。
ただし、この数字だけを見て、
「30%危険性が高い」
と考えることはできません。
毒性は、
- 食べた量
- 体重
- 摂取頻度
- 継続期間
などによって変わります。
DONを食べるとどんな症状が出る?
DONを多量に摂取した場合、
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 食欲低下
などの消化器症状が起こることがあります。
DONは海外で「ボミトキシン」と呼ばれることもあります。
これは嘔吐作用があることに由来する呼び方です。
長期間とり続ける影響は?
食品安全委員会では、DONについて動物実験などをもとに評価を行っています。
確認されている主な影響には、
- 摂餌量の減少
- 体重増加の抑制
- 免疫系への影響
などがあります。
このため、一度に大量摂取した場合だけでなく、日常的に取り続ける量も考慮して安全基準が設定されています。
DONの耐容一日摂取量は?
食品安全委員会は、DONの耐容一日摂取量(TDI)を、
体重1kgあたり1μg/日
と設定しています。
TDIとは、簡単にいうと、
「一生涯、毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと考えられる1日あたりの量」
です。
体重20kgの子どもなら20μg?
計算上、体重20kgの場合は、
20μg/日
がTDIに相当します。
体重60kgの大人なら、
60μg/日
です。
ただし、このTDIは「1日だけ少し超えたらすぐ健康被害が起きる」という境界線ではありません。
長期的な摂取量を管理するための目安です。
基準値を超えた食品を一度食べたら危険?
必ずしもそうではありません。
食品の基準値は、
「ここを1回でも超えたら即中毒」
という数値ではありません。
基準値は、通常の食生活で安全性を確保するために設定されています。
今回の岩手県産小麦についても、2026年10月時点で健康被害は確認されていません。
今回の小麦粉を少量食べてしまったら?
対象商品をすでに食べてしまった場合でも、基準値超過品を一度食べたというだけで慌てる必要はありません。
まずは、今後その商品を食べるのをやめましょう。
そのうえで、
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
など体調の変化がないか確認してください。
症状が強い、長く続く、乳幼児などで心配な場合は医療機関へ相談しましょう。
子どものほうが注意が必要?
同じ量の食品を食べた場合、体重が少ない子どものほうが体重1kgあたりの摂取量は大きくなります。
そのため、子どもが対象商品を継続して食べることは避けたほうがよいでしょう。
ただし、今回の対象商品を一度食べたからといって、必ず症状が出るわけではありません。
DONは加熱すればなくなる?
「かび毒なら加熱すれば壊れるのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、DONは通常の家庭調理で簡単に完全除去できるものではありません。
パンを焼く、麺を茹でるといった加熱工程で量が変化することはありますが、
「加熱すれば安全になる」
と考えるのは適切ではありません。
茹でればDONはお湯に流れる?
麺類では、茹でることによってDONの一部がお湯側へ移る可能性があります。
しかし、家庭でどの程度減るかを正確に判断することはできません。
そのため、回収対象のうどん・そうめん・ひやむぎについて、
「長時間茹でれば食べて大丈夫」
とは考えないでください。
対象商品は回収へ出しましょう。
パンをしっかり焼けば大丈夫?
パンや焼き菓子も同じです。
オーブンで焼いたからといって、DONが完全になくなる保証はありません。
回収対象原料を使った商品が公表された場合は、再加熱せず回収案内に従うことが基本です。
冷凍すればDONは消える?
冷凍しても、DONを安全なレベルまでなくす方法にはなりません。
DONは生きたカビそのものではないため、
「冷凍してカビを殺せば毒もなくなる」
という考え方はできません。
カビ部分だけ取れば大丈夫?
これもおすすめできません。
DONは目に見えるカビだけに存在しているとは限りません。
特に小麦粉や麺など加工品になってしまうと、どこにどの程度含まれているのか家庭では判断できません。
回収対象品は、見た目が正常でも食べないようにしましょう。
DONは味やにおいで分かる?
基本的に家庭での味見やにおいでは判断できません。
「変な味がしないから安全」
「カビ臭くないから大丈夫」
という確認方法は使えません。
商品名・製造番号・賞味期限など、回収情報を確認することが大切です。
どうやってDONを検査するの?
厚生労働省では、小麦中のDONを測定する試験法を定めています。
分析には、
- HPLC
- LC-MS
- LC-MS/MS
などの機器を用いる方法があります。
また、スクリーニングとしてELISA法を利用することもできます。
家庭で簡単に確認できるものではなく、専門的な分析が必要です。
「基準値」と「TDI」は何が違う?
似たような数字が出てくるので、少し整理しましょう。
基準値1.0mg/kgは、食品である小麦1kg中にどの程度DONが含まれてよいかという規格です。
一方、
TDI 1μg/kg体重/日
は、人が体重あたり1日にどの程度摂取しても健康影響がないと考えられるかという指標です。
つまり、
- 基準値=食品側のルール
- TDI=人の摂取量側の目安
と考えると分かりやすいでしょう。
なぜ基準値は厳しく設定されている?
小麦は、パン・麺・菓子など非常に多くの食品に使われます。
毎日のように食べる可能性があるため、1回だけの摂取ではなく、長期的な摂取も考えて基準値が設定されています。
特に子どもは体重が軽いため、食品中の濃度を管理することは重要です。
岩手県産小麦全部がDONで危険なわけではない
今回問題になったからといって、
「岩手県産小麦=DONが多い」
という意味ではありません。
特定の小麦で基準値超過が確認され、それが誤って流通した事案です。
岩手県産小麦すべてや、「ナンブキラリ」という品種すべてが基準値を超えているわけではありません。
今回の問題はDON発生だけでなく管理ミス
今回の事案では、DONの基準値超過自体は自主検査で確認されていました。
つまり、検査は機能していました。
問題は、その後。
本来出荷しない小麦が正常品と取り違えられ、製粉会社へ出荷されてしまいました。
食品安全では、
「検査で見つける」だけでなく、「不適合品を確実に隔離する」
ところまでが重要です。
元品質管理経験者として見る今回のポイント
私は以前、飲料メーカーの品質管理部門で微生物検査などに携わっていました。
今回のニュースを見ると、検査技術の問題というより、検査後の識別・保管・出荷管理が大きなポイントだと感じます。
不適合品は、
- 正常品と物理的に分ける
- 分かりやすく表示する
- 出荷できない状態にする
- 数量を照合する
- 廃棄や処理が完了するまで追跡する
必要があります。
「検査済みだから安心」ではなく、検査後の管理まで含めて品質管理です。
今回の自主回収品は食べずに返却を
DONについて必要以上に怖がる必要はありません。
一方で、基準値を超えた原料を使用した商品をあえて食べ続ける必要もありません。
自主回収対象の商品が自宅にある場合は、
加熱・水洗い・冷凍などで自己判断せず、販売者の案内に従って返却してください。
まとめ
今回は、岩手県産小麦の基準値超過で注目されているDON(デオキシニバレノール)について解説しました。
- DONはデオキシニバレノールというかび毒
- 小麦・大麦・とうもろこしなどで汚染例がある
- 赤かび病の原因となるフザリウム属などのカビが作る
- カビそのものではなく、カビが作る化学物質
- 日本の小麦の基準値は1.0mg/kg
- 今回の岩手県産小麦では最大1.3mg/kgを検出
- 多量摂取で嘔吐・下痢・腹痛などの症状が起こる可能性がある
- 食品安全委員会のTDIは体重1kgあたり1μg/日
- 基準値超過=一度食べただけで必ず中毒という意味ではない
- 通常の加熱で完全に除去できるとは考えない
- 茹で調理で一部減る可能性があっても、回収品を食べる根拠にはならない
- 見た目・味・においではDONの有無を判断できない
- 対象商品は食べずに自主回収へ出す
「かび毒」という言葉だけを見ると、とても強い恐怖を感じるかもしれません。
しかし、基準値は「1回でも超えれば即中毒」という数値ではありません。
今回の自主回収は、日常的な食品の安全性を確保するために設定された基準を超えた原料が誤って流通したため行われています。
DONの性質を正しく理解しつつ、自宅に回収対象商品がある場合は食べずに返却するようにしましょう。

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