エイブルフーズが調理・提供した昼食を66人が食べ、このうち29人が下痢や腹痛などの症状を訴えました。
そして、当日の献立として明らかになった料理のひとつが「肉味噌炒め」です。
ウェルシュ菌といえば、カレーやシチュー、煮物などの「大鍋料理」が原因になりやすいイメージがあります。
では、今回の肉味噌炒めが原因だったのでしょうか?
大量調理の現場にも携わってきた栄養士の視点から、ウェルシュ菌が増える仕組みと一緒に整理します。
徳島の介護施設で29人がウェルシュ菌食中毒
今回の食中毒が発生したのは、徳島市内にある介護施設2カ所です。
2026年9月16日にエイブルフーズが調理・提供した昼食を66人が食べ、そのうち29人が下痢や腹痛などを発症しました。
患者の便からウェルシュ菌が検出されたことなどから、行政はこの昼食を原因とする食中毒と判断しています。
報道で明らかになった当日の献立には、
- 肉味噌炒め
- ブロッコリーの卵とじ
- 切り干し大根の酢の物
などがありました。
肉味噌炒めが原因だった?
献立を見ると、真っ先に「肉味噌炒めが怪しいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ここは注意が必要です。
現時点で、肉味噌炒めが原因食品だったと特定されたわけではありません。
行政が原因食品としているのは、エイブルフーズが9月16日に調理・提供した「昼食」です。
肉味噌炒めそのものからウェルシュ菌が検出された、あるいは肉味噌炒めだけを食べた人に症状が集中した、といった情報も現時点では確認されていません。
そのため、
「肉味噌炒めが原因だった」
と断定することはできません。
それでも肉料理が注目されるのはなぜ?
では、なぜウェルシュ菌食中毒では肉を使った料理がしばしば注目されるのでしょうか。
ウェルシュ菌は人や動物の腸管、土壌など自然界に広く存在しています。
そのため、肉や魚介類、野菜などさまざまな食品を通して調理場へ持ち込まれる可能性があります。
さらにウェルシュ菌には、食中毒対策を難しくする大きな特徴があります。
それが「芽胞を作る」ことです。
加熱しても生き残る?ウェルシュ菌の「芽胞」
ウェルシュ菌は環境が悪くなると、熱などに強い芽胞という状態になることがあります。
料理を十分に加熱すれば多くの細菌は死滅しますが、ウェルシュ菌の芽胞は加熱後も生き残る場合があります。
ここで、
「じゃあ加熱しても意味がないの?」
と思うかもしれませんが、そうではありません。
加熱は食中毒予防の基本です。
問題になりやすいのは、むしろ加熱した後の温度管理です。
大鍋の中で何が起きる?
ウェルシュ菌は酸素が少ない環境で増殖しやすい菌です。
大量調理では、大きな鍋や容器にたくさんの料理を入れることがあります。
加熱によって食品内部の酸素が減り、さらに料理がゆっくり冷えていくと、条件によってはウェルシュ菌が増殖しやすい環境ができることがあります。
特に大量の料理は、家庭で作る少量の料理よりも中心部まで冷えるのに時間がかかります。
その間に菌が増殖できる温度帯が長く続けば、食中毒につながる可能性があります。
「煮込み料理じゃないから大丈夫」とは限らない
ウェルシュ菌というと、
- カレー
- シチュー
- スープ
- 煮物
といった料理がよく知られています。
確かに、こうした大量に作られる煮込み料理は注意が必要です。
しかし、「煮込み料理でなければウェルシュ菌食中毒は起こらない」というわけではありません。
重要なのは料理名そのものではなく、
- どのような原材料を使用したか
- どのくらいの量を調理したか
- 調理後すぐ提供したのか
- 一度冷却したのか
- どのような温度で保存したのか
- 再加熱を行ったのか
といった調理工程と時間・温度管理です。
今回の肉味噌炒めはどう作られていた?
ここが今回の食中毒で非常に気になるポイントです。
肉味噌炒めについて、
- 何の肉を使用していたのか
- 一度に何食分を調理していたのか
- 何時ごろ調理したのか
- 調理後どのくらいの時間保管したのか
- 保管温度は何度だったのか
- 一度冷却した料理だったのか
- 提供前に再加熱したのか
といった詳細な工程は、現時点で公表されている情報からは分かっていません。
これらが明らかになれば、ウェルシュ菌がどの工程で増殖した可能性があるのか、さらに詳しく考える材料になります。
反対に、工程が分からない段階で「大量調理だからこうだったはず」と推測だけで原因を決めつけることも避けなければなりません。
栄養士として気になる「作った後」の管理
私は栄養士として給食や大量調理の現場に携わってきました。
大量調理では「中心まで火が通ったか」だけでなく、調理から提供までの時間や温度管理も非常に重要です。
特にウェルシュ菌は、加熱した料理でも条件がそろえば問題になる可能性があります。
そのため、調理後はできるだけ速やかに提供すること、保存する必要がある場合には適切に温度管理することが重要になります。
大量調理だからこそ、家庭料理以上に「作った後」まで含めた衛生管理が求められます。
徳島刑務所でもウェルシュ菌食中毒が発生
さらに徳島県では、同じ時期に徳島刑務所でも受刑者18人が発症するウェルシュ菌食中毒が発生しました。
こちらではカレービーフンや豚肉と馬鈴薯の煮物などが提供されていたことが明らかになっています。
介護施設と刑務所。
どちらも一度に多くの食事を提供する施設で、同じウェルシュ菌による食中毒が相次いだことになります。
ただし、現時点で2件に関連性があるとの発表はありません。
それぞれ別の食中毒事件として扱われています。
まとめ|肉味噌炒め=原因とはまだ言えない
徳島市内の介護施設2カ所で発生したウェルシュ菌食中毒では、当日の献立に肉味噌炒めが含まれていたことが分かっています。
しかし、現時点で肉味噌炒めそのものが原因食品と特定されたわけではありません。
ウェルシュ菌食中毒を考えるうえで重要なのは、単純に「どんな料理だったか」だけではなく、加熱・冷却・保存・再加熱・提供までの時間と温度です。
今回、具体的な調理工程や食品からの検査結果などが追加で公表されれば、原因にさらに迫れる可能性があります。
「肉味噌炒めだったから危険」と考えるのではなく、大量調理では加熱後の管理まで重要という点を、今回の事例から改めて意識したいところです。

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