東京都渋谷区・道玄坂の飲食店「巖(イワオ)」で、ノロウイルスによる食中毒が発生しました。
渋谷区は、2026年9月15日に同店が調理・提供した料理を原因食品などとし、10月3日から9日まで7日間の営業停止処分を行っています。
こうしたニュースを見ると、「飲食店ではノロウイルス食中毒をどう防げばいい?」「アルコール消毒だけではダメ?」「店員に症状がなければ調理しても大丈夫?」と気になる人も多いのではないでしょうか。
ノロウイルス食中毒は、牡蠣などの二枚貝だけが原因ではありません。
厚生労働省によると、ノロウイルス食中毒は主に、感染した調理者を通じて食品が汚染されることで発生します。
そのため飲食店では、食品そのものだけでなく、調理従事者の健康管理・手洗い・調理器具の衛生管理が非常に重要です。
今回は、厚生労働省や自治体の情報をもとに、飲食店でできるノロウイルス食中毒予防を整理します。
※この記事は2026年10月5日時点で確認できる情報をもとに作成しています。
- 飲食店のノロウイルス食中毒はどう防ぐ?4つの基本
- ノロウイルス食中毒は調理従事者から食品に広がることがある
- 調理従事者の健康管理が重要!下痢・嘔吐がある場合は食品を扱わない
- 症状が治ったらすぐ調理に戻っていい?
- 症状がない人からもノロウイルスが広がる?
- ノロ対策では石けんと流水の手洗いが基本
- 石けんはノロウイルスを「殺す」ためではない
- アルコール消毒だけでは手洗いの代わりにならない
- 手洗いで洗い残しやすい場所は?
- 使い捨て手袋をすれば手洗いしなくていい?
- 調理器具はどう消毒する?熱湯も有効
- ドアノブやトイレも対策が必要
- 嘔吐物の処理はどうする?
- 食品はどのくらい加熱すればいい?
- 生ものを出さなければノロ食中毒は防げる?
- 「まかない」も感染源になり得る?
- ノロウイルス対策で飲食店が毎日確認したいポイント
- 巖の食中毒はどんな事案だった?
- 飲食店のノロウイルス対策についてよくある質問
- まとめ|ノロ対策は「健康管理・手洗い・消毒・加熱」を組み合わせる
- 公式情報・参考リンク
飲食店のノロウイルス食中毒はどう防ぐ?4つの基本
厚生労働省は、ノロウイルス食中毒を防ぐポイントとして、ウイルスを、
- 持ち込まない
- ひろげない
- つけない
- やっつける
という4つの考え方を示しています。
| 対策 | 具体例 |
|---|---|
| 持ち込まない | 調理従事者の健康管理、体調不良時に食品を扱わない |
| ひろげない | 調理器具・設備・共用部分などの洗浄や消毒 |
| つけない | 石けんと流水による適切な手洗い、必要に応じた手袋使用 |
| やっつける | 加熱が必要な食品は中心部まで十分に加熱 |
ノロウイルス対策は、どれか1つをやれば十分というものではありません。
調理従事者の健康管理、手洗い、器具の衛生管理、適切な加熱などを組み合わせることが重要です。
ノロウイルス食中毒は調理従事者から食品に広がることがある
ノロウイルスというと、牡蠣などの二枚貝を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、厚生労働省は、ノロウイルス食中毒について、感染した調理者を介して汚染された食品を食べる事例が多いと説明しています。
つまり、原因になり得るのは「生もの」だけではありません。
加熱した料理でも、加熱後の盛り付けや提供時に汚染されれば、食中毒につながる可能性があります。
例えば、
- トイレ後の手洗いが不十分だった
- 感染者が盛り付け作業をした
- 汚染された手で器具や食器に触れた
- 共用部分から手指へウイルスが付着した
といった経路を防ぐ必要があります。
なお、今回の巖の事案について、調理従事者を介して食品が汚染されたと公表されているわけではありません。
具体的な汚染経路は、2026年10月5日時点の渋谷区公表情報では明らかになっていません。
調理従事者の健康管理が重要!下痢・嘔吐がある場合は食品を扱わない
ノロウイルス食中毒を防ぐために特に重要なのが、調理従事者の健康管理です。
厚生労働省は、調理施設の責任者に対して、下痢や嘔吐などの症状がある人を、食品を直接取り扱う作業に従事させないよう求めています。
飲食店では、出勤時に、
- 下痢がないか
- 嘔吐がないか
- 腹痛がないか
- 発熱など体調変化がないか
- 家族に胃腸炎症状が出ていないか
といった状態を確認することが大切です。
特に飲食店では、「少しお腹がゆるいだけ」「忙しいから休めない」と無理をして食品を扱うことが、大きなリスクにつながる可能性があります。
症状が治ったらすぐ調理に戻っていい?
ノロウイルスで難しいのが、症状がなくなってもウイルスの排泄が続く場合があることです。
厚生労働省によると、下痢などの症状が治った後も、通常では1週間程度、長い場合には1か月程度、便中にウイルスが排泄されることがあります。
そのため、症状が改善したからといって、すぐに素手で食品へ直接触れる作業へ戻すのは慎重に考える必要があります。
厚生労働省も、症状が改善した後もしばらくの間は、食品を直接取り扱う作業を避けるよう求めています。
飲食店では、職場復帰の判断だけでなく、復帰後にどの作業を担当するかまで考えることが大切です。
症状がない人からもノロウイルスが広がる?
さらに注意したいのが、ノロウイルスには「不顕性感染」があることです。
これは、感染していても本人には症状が出ない状態です。
つまり、
「下痢も嘔吐もないから絶対に感染していない」とは言い切れません。
そのため、症状がある人だけ注意すれば十分ではなく、日頃から全員が正しい手洗いを行うことが重要です。
家族に嘔吐や下痢の症状がある場合も、家庭内で感染し、本人が無症状のまま職場へ持ち込む可能性があります。
調理従事者本人だけでなく、生活環境も含めた健康管理が必要です。
ノロ対策では石けんと流水の手洗いが基本
ノロウイルス対策で最も基本となるのが、手洗いです。
厚生労働省は、手洗いについて、手指に付着したノロウイルスを減らす最も有効な方法としています。
特に飲食店では、
- 調理を始める前
- 料理を提供する前
- 盛り付け前
- トイレの後
- 生の食材を扱った後
- 汚物処理の後
- 手袋を交換するとき
など、作業の切り替わりごとに手洗いを行うことが重要です。
石けんはノロウイルスを「殺す」ためではない
ここで少し意外なのが、石けんの役割です。
厚生労働省によると、一般的な石けんそのものには、ノロウイルスを直接失活させる効果があるわけではありません。
では、なぜ石けんを使うのでしょうか。
石けんで手の脂肪や汚れを落とすことで、付着しているウイルスを手指から剥がれやすくし、流水で洗い流すためです。
つまり、ノロウイルス対策の手洗いでは、
石けんで汚れを浮かせる → 流水でしっかり洗い流す
という物理的な除去が重要になります。
アルコール消毒だけでは手洗いの代わりにならない
飲食店の入り口や厨房でよく使われるアルコール消毒。
感染症対策として広く利用されていますが、ノロウイルス対策では注意が必要です。
厚生労働省は、消毒用エタノールによる手指消毒について、石けんと流水による手洗いの代用にはならないと説明しています。
すぐに手洗いができない場合に、一般的な感染症対策として補助的に使用する位置づけです。
つまり、
「アルコールをシュッとしたから手洗いしなくても大丈夫」
という考え方は避けた方がよいでしょう。
飲食店では、まず石けんと流水による手洗いを基本とし、そのうえで必要に応じて消毒を組み合わせることが重要です。
手洗いで洗い残しやすい場所は?
手洗いをしていても、洗い方が不十分ならウイルスが残る可能性があります。
特に洗い残しやすいのが、
- 指先
- 爪の周り
- 指と指の間
- 親指の周り
- 手首
です。
調理従事者は爪を短く整え、指輪などを外してから、石けんをよく泡立てて洗います。
洗った後は流水で十分にすすぎ、清潔なペーパータオルなどで水分を拭き取ります。
手洗い後に汚れた共用タオルへ触れてしまえば、再び手を汚染する可能性があるため、乾燥方法にも注意が必要です。
使い捨て手袋をすれば手洗いしなくていい?
使い捨て手袋もノロウイルス対策として役立ちます。
しかし、手袋をしていれば手洗いが不要になるわけではありません。
汚れた手で手袋を装着すれば、手袋の表面を汚染する可能性があります。
また、
- 生の食材を扱った後
- ごみを触った後
- 清掃作業の後
- 別の作業へ移るとき
などには手袋を交換する必要があります。
手袋はあくまで食品への直接接触を減らす補助的な手段です。
手洗い+適切な手袋交換をセットで考えましょう。
調理器具はどう消毒する?熱湯も有効
ノロウイルスは、まな板、包丁、へら、食器、ふきんなどを介して広がることがあります。
厚生労働省は、調理器具などについて、まず洗剤でよく洗浄したうえで、熱湯などによる加熱消毒を行う方法を紹介しています。
目安として、調理器具や食器などは、85℃以上の熱湯で1分以上加熱する方法が示されています。
ただし、材質によっては熱に弱い器具もあります。
使用する器具の材質や用途を確認し、適切な方法を選ぶ必要があります。
ドアノブやトイレも対策が必要
ノロウイルス対策は厨房だけではありません。
感染者が触れたドアノブ、蛇口、トイレなどにウイルスが付着し、そこから手へ広がる可能性があります。
厚生労働省は、調理従事者間の相互汚染を防ぐため、ドアノブなど手指が触れる場所の洗浄・消毒も重要としています。
飲食店では、
- トイレのドアノブ
- 水道の蛇口
- 冷蔵庫の取っ手
- 厨房のスイッチ
- 共用電話や端末
など、複数の人が頻繁に触れる場所も衛生管理の対象として考えることが大切です。
嘔吐物の処理はどうする?
ノロウイルス感染者の嘔吐物には、大量のウイルスが含まれている可能性があります。
飲食店内でお客さんや従業員が嘔吐した場合、その処理方法を誤ると、周囲へウイルスを広げるおそれがあります。
処理する人は使い捨ての手袋やマスクなどを着用し、周囲への飛散を防ぎながら処理することが重要です。
また、処理した後は手袋をしていても必ず手洗いを行います。
「手袋をしていたから手は汚れていない」と考えず、汚物処理後の手洗いを徹底しましょう。
食品はどのくらい加熱すればいい?
ノロウイルスに汚染されている可能性がある食品については、十分な加熱が有効です。
厚生労働省のQ&Aでは、二枚貝などについて、中心部を85~90℃で90秒以上加熱する方法が示されています。
加熱が必要な食品は、表面だけでなく中心部まで十分に温度を上げることが重要です。
ただし、加熱した後の食品を汚染された手や器具で触れば、再びウイルスが付着する可能性があります。
そのため、
加熱したから安心ではなく、加熱後の取り扱いまで含めて衛生管理する
ことが必要です。
生ものを出さなければノロ食中毒は防げる?
「ノロウイルス=生もの」と考えると、生ものを出さない飲食店なら安心と思うかもしれません。
しかし、感染した調理者を介した汚染では、サラダや盛り付け済みの料理、加熱後の料理なども原因になる可能性があります。
つまり、ノロウイルス食中毒を防ぐには、
- 生ものを避ける
だけでは不十分です。
調理従事者の健康管理と手洗い、調理器具の衛生管理、加熱後の取り扱いまで含めた対策が必要になります。
「まかない」も感染源になり得る?
意外と見落としやすいのが、従業員同士で食べる「まかない」です。
厚生労働省は、調理従事者間の相互汚染を防ぐため、まかない食についても衛生的に調理することが大切としています。
店舗の商品だけ衛生管理を徹底していても、従業員用の食事や休憩スペースで感染が広がれば、厨房へ持ち込まれる可能性があります。
飲食店では、営業中の料理だけでなく、従業員の日常的な飲食や共用スペースも含めた衛生管理が重要です。
ノロウイルス対策で飲食店が毎日確認したいポイント
日々の営業で確認したい内容を簡単にまとめると、次のようになります。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 従業員の体調 | 下痢・嘔吐・腹痛・発熱などがないか |
| 家族の体調 | 同居家族に胃腸炎症状が出ていないか |
| 手洗い | 石けんと流水で作業ごとに実施しているか |
| 手袋 | 適切なタイミングで交換しているか |
| 器具 | 洗浄・消毒が適切に行われているか |
| 共用部分 | ドアノブ・蛇口などを清潔に保っているか |
| 加熱 | 必要な食品を中心部まで十分に加熱しているか |
| 嘔吐物処理 | 処理用品や手順を準備しているか |
特別な対策を一度行って終わりではなく、毎日繰り返すことが重要です。
巖の食中毒はどんな事案だった?
今回、渋谷区が行政処分を公表したのは、東京都渋谷区道玄坂の飲食店「巖(イワオ)」です。
渋谷区によると、原因食品などは2026年9月15日に同店が調理・提供した料理。
病因物質はノロウイルスです。
店舗は10月3日から10月9日まで、7日間の営業停止処分となっています。
ただし、具体的なメニュー名や患者数、ウイルスがどのような経路で料理へ付着したのかについては、現在確認できる公表内容には記載されていません。
そのため、この事案を理由に「巖では手洗いが不十分だった」「従業員が感染していた」と断定することはできません。
この記事で紹介した対策は、今回の店舗に原因を推測して当てはめたものではなく、厚生労働省が示している一般的なノロウイルス食中毒予防です。
飲食店のノロウイルス対策についてよくある質問
Q. アルコール消毒だけでノロウイルス対策になる?
厚生労働省は、消毒用エタノールによる手指消毒について、石けんと流水による手洗いの代用にはならないとしています。
手洗いを基本として、アルコールは補助的に考えましょう。
Q. 症状が治ったら翌日から調理していい?
ノロウイルスは、症状が治った後も便中への排泄が続くことがあります。
厚生労働省は、症状改善後もしばらくの間は、食品を直接取り扱う作業を避けるよう求めています。
Q. 手袋をしていれば安全?
手袋だけで完全に防げるわけではありません。
手洗いを行ったうえで、作業内容に応じて適切に交換する必要があります。
Q. ノロウイルスは牡蠣からしか感染しない?
いいえ。感染した調理従事者を介して食品が汚染される食中毒もあります。
Q. 加熱すれば必ず大丈夫?
十分な加熱は有効ですが、加熱後に汚染された手や器具で触れば再汚染する可能性があります。
加熱と衛生的な取り扱いの両方が必要です。
まとめ|ノロ対策は「健康管理・手洗い・消毒・加熱」を組み合わせる
飲食店のノロウイルス食中毒を防ぐためには、ひとつの対策だけに頼らないことが大切です。
厚生労働省は、ノロウイルスを「持ち込まない・ひろげない・つけない・やっつける」という考え方で予防するよう呼びかけています。
特に重要なのが、調理従事者の健康管理と石けん・流水による手洗いです。
ノロウイルスは、感染していても症状が出ない場合があります。
また、症状が治った後もしばらくウイルスを排泄する可能性があるため、「元気だから大丈夫」と判断するだけでは十分ではありません。
アルコール消毒だけに頼らず、手洗い、器具や共用部分の衛生管理、必要な食品の十分な加熱などを組み合わせることが重要です。
ノロウイルス食中毒は秋から冬にかけてさらに注意したい時期に入ります。
飲食店では、日々の基本的な衛生管理を積み重ねることが、大規模な食中毒を防ぐ第一歩になります。

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