北海道北斗市の集団給食施設「サポートカーム」で、ノロウイルスによる食中毒が発生しました。
北海道が2026年9月23日に公表した内容によると、9月11~13日に施設で調理・提供された食事を原因として7人が発症しています。
今回、施設側は調理業務を自主的に止め、施設設備や器具などの清掃・消毒を実施しました。
その後、渡島保健所が危害の除去と拡大防止に必要な措置が取られたことを確認しています。
では、給食施設などでノロウイルスが発生した場合、実際にはどのような清掃・消毒が必要なのでしょうか。
この記事では、北海道や厚生労働省が示している情報をもとに、ノロウイルス対策で知っておきたい洗浄・消毒のポイントを整理します。
- 北斗市の施設では清掃・消毒を実施
- ノロウイルス対策は「いきなり消毒」ではない
- 調理器具は次亜塩素酸ナトリウム200ppmが目安
- 85℃以上で1分以上の加熱も有効
- 「85℃1分」と「85~90℃90秒」は何が違う?
- 吐物や便の処理は200ppmとは限らない
- 次亜塩素酸ナトリウムは手指消毒に使わない
- 「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」は同じではない
- 家庭用の塩素系漂白剤でも代用できる場合がある
- 塩素系漂白剤と酸性タイプの製品を混ぜない
- 次亜塩素酸ナトリウムは金属を傷めることがある
- 感染者が使用した食器を厨房へ戻す時にも注意
- 清掃する場所は厨房だけではない
- 吐物は乾燥させないことも重要
- ノロウイルス対策は「消毒液」だけでは完成しない
- 手袋をすれば消毒は不要?
- 大量調理施設では手洗いを「2回」行う場面もある
- 清掃・消毒後に大切なのは「再び汚染させない」こと
- 北斗市の事例で「200ppmを使った」とは断定できない
- 給食施設のノロウイルス清掃・消毒ポイントを整理
- まとめ|ノロ対策は「何を・どの濃度で・どう処理するか」を分けて考える
北斗市の施設では清掃・消毒を実施
北海道によると、今回食中毒が発生したサポートカームでは、食事提供に関する調理業務を自主的に自粛しました。
その期間中に、施設設備や器具などの清掃・消毒を実施しています。
さらに渡島保健所が、危害の除去と拡大防止のために必要な措置が取られたことを確認しました。
そのため、食品衛生法に基づく業務停止命令は行われていません。
ただし、北海道の今回の食中毒公表資料では、施設が使用した消毒剤の濃度や具体的な清掃手順までは示されていません。
ここからは、今回の施設が実際に行った方法を推測するのではなく、一般的なノロウイルス対策として見ていきます。
ノロウイルス対策は「いきなり消毒」ではない
ノロウイルス対策というと、
「とにかく消毒液をかければいい」
と思うかもしれません。
しかし、調理器具などでは、まず汚れを十分に落とすことが重要です。
北海道は、まな板、包丁、ふきんなどについて、使用のたびによく洗浄・消毒・乾燥し、清潔に保つよう案内しています。
そして消毒する前には、洗剤などを使って十分に洗浄します。
「洗浄」と「消毒」は同じ作業ではありません。
まず汚れを取り除き、そのうえで適切な消毒を行うことがポイントです。
調理器具は次亜塩素酸ナトリウム200ppmが目安
北海道は、十分に洗浄した調理器具について、
次亜塩素酸ナトリウムを塩素濃度200ppmに調整して使用する方法
を案内しています。
200ppmは0.02%に相当します。
厚生労働省のノロウイルスQ&Aでも、ノロウイルスに汚染された可能性がある調理台や調理器具について、十分に洗浄した後、約200ppmの次亜塩素酸ナトリウムなどで処理する方法が示されています。
85℃以上で1分以上の加熱も有効
薬剤だけが消毒方法ではありません。
北海道は調理器具について、
熱湯85℃以上で1分以上加熱する方法
も有効としています。
厚生労働省も、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオルなどについて、85℃以上で1分以上の加熱を有効な方法として示しています。
対象物が熱に耐えられる場合には、加熱による方法も選択肢になります。
「85℃1分」と「85~90℃90秒」は何が違う?
ノロウイルスについて調べていると、
「85℃以上で1分」
と、
「85~90℃で90秒以上」
という2つの数字を見かけることがあります。
これは、対象が異なるためです。
85℃以上で1分以上は、調理器具などを熱湯で処理する場合に示されている方法です。
一方、厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、二枚貝などノロウイルス汚染のおそれがある食品について、中心部85~90℃で90秒間以上の加熱が示されています。
「ノロだから全部同じ温度と時間」ではありません。
吐物や便の処理は200ppmとは限らない
ここは特に注意したいポイントです。
調理器具の消毒で「200ppm」という数字を覚えると、
「ノロウイルスなら何でも200ppm」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、対象によって使用する濃度は異なります。
厚生労働省は、吐物などを拭き取った後の床などについて約200ppmの次亜塩素酸ナトリウムなどで処理する方法を示す一方、吐物などを廃棄する袋の中で廃棄物を十分に浸す場合には、1000ppm程度の次亜塩素酸ナトリウムを使用する方法を示しています。
「どこを、何のために消毒するのか」で適切な濃度が変わります。
次亜塩素酸ナトリウムは手指消毒に使わない
次亜塩素酸ナトリウムがノロウイルス対策に使われるからといって、手へ直接使用してはいけません。
北海道も、次亜塩素酸ナトリウムを手洗い後の手指消毒には使用しないよう注意を呼びかけています。
手指については、石けんと流水による適切な手洗いで、付着したウイルスを物理的に減らすことが基本です。
「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」は同じではない
名前が似ているため混同しやすいのですが、
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は別のものです。
北海道も感染性胃腸炎の消毒案内で、この2つを区別しています。
「塩素系だから同じだろう」と自己判断で置き換えず、使用する製品の成分や濃度、使用方法を確認することが必要です。
家庭用の塩素系漂白剤でも代用できる場合がある
厚生労働省は、次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用塩素系漂白剤でも代用できるとしています。
ただし、製品によって次亜塩素酸ナトリウムの濃度が異なる場合があります。
必要な濃度へ希釈する量は、製品の濃度によって変わります。
そのため、
「水○mLにキャップ○杯」と一律に覚えるのではなく、使用する製品の表示やメーカーの案内を確認する
ことが大切です。
塩素系漂白剤と酸性タイプの製品を混ぜない
家庭用塩素系漂白剤を使用する場合には、製品に記載されている使用上の注意を守る必要があります。
特に塩素系の製品と酸性タイプの製品を混ぜることは危険です。
自己流で複数の洗剤や消毒剤を混ぜず、それぞれの製品表示に従って使用しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムは金属を傷めることがある
厚生労働省は、次亜塩素酸ナトリウムには金属腐食性があることにも注意を呼びかけています。
金属部分を消毒した場合には、薬剤を十分に拭き取るなど、対象物に応じた対応が必要です。
強い消毒剤を使えば使うほどよいわけではありません。
適切な濃度と方法を守ることが重要です。
感染者が使用した食器を厨房へ戻す時にも注意
病院や高齢者施設など、生活スペースと厨房がつながっている施設では、感染者が使用した食器にも注意が必要です。
厚生労働省は、多人数の食事を調理・配食する厨房へ感染者が使用した食器や吐物が付着した食器を戻す場合、可能であれば厨房へ戻す前に消毒するよう案内しています。
これは、汚染された食器を厨房内へ持ち込んで、調理環境へウイルスを広げないためです。
清掃する場所は厨房だけではない
ノロウイルスが発生した時に確認するのは、まな板や包丁だけではありません。
人の手が触れる場所にも注意が必要です。
- ドアノブ
- 手すり
- 蛇口
- トイレ
- 作業台
- 配膳に使用する場所
- 感染者が触れた可能性のある日用品
厚生労働省は、ノロウイルスがドアノブやカーテン、リネン類、日用品などの環境から検出されることがあるとしています。
厨房の中だけを消毒すれば終わり、とは限りません。
吐物は乾燥させないことも重要
施設内で嘔吐があった場合は、吐物を放置しないことが重要です。
北海道は、便や吐物などの汚染物について、飛散・乾燥させないよう周囲から隔離し、適切に処理するよう案内しています。
処理する人自身が感染しないよう、手袋やマスクなどを使用することも必要です。
ノロウイルス対策は「消毒液」だけでは完成しない
ノロウイルスが発生すると、どうしても、
「何ppmで消毒すればいい?」
という数字に目が向きがちです。
しかし、給食施設で必要なのは消毒剤だけではありません。
調理従事者の健康状態を確認する。
石けんと流水で適切に手を洗う。
汚染区域と清潔区域を意識する。
調理器具を適切に洗浄・消毒する。
加熱後の食品を再び汚染させない。
感染者の吐物などを適切に処理する。
こうした複数の対策を組み合わせる必要があります。
手袋をすれば消毒は不要?
使い捨て手袋を使用していても、手洗いや衛生管理が不要になるわけではありません。
手袋を装着する前の手が汚染されていれば、装着する際に手袋を汚染する可能性があります。
また、汚染された手袋のまま別の食品や器具に触れれば、二次汚染につながります。
大量調理施設では、必要なタイミングでの手洗いと手袋交換を適切に組み合わせることが重要です。
大量調理施設では手洗いを「2回」行う場面もある
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、特定のタイミングについて、流水と石けんによる手洗いをしっかり2回行うことが示されています。
例えば、トイレの後や、汚染作業区域から非汚染作業区域へ移動する場合などです。
ノロウイルス対策は、消毒剤だけではなく、日常の作業動線や手洗いのタイミングまで含めて考える必要があります。
清掃・消毒後に大切なのは「再び汚染させない」こと
一度きれいに消毒しても、その後にウイルスを持ち込めば再び汚染が起こる可能性があります。
そのため、
- 従事者の健康確認
- 適切な手洗い
- 作業区域の衛生管理
- 調理器具の洗浄・消毒
- トイレなど共用部分の衛生管理
- 体調不良時に食品へ直接触れる作業を避ける
といった日常的な対策を続けることが重要です。
北斗市の事例で「200ppmを使った」とは断定できない
今回の記事で紹介した200ppmの次亜塩素酸ナトリウムや85℃以上1分という方法は、北海道や厚生労働省が一般的なノロウイルス対策として示しているものです。
一方、今回のサポートカームについて北海道が公表しているのは、
施設設備や器具などの清掃・消毒を実施した
というところまでです。
実際にどの薬剤を何ppmで使用したかまでは公表されていません。
そのため、
「サポートカームでは200ppmで消毒した」
と断定することはできません。
給食施設のノロウイルス清掃・消毒ポイントを整理
- 消毒の前に汚れを十分に洗浄する
- 調理器具では次亜塩素酸ナトリウム約200ppmが選択肢になる
- 熱に耐えられる器具は85℃以上1分以上の加熱も有効
- 食品の加熱条件とは数字を混同しない
- 吐物などは対象や用途によって必要な塩素濃度が異なる
- 次亜塩素酸ナトリウムを手指には使用しない
- 金属腐食にも注意する
- 厨房だけでなくトイレやドアノブなども確認する
- 感染者の食器を厨房へ戻す際にも注意する
- 清掃・消毒後も健康管理と手洗いを継続する
まとめ|ノロ対策は「何を・どの濃度で・どう処理するか」を分けて考える
北海道北斗市の集団給食施設「サポートカーム」では、ノロウイルス食中毒の発生後、調理業務を自主的に自粛し、施設設備や器具などの清掃・消毒が行われました。
一般的なノロウイルス対策として、北海道は十分に洗浄した調理器具について、次亜塩素酸ナトリウム200ppmでの処理や、85℃以上で1分以上加熱する方法を案内しています。
ただし、ノロウイルス対策では、
「200ppmさえ覚えておけばいい」というわけではありません。
調理器具なのか、環境なのか、吐物などの汚染物なのかによって、適切な処理方法は変わります。
また、消毒剤だけに頼るのではなく、洗浄、手洗い、従事者の健康管理、二次汚染防止、吐物の適切な処理などを組み合わせることが重要です。
今回のサポートカームについては、具体的にどの消毒剤をどの濃度で使用したかまでは公表されていません。
公表された事実と一般的な衛生管理を分けて理解しながら、ノロウイルスを「持ち込まない・拡げない・つけない」環境を作ることが大切です。


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