乳幼児だけじゃない|嚥下機能が低下した高齢者に生のリンゴは安全?

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リンゴによる窒息事故というと、乳幼児を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、食べ物による窒息に注意が必要なのは子どもだけではありません。

高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなることがあります。

さらに、疾患や義歯の状態、その日の体調などによっても食べる力は変わります。

では、嚥下機能が低下した高齢者に生のリンゴをそのまま提供しても大丈夫なのでしょうか。

結論からいえば、「高齢者だから生のリンゴは禁止」「○歳以上なら加熱する」と年齢だけで一律に決めることはできません。

大切なのは、その人自身の噛む力・飲み込む力に食形態が合っているかを確認することです。

高齢者では食べ物による窒息事故が大きな問題

高齢者にとって、食べ物による窒息は決して珍しい事故ではありません。

消費者庁は、高齢になると口の中や喉の機能などに変化が生じ、噛む力や飲み込む力が弱くなると説明しています。

また、食べ物の中には噛み切りにくいものや、喉に付着しやすいものなど、窒息につながりやすい性質を持つものがあります。

そのため、高齢者の食事では「何を食べるか」だけではなく、「その人が安全に食べられる状態にする」という視点が重要です。

高齢者なら全員、生のリンゴが危険なの?

ここは誤解したくないところです。

高齢者だからといって、全員が生のリンゴを食べられないわけではありません。

自分の歯で十分に噛むことができ、口の中で食べ物を処理し、安全に飲み込める人もいます。

一方で、同じ年齢でも、噛む力や飲み込む力が低下している人もいます。

つまり、

「70歳だからこの食事」

「90歳だから生の果物は禁止」

というように、年齢だけで食形態を決めることはできません。

見るべきなのは、実際の食べる機能です。

生のリンゴで確認したい「固さ」

生のリンゴには一定の固さがあります。

安全に食べるためには、リンゴを噛み砕き、口の中で飲み込みやすい状態にまとめる必要があります。

ところが、噛む力が低下している場合には、十分に細かくできないまま飲み込もうとする可能性があります。

厚生労働省の医療安全資料でも、固いリンゴなどで「むせる・ひっかける」といった事例が挙げられ、本人の状態や嚥下能力を考慮した食事形態の工夫が事故防止策として示されています。

生のリンゴが食べられるかどうかは、「果物だから柔らかそう」というイメージではなく、実際にその人が処理できる固さなのかを考える必要があります。

「細かく刻めば大丈夫」とも限らない

噛む力が低下した人に対して、

「それなら細かく刻めばいい」

と思うこともあるかもしれません。

しかし、食形態は単純に細かくすればよいとは限りません。

細かく刻んでも、生のリンゴそのものの固さがなくなるわけではありません。

また、その人の口腔機能や嚥下機能によっては、細かくばらけた食べ物を口の中でまとめて飲み込むことが難しい場合もあります。

「刻み食=安全食」と決めつけず、その人の状態に合わせて食形態を考えることが大切です。

義歯を使っている場合も食べ方を確認

高齢者の食事を考えるときには、歯や義歯の状態も重要です。

義歯が入っているからといって、必ずしもすべての食材を問題なく噛めるとは限りません。

義歯が合っているか。

食事中にずれていないか。

痛みがないか。

実際に食材を十分に噛めているか。

こうした点も確認する必要があります。

リンゴのような固さのある食材では、本人がどのように噛んでいるのかを見ることも重要です。

噛めることと安全に飲み込めることは同じではない

食事では「噛む」ことに目が向きがちですが、その後には「飲み込む」という動作があります。

口の中で食べ物を細かくできても、安全に飲み込めなければ誤嚥や窒息につながる可能性があります。

食事中に、

  • 頻繁にむせる
  • 飲み込みに時間がかかる
  • 口の中に食べ物が残る
  • 食事中や食後に声の状態が変わる
  • 食べると極端に疲れる

などの変化がある場合には、「年だから仕方ない」と自己判断せず、医師や歯科医師、言語聴覚士など適切な専門職への相談を検討することが大切です。

加熱して柔らかくするという方法もある

生のリンゴが固くて食べにくい場合には、加熱して柔らかくする方法があります。

煮る。

蒸す。

電子レンジなどで加熱する。

調理によって固さを変えることで、噛みやすくできる場合があります。

ただし、「加熱したから誰にでも安全」という意味ではありません。

どの程度の柔らかさやまとまりが適しているかは、その人の摂食・嚥下機能によって異なります。

すでに嚥下調整食などの指示を受けている場合には、その指示に合った形態で提供することが重要です。

一口量も窒息予防では重要

食材の固さだけでなく、一度に口へ入れる量にも注意が必要です。

消費者庁は高齢者の窒息事故防止について、一口の量を無理なく食べられる量にし、ゆっくりよく噛んで飲み込むよう注意を呼びかけています。

介助が必要な場合には、本人がまだ飲み込んでいない状態で次々に食べ物を口へ運ばないことも大切です。

本人のペースに合わせ、一口ずつ確認しながら進めます。

食事中の姿勢にも注意する

安全に食べるためには、食事中の姿勢も重要です。

厚生労働省の医療安全資料でも、窒息事故の防止策として、安全な食事姿勢や、その人の状態・嚥下能力に応じた食事介助が示されています。

身体が大きく傾いている。

首が不自然に反っている。

ベッド上で十分な姿勢を取れない。

こうした場合には、その人に適した姿勢を整える必要があります。

食材だけを変更するのではなく、食べる環境まで含めて考えることが重要です。

食事中は「いつもと違う」を見逃さない

昨日まで問題なく食べていたものでも、今日も同じように食べられるとは限りません。

体調が悪い。

強い眠気がある。

食事に集中できない。

いつもよりむせる。

飲み込みに時間がかかる。

こうした変化があるときには、普段通りの食事を無理に続けないことも大切です。

特に食事介助では、「いつも食べているから大丈夫」ではなく、その日の状態を見る必要があります。

乳幼児と高齢者は「同じ」ではない

ここまで読むと、これまでの記事で紹介してきた乳幼児の窒息対策と似ている部分があることに気付くかもしれません。

食形態。

一口量。

姿勢。

飲み込みの確認。

見守り。

確かに共通する安全対策はあります。

しかし、乳幼児と高齢者を同じものとして考えるのは適切ではありません。

乳幼児は、食べる機能をこれから獲得していく発達の途中にあります。

一方、高齢者では、加齢や疾患などによって、それまで持っていた噛む力や飲み込む力が低下することがあります。

同じ「食べにくい」という状態に見えても、その背景は異なります。

だからこそ、それぞれの発達や身体機能に合わせて食形態を考える必要があります。

栄養士・介護福祉士として感じる「食形態」の大切さ

私は栄養士として、病院厨房で常食からミキサー食までさまざまな食形態に関わってきました。

また、介護福祉士として高齢者の食事にも関わり、現在は子育て支援員として0歳児の離乳食介助もしています。

高齢者と0歳児では、食べる機能が十分でない理由は違います。

でも、どちらの食事にも共通しているのは、

「食材に人を合わせる」のではなく、「その人の食べる力に食事を合わせる」ということです。

同じリンゴでも、生で食べられる人もいれば、加熱して柔らかくしたほうが食べやすい人もいます。

さらに別の食形態への調整が必要な人もいます。

「リンゴだからこの切り方」と決めるのではなく、誰が食べるのかを見ることが大切です。

高齢者にリンゴを提供するとき確認したいこと

  • 生のリンゴを十分に噛めるか
  • 飲み込みに問題がないか
  • 義歯や歯の状態に問題がないか
  • その人に適した食形態になっているか
  • 一口量が多すぎないか
  • 食事姿勢が安定しているか
  • 本人のペースで食べられているか
  • 口の中に食べ物が残っていないか
  • むせなど普段と違う様子がないか
  • 必要に応じて専門職と食形態を検討しているか

高齢者だから一律に生のリンゴを避けるのではなく、本人の状態を確認することが重要です。

まとめ|生のリンゴが安全かは「年齢」ではなく食べる力を見る

高齢になると、口の中や喉の機能に変化が生じ、噛む力や飲み込む力が弱くなることがあります。

そのため、生のリンゴのような固さのある食材では、その人が安全に処理できる状態なのかを確認することが大切です。

ただし、「高齢者=生リンゴ禁止」ではありません。

年齢だけではなく、歯や義歯の状態、噛む力、飲み込む力、姿勢、一口量、その日の体調などを見ながら、その人に適した食形態を選びます。

必要であれば、加熱して柔らかくすることも方法のひとつです。

そして、すでに嚥下機能の低下がある場合には、医師や歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの専門職と連携して、その人に適した食形態を検討することが重要です。

「何歳だから食べられる・食べられない」ではなく、「この人は今、この形で安全に食べられるか」。

乳幼児とは理由こそ違いますが、高齢者の食事でも、この視点が窒息事故を防ぐために欠かせません。

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