新潟市西区の認定こども園「有明こども園」で認定された11件の虐待。
その内訳を見ると、今回の問題が保育教諭一人だけのものではないことが分かります。
- 保育教諭によるもの:9件
- 園長が適切な対応を取らなかったもの:2件
園児を強く押さえつける、腕をねじる、叩く、食べ物を口に押し込む。
こうした直接的な行為だけでなく、園長の「適切な対応を取らなかったこと」についても、新潟市は虐待と認定しました。
では、なぜ直接子どもへ行為をしていない管理者の対応まで問題になるのでしょうか。
現在の保育施設における虐待防止の仕組みと一緒に考えます。
- 有明こども園では園長の対応2件も虐待認定
- 園長は「園を管理する立場」
- 現在は保育所等の職員による虐待にも通報義務がある
- 「虐待か確定するまで何もしない」では遅れることがある
- まず必要なのは子どもの安全確保
- こども家庭庁のガイドラインも「発生時」だけを扱っているわけではない
- 「報告しにくい職場」では問題が表に出にくくなる
- 過去に問題があった園では再発防止の確認も重要
- 園長が全部一人で見つけるという意味ではない
- 「本人に注意しました」だけでは再発防止にならないことも
- 管理者が動くことで職員自身を守ることにもつながる
- 子育て支援員として感じる「誰かが止める」の重要性
- 運営法人も「職員一人だけの問題ではない」と説明
- まとめ|「直接やっていない」だけでは子どもを守れない
有明こども園では園長の対応2件も虐待認定
有明こども園では、保育教諭1人が2025年度から2026年6月までの間、複数の園児に対して不適切な行為をしていたとされています。
報道されている行為には、
- あざができるほど強く押さえつける
- 腕をねじる
- 叩く
- 食べ物を口に押し込む
などがあります。
新潟市は2026年8月3日、保育教諭による9件と、園長が適切な対応を取らなかった2件の計11件を虐待と認定し、改善勧告を通知しました。
つまり今回、新潟市が問題としたのは「虐待行為をした人」だけではありません。
問題を把握したとき、管理する立場の人がどう対応したのか。
そこまで含めて問われています。
園長は「園を管理する立場」
保育現場では、保育者がそれぞれ子どもたちと関わっています。
しかし、子どもの安全を個々の職員だけに任せることはできません。
園には管理者がいて、組織として安全を守る必要があります。
職員の関わり方に問題がある。
子どもに傷がある。
職員から相談があった。
保護者から訴えがあった。
虐待が疑われる行為を見聞きした。
こうした情報があったとき、必要な確認や対応につなげることが重要です。
「自分が直接やったことではない」からといって、何もしなくてよいわけではありません。
現在は保育所等の職員による虐待にも通報義務がある
保育施設をめぐる制度は近年、大きく変わりました。
2025年10月1日に施行された改正児童福祉法などにより、保育所等の職員による虐待を発見した場合の通報が義務化されています。
対象には保育所や認定こども園なども含まれています。
つまり、虐待が疑われる行為を園内だけで処理し、外部へつなげないという考え方ではなく、子どもの安全を守るために必要な機関へ通報する制度が法律上整えられています。
園内の人間関係よりも、まず守るべきなのは子どもです。
「虐待か確定するまで何もしない」では遅れることがある
現場で問題が起きたとき、最初からすべての事実が分かっているとは限りません。
「本当に虐待なのか?」
「たまたま強く触れてしまっただけでは?」
「本人にも事情があるのでは?」
そう考えることもあるかもしれません。
しかし、疑われる行為があった段階で子どもの安全を確認し、必要な対応へつなげることが重要です。
事実関係を確認することと、何もせず様子を見ることは同じではありません。
まず必要なのは子どもの安全確保
虐待が疑われる場面で最優先したいのは、原因究明より先に子どもの安全を確保することです。
同じ職員による関わりが続けば、別の子どもにも影響が及ぶ可能性があります。
そのため状況に応じて、
- 子どもの状態を確認する
- 必要な情報を記録する
- 管理者へ報告する
- 関係者から事実を確認する
- 必要な機関へ通報・相談する
- 子どもと問題となった職員の関わり方を見直す
などの対応につなげる必要があります。
どの対応が必要になるかは事案によって異なりますが、「問題が確定するまで子どもを同じ状況に置き続ける」ことを前提にしてはいけません。
こども家庭庁のガイドラインも「発生時」だけを扱っているわけではない
こども家庭庁と文部科学省は、「保育所や幼稚園等における虐待防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4類型を整理するとともに、虐待が起きた後の対応だけではなく、未然防止についても示されています。
つまり大切なのは、重大な問題が起きてから動くことだけではありません。
普段から不適切な関わりを防ぎ、違和感を共有し、問題が小さい段階で対応できる組織を作ることも虐待防止の一部です。
「報告しにくい職場」では問題が表に出にくくなる
保育現場では、職員同士が近い距離で仕事をします。
そのため、
「先輩だから言いにくい」
「自分より経験が長い先生だから」
「告げ口だと思われたくない」
「園長に言っても変わらないかもしれない」
と感じれば、小さな違和感が共有されない可能性があります。
だからこそ管理者には、「何かあったら報告してください」と言うだけでなく、実際に職員が相談できる環境を作ることも求められます。
相談した職員が責められない。
違和感の段階でも話せる。
報告された内容が放置されない。
こうした積み重ねが子どもの安全につながります。
過去に問題があった園では再発防止の確認も重要
有明こども園では、2023年にも複数の不適切保育が確認され、新潟市から指導を受けていました。
その中には、今回虐待をしたとされる保育教諭による事案も含まれていたと報じられています。
そのため今回の問題では、
- 2023年の指導後に何を改善したのか
- 改善した状態が続いているか確認していたのか
- 職員から問題を報告できる仕組みがあったのか
- 管理者が問題を把握したときにどう対応したのか
- 運営法人は園をどのように監督していたのか
といった部分も重要になります。
ただし、2023年の具体的な改善策や、今回認定された園長の対応2件の詳細については、現在公開されている情報だけですべて明らかになっているわけではありません。
分からない部分を推測で埋めることは避ける必要があります。
園長が全部一人で見つけるという意味ではない
一方で、「管理者に責任がある」という話を、園長が園内のすべてを一人で監視しなければならないという意味にするのも違います。
保育はチームで行われます。
日常的に子どもと接する職員が違和感に気付き、それを共有する。
管理者が報告を受け、必要な確認と対応を行う。
必要に応じて法人や行政など外部にもつなぐ。
その仕組み全体が機能することが重要です。
「本人に注意しました」だけでは再発防止にならないことも
問題となる関わりがあったとき、本人へ注意することはひとつの対応です。
しかし、それだけで十分とは限りません。
なぜその関わりが起きたのか。
ほかにも同じような行為はなかったのか。
別の職員は気付いていなかったのか。
子どもへの影響はなかったのか。
指導後に本当に改善したのか。
こうした点まで確認して初めて、再発防止につながります。
特に過去にも問題が確認されている場合には、その後の継続的な確認が重要になります。
管理者が動くことで職員自身を守ることにもつながる
虐待防止というと、「問題のある職員を見つける仕組み」のように感じるかもしれません。
しかし、本来はそれだけではありません。
保育者が余裕を失っている。
特定の場面で対応に困っている。
一人で抱え込んでいる。
そうした状態を早い段階で把握し、配置や役割、支援方法を考えることも、重大な問題を防ぐことにつながります。
子どもを守ることと、職員が適切な保育を続けられる環境を作ることは、別々の話ではありません。
子育て支援員として感じる「誰かが止める」の重要性
私自身も子育て支援員として保育現場に関わっています。
保育では、職員一人ひとりが子どもを見ています。
でも同時に、職員同士もお互いの保育を見ることになります。
だからこそ、
「今の関わり、大丈夫かな?」
と感じたときに声を上げられることは、とても大切です。
そして、その声を受け取った管理者が動く。
確認する。
必要なら止める。
外部につなぐ。
改善したあとも確認する。
そうした流れがあれば、小さな違和感の段階で問題を止められる可能性があります。
虐待防止は、「虐待をしない人を集めれば終わり」ではありません。
問題が起きそうなとき、誰かが気付き、誰かが止められる仕組みを作ることも重要です。
運営法人も「職員一人だけの問題ではない」と説明
9月18日の保護者説明会後、園を運営する社会福祉法人「新潟市有明福祉事業協会」の会長が取材に応じています。
法人側は今回の問題を職員一人だけの問題として済ませず、園の管理体制や法人による監督、園への支援体制などを含め、法人全体で改善に取り組む考えを示しました。
今回、園長の対応まで虐待認定に含まれたことを考えても、再発防止では個人だけでなく組織全体を見る必要があります。
まとめ|「直接やっていない」だけでは子どもを守れない
有明こども園では、保育教諭による9件に加え、園長が適切な対応を取らなかった2件も含め、計11件が虐待と認定されました。
これは今回の問題を考えるうえで非常に重要なポイントです。
虐待をした本人への対応だけでは、子どもの安全を守れない場合があります。
周囲が気付く。
報告する。
管理者が確認する。
必要な対応を取る。
必要な機関へつなぐ。
そして、その後も改善状況を確認する。
現在は、保育所等の職員による虐待を発見した場合の通報義務も法律上整備されています。
だからこそ、「自分がやったわけではない」「園の中で注意したから終わり」ではなく、子どもの安全を基準に対応することが求められます。
虐待をしないことだけでなく、虐待を見逃さないこと。
そして、疑われる行為があったときに適切に動けること。
それも、子どもを預かる組織に必要な安全対策です。

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