「ノロウイルスは加熱すれば大丈夫?」
「85℃にすればすぐ食べてもいい?」
ノロウイルス対策を調べると、「85〜90℃で90秒以上」という数字を目にすることがあります。
厚生労働省では、ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などの食品について、中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが望ましいとしています。
ここで重要なのは、単に料理の表面が熱くなればよいわけではないことです。
「中心部」「温度」「時間」をセットで考える必要があります。
今回は、ノロウイルス対策でなぜ85〜90℃で90秒以上という加熱条件が示されているのか、栄養士目線で分かりやすく解説します。
- ノロウイルス対策に加熱は有効?
- 目安は「中心部85〜90℃で90秒以上」
- 沖縄県も85℃以上・90秒以上の加熱を呼びかけ
- なぜ「中心部」なの?
- 「85℃になった瞬間」で終わりではない
- なぜ90秒という時間が必要なの?
- 「85〜90℃で90秒=絶対安全」とは言い切れない
- 食品中ではウイルスが守られることもある
- そもそも85〜90℃・90秒はどこから来た?
- なぜ「ノロウイルスを殺す」ではなく「失活」というの?
- 牡蠣などの二枚貝はなぜよく話題になる?
- 「生食用の牡蠣=ノロウイルスが絶対いない」ではない
- 電子レンジなら90秒加熱すればいい?
- 電子レンジは加熱ムラに注意
- 大きな料理ほど中心温度を意識する
- 大量調理施設では中心温度を測定する
- 家庭でも中心まで熱が通ったか確認する
- 「沸騰しているから大丈夫」とも限らない
- 再加熱でも中心部を意識する
- 加熱したら、その後は何をしても大丈夫?
- 加熱後の二次汚染に注意
- ノロウイルス対策は「加熱だけ」では完成しない
- 今回の沖縄リゾートホテル食中毒では?
- 夏でも加熱対策は必要
- 加熱できない食品では「つけない」が重要
- 「85〜90℃・90秒」だけ覚えて終わらない
- まとめ
ノロウイルス対策に加熱は有効?
はい。加熱はノロウイルスの活性を失わせるための有効な方法です。
ウイルスの感染性を失わせることを「失活」といいます。
食品にノロウイルスが付着している可能性がある場合、適切な加熱によって感染リスクを下げることができます。
目安は「中心部85〜90℃で90秒以上」
厚生労働省では、ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などについて、
中心部を85〜90℃で90秒以上
加熱することが望ましいとしています。
大切なのは、表面温度ではなく「中心部」が条件に達していることです。
沖縄県も85℃以上・90秒以上の加熱を呼びかけ
2026年9月にノロウイルス食中毒への注意喚起を更新した沖縄県も、食品は中心部を85℃以上で90秒以上加熱することを対策として挙げています。
沖縄では夏場でもノロウイルス食中毒が発生しているため、季節を問わず基本的な衛生管理を続けることが重要です。
なぜ「中心部」なの?
食品を加熱すると、外側から熱が伝わっていきます。
表面が十分に熱くなっていても、厚みのある食品では中心部分まで同じ温度に達していないことがあります。
例えば大きな食材や厚みのある料理では、表面から湯気が出ていても中心部の温度は低い可能性があります。
そのため、食品衛生では「見た目が熱そう」ではなく、最も熱が通りにくい中心部まで十分に加熱することが重要になります。
「85℃になった瞬間」で終わりではない
もう一つ重要なのが時間です。
ノロウイルス対策では、温度だけでなく、その温度で一定時間加熱することが求められます。
「中心が85℃になったから、すぐ火を止めれば大丈夫」と単純に考えるのではなく、必要な温度と時間を組み合わせて管理します。
なぜ90秒という時間が必要なの?
ウイルスの失活には、温度だけでなく加熱時間も関係します。
厚生労働省では、ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などについて、85〜90℃で90秒以上という条件を示しています。
食品の中心まで十分な熱を加え、その状態を一定時間維持することが重要です。
「85〜90℃で90秒=絶対安全」とは言い切れない
ここは数字だけが一人歩きしやすいポイントです。
85〜90℃で90秒以上という条件は、ノロウイルス対策として重要な加熱の目安です。
しかし、食品の安全性は温度と時間だけで決まるわけではありません。
食品に付着しているウイルス量や食品の状態などによっても、加熱による失活のされ方は変わります。
「90秒加熱したから、その後どんな扱いをしても絶対安全」という意味ではありません。
食品中ではウイルスが守られることもある
厚生労働省は、食品中に存在するウイルスはタンパク質によって保護されるため、確実な失活にはより厳しい加熱条件が必要になると説明しています。
加熱によるウイルスの失活には、
- 温度
- 時間
- 存在するウイルス粒子の数
- 乾燥しているか液体中か
- 有機物の量
- pH
なども関係します。
そのため、一つの数字だけで食品衛生のすべてを判断することはできません。
そもそも85〜90℃・90秒はどこから来た?
食品中のウイルス制御については、国際的な食品規格を策定するコーデックス委員会でもガイドラインが示されています。
二枚貝の加熱調理では、ウイルスを失活させるために中心部を85〜90℃で少なくとも90秒間加熱する条件が示されています。
日本のノロウイルス対策でも、この条件が重要な目安として使われています。
なぜ「ノロウイルスを殺す」ではなく「失活」というの?
細菌については「菌を殺す」という表現を使うことがあります。
しかし、ウイルスは細菌のような生物とは性質が異なります。
そのためノロウイルスでは、感染する能力を失わせることを「失活」と表現します。
食品衛生の資料で「ノロウイルスを失活させる」という表現を見かけるのはこのためです。
牡蠣などの二枚貝はなぜよく話題になる?
ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝と関連して紹介されることがあります。
二枚貝は海水中のプランクトンなどを取り込む際に大量の海水をろ過します。
その過程で、海水中に存在するノロウイルスが体内に蓄積されることがあります。
汚染された二枚貝を生や加熱不十分な状態で食べると、感染につながる可能性があります。
「生食用の牡蠣=ノロウイルスが絶対いない」ではない
「生食用」と表示された牡蠣についても、「ノロウイルスが絶対に存在しない」という意味ではありません。
生食用と加熱用の区分には食品衛生上の基準がありますが、表示だけを見てノロウイルスの有無を断定することはできません。
特に子どもや高齢者などでは、加熱が必要な食品を中心部まで十分に加熱することが重要です。
電子レンジなら90秒加熱すればいい?
「90秒」という数字を見ると、電子レンジで90秒加熱すればよいと思うかもしれません。
しかし、そういう意味ではありません。
必要なのは、食品の中心部が85〜90℃に達した状態で90秒以上加熱されることです。
電子レンジの加熱時間を単純に90秒に設定するという意味ではありません。
電子レンジは加熱ムラに注意
電子レンジでは、食品の場所によって温度差が生じることがあります。
一部が非常に熱くても、別の部分は十分に温まっていないことがあります。
途中で食品の位置を変えたり、必要に応じて混ぜたりして、全体へ熱が伝わるようにすることが大切です。
大きな料理ほど中心温度を意識する
厚みのある食品や大きな料理では、中心まで熱が伝わるのに時間がかかります。
見た目や湯気だけでは中心温度を判断できません。
大量調理施設などでは、中心温度計を使って実際の温度を確認し、記録することが重要です。
大量調理施設では中心温度を測定する
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理食品について中心温度計を使用するなどして、必要な温度と時間に達していることを確認するよう示されています。
ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などでは、85〜90℃で90秒以上の加熱が示されています。
さらに、温度と時間を記録することも重要です。
家庭でも中心まで熱が通ったか確認する
家庭では毎回中心温度計を使用するとは限りません。
それでも、厚みのある食品や加熱が必要な食品では、中心部まで十分に熱が通っていることを確認しましょう。
特にノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などでは、加熱不足を避けることが重要です。
「沸騰しているから大丈夫」とも限らない
鍋の汁が沸騰していても、大きな具材の中心まで同じ温度になっているとは限りません。
液体の温度だけでなく、最も熱が通りにくい部分まで十分に加熱できているかを考えましょう。
再加熱でも中心部を意識する
作り置きした料理などを再加熱するときも、表面だけを温めるのではなく中心部まで十分に加熱します。
電子レンジを使う場合には、加熱ムラがないよう注意しましょう。
加熱したら、その後は何をしても大丈夫?
いいえ。
ここがノロウイルス食中毒予防で非常に重要なポイントです。
せっかく適切に加熱した食品でも、その後にノロウイルスが付着した手や調理器具で触れれば、再び食品が汚染される可能性があります。
加熱後の二次汚染に注意
例えば、十分に加熱した食品を盛り付ける際に、汚染された手やトングを使用したとします。
その料理がそのまま提供されれば、加熱後に付着したウイルスを失活させる工程はありません。
そのため、
- 盛り付け前の手洗い
- 清潔な器具の使用
- 加熱済み食品と未加熱食品の区分
- 使い捨て手袋の適切な使用と交換
なども重要です。
ノロウイルス対策は「加熱だけ」では完成しない
ノロウイルス食中毒を防ぐためには、
- 施設へ持ち込まない
- 食品や器具へつけない
- 施設内へ拡げない
- 適切な加熱でやっつける
という複数の対策を組み合わせます。
加熱は非常に重要ですが、それだけでノロウイルス対策が完成するわけではありません。
今回の沖縄リゾートホテル食中毒では?
2026年8月末から9月にかけて、沖縄県恩納村のリゾートホテル内レストランでノロウイルスによる食中毒が発生しました。
今回の事例を受け、沖縄県はノロウイルス対策として、食品を中心部まで十分に加熱することや、手洗い、調理器具の消毒などを呼びかけています。
ただし、今回の食中毒について「加熱不足が原因だった」と公表されているわけではありません。
特定の料理や工程を推測で原因と決めつけないことが重要です。
夏でも加熱対策は必要
ノロウイルスは冬に多いことで知られていますが、一年を通して発生します。
沖縄県も、県内では夏場でもノロウイルス食中毒が発生すると注意を呼びかけています。
季節に関係なく、加熱が必要な食品は十分に加熱しましょう。
加熱できない食品では「つけない」が重要
すべての食品を85〜90℃まで加熱できるわけではありません。
サラダやカットフルーツなど、そのまま食べる食品もあります。
こうした食品では特に、調理する人の手洗いや清潔な器具の使用など、ノロウイルスを食品へ「つけない」対策が重要になります。
「85〜90℃・90秒」だけ覚えて終わらない
ノロウイルス対策では数字が分かりやすいため、「85〜90℃で90秒」という部分だけが注目されがちです。
しかし、本当に覚えておきたいのは、
中心部まで十分に加熱し、加熱後にも再び汚染させないこと
です。
温度と時間は、そのための重要な管理指標です。
まとめ
ノロウイルス対策として、加熱はウイルスを失活させる有効な方法です。
厚生労働省では、ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝などについて、中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが望ましいとしています。
ポイントは、
- 表面ではなく中心部まで加熱する
- 温度だけでなく時間も守る
- 電子レンジでは加熱ムラに注意する
- 加熱後の二次汚染を防ぐ
ことです。
そして「85〜90℃で90秒以上」という数字は、どんな食品でもその条件だけ満たせば絶対安全になるという意味ではありません。
食品の状態やウイルス量なども加熱による失活へ影響します。
ノロウイルス対策は「十分な加熱」と「加熱後につけない」をセットで考えることが大切です。
次の記事では、旅行先で突然嘔吐や下痢が始まった場合にどうすればよいのか、ホテル滞在中のノロウイルス対策を詳しく解説します。

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