2026年10月4日放送の「健康カプセル!ゲンキの時間」では、秋に注意したい食中毒のひとつとして、ツブ貝によるテトラミン食中毒が紹介されました。
ツブ貝というと、お刺身や煮付け、酒のつまみとして人気のある貝ですが、種類によっては「唾液腺」と呼ばれる部分にテトラミンという自然毒を持っています。
しかも、このテトラミンは通常の加熱調理では毒性が失われません。
そのため、
「しっかり茹でれば大丈夫」
「煮付けにすれば毒はなくなる」
とは限らないのです。
今回は、ツブ貝で食中毒が起こる理由やテトラミンの症状、正しい下処理について分かりやすく解説します。
ツブ貝で食中毒になるのはなぜ?
ツブ貝による食中毒の原因のひとつが、テトラミンです。
厚生労働省によると、エゾバイ科エゾボラ属の巻貝などには、唾液腺にテトラミンが含まれています。
有毒種には、
- ムカシエゾボラ
- ヒメエゾボラ
- エゾボラモドキ
- ヒメエゾボラモドキ
などがあり、これらは「ツブ」や「ツブ貝」として販売されることがあります。
つまり、ツブ貝そのもの全部が危険なのではなく、一部の巻貝の特定部位に自然毒が含まれていることが問題です。
テトラミンはどこにある?
テトラミンが含まれているのは、主に唾液腺です。
巻貝の身を取り出すと、頭部付近に唾液腺があります。
この部分を取り除かずに調理・摂取すると、テトラミンによる食中毒を起こす可能性があります。
そのため、一部のツブ貝を家庭で調理するときは、食べる前に唾液腺を正しく取り除くことが重要です。
ツブ貝の食中毒ではどんな症状が出る?
厚生労働省によると、テトラミン中毒では食後30分~1時間ほどで症状が出ることがあります。
主な症状は、
- 激しい頭痛
- めまい
- 船酔いのような感覚
- 酩酊感
- 足のふらつき
- 眼の奥の痛み
- 眼のちらつき
- 吐き気
などです。
厚生労働省では、通常は数時間で回復し、死亡例はないとしています。
ただし、症状が強い場合や、意識状態がおかしい、強い嘔吐が続くなどの場合は医療機関へ相談しましょう。
「酔っぱらったような症状」が特徴
テトラミン中毒の特徴のひとつが、酔っぱらったような症状です。
厚生労働省によると、原因となる巻貝は地域によって「酔い貝」と呼ばれることもあります。
さらに、ヒメエゾボラは眠気を起こすことから「ネムリツブ」と呼ばれることもあります。
酒のつまみとして食べる機会も多いため、
「お酒に酔っただけだと思ったら、実はテトラミン中毒だった」
ということも起こり得ます。
テトラミンは加熱すれば大丈夫?
ここは非常に重要です。
テトラミンは通常の加熱調理では毒性が失われません。
厚生労働省によると、テトラミンは水溶性で、加熱に対して安定しています。
そのため、
- 茹でる
- 焼く
- 煮る
といった一般的な調理をしても、それだけでは十分な対策になりません。
細菌性食中毒のように「中心までしっかり加熱すればOK」と考えないようにしましょう。
加熱するとテトラミンが身や煮汁に移ることも
さらに注意したいのが、加熱することで唾液腺に含まれていたテトラミンの一部が、筋肉や内臓、煮汁へ移ることがあるという点です。
そのため、
「とりあえず丸ごと茹でてから唾液腺を取ればいい」
と考えるのもおすすめできません。
種類や調理方法に応じて、適切な下処理をしてから調理することが大切です。
正しい下処理は「唾液腺を取り除く」
テトラミン食中毒を防ぐ基本は、有毒部位である唾液腺を除去することです。
家庭で生のツブ貝を調理する場合は、まずその貝がどの種類なのか、唾液腺除去が必要な種類なのかを確認しましょう。
販売店で処理方法を確認できる場合は、店員さんに聞くのも安心です。
自分で処理する場合は、自治体や公的機関が公開している下処理方法を参考にしてください。
「ツブ貝」という名前だけでは種類が分からない
少しややこしいのが、「ツブ貝」という名前です。
ツブ貝はひとつの生物の正式名称ではなく、食用にされる複数の巻貝をまとめて呼ぶことがあります。
そのため、
「ツブ貝だから全部同じ下処理でいい」
とは限りません。
厚生労働省も、テトラミンを持つ複数の巻貝を「ツブ」「ツブ貝」として市販されていると紹介しています。
家庭で殻付きのものを調理するときは、種類を確認できない場合に自己判断で処理しないことも大切です。
スーパーでむき身を買う場合は?
スーパーなどで販売されている下処理済みのツブ貝は、一般的には販売側で必要な処理が行われているものがあります。
ただし、商品によって状態は異なります。
パッケージに、
- 加熱用
- 生食用
- 下処理済み
- 要加熱
などの表示があれば、その表示に従って調理しましょう。
不明な場合は販売店に確認するのが安心です。
自分で採った貝は特に注意
海で採取した巻貝を食べる場合は、さらに注意が必要です。
見た目だけで種類を判断するのは簡単ではありません。
また、巻貝にはテトラミン以外にも、種類によって別の自然毒を持つものがあります。
例えば一部の肉食性巻貝では、フグ毒として知られるテトロドトキシンを持つものもあります。
そのため、
「ツブっぽいから食べられるだろう」
と自己判断するのは危険です。
ツブ貝の食中毒は細菌ではない
ツブ貝のテトラミン中毒は、細菌やウイルスが原因ではありません。
貝がもともと持っている自然毒による食中毒です。
そのため、
- 新鮮だから大丈夫
- 腐っていないから大丈夫
- きれいに洗ったから大丈夫
- 加熱したから大丈夫
とは言えません。
新鮮な状態でも、有毒部位を食べれば中毒を起こす可能性があります。
元品質管理として見る「加熱万能説」の危険
私は以前、飲料メーカーの品質管理部門で微生物検査などに携わっていました。
食品衛生の話をすると、どうしても、
「とにかく加熱すれば安全」
というイメージを持たれやすいと感じます。
もちろん、細菌やウイルスによる食中毒では、適切な加熱が非常に重要です。
しかし、食中毒の原因には、
- 自然毒
- 細菌が作った熱に強い毒素
- ヒスタミン
など、加熱では十分に防げないものもあります。
テトラミンもそのひとつです。
だからこそ、食中毒予防では「何が原因なのか」を知り、その原因に合った対策を取ることが大切です。
ツブ貝を家庭で食べるときの注意点
家庭でツブ貝を調理するときは、次の点を意識しましょう。
- 何という種類の貝なのか確認する
- 唾液腺除去が必要な種類か確認する
- 必要な場合は調理前に唾液腺を正しく取り除く
- 「加熱すれば毒が消える」と思わない
- 処理方法が分からない場合は自己判断しない
- 販売店や自治体などの公的情報を確認する
- 種類不明の巻貝を採って食べない
ツブ貝は適切に処理すればおいしく楽しめる食材です。
だからこそ、「どこを食べてはいけないのか」を知っておくことが重要です。
もし食べたあとにめまいやふらつきが出たら?
ツブ貝を食べた後、短時間で、
- 激しい頭痛
- めまい
- ふらつき
- 眼のちらつき
- 吐き気
などが現れた場合は、テトラミン中毒の可能性も考えられます。
「お酒に酔っただけ」と決めつけず、強い症状がある場合は医療機関へ相談してください。
受診する際には、
「ツブ貝を食べた」
ことを伝えると、診断の手がかりになります。
まとめ
今回は、「健康カプセル!ゲンキの時間」でも紹介されたツブ貝のテトラミン食中毒についてまとめました。
- 一部のツブ貝には自然毒テトラミンが含まれる
- テトラミンがあるのは主に唾液腺
- 食後30分~1時間ほどで症状が出ることがある
- 頭痛、めまい、ふらつき、眼のちらつき、吐き気などが特徴
- 酔っぱらったような症状が出ることもある
- テトラミンは通常の加熱では毒性が失われない
- 加熱によって毒が身や煮汁に移ることもある
- 基本的な予防方法は有毒部位である唾液腺を除去すること
- 「ツブ貝」は複数の巻貝を指すため種類確認も重要
- 種類不明の巻貝を自己判断で食べない
テトラミン食中毒は、鮮度や加熱不足が原因ではありません。
「毒のある部位を食べない」ことが最も重要な予防方法です。
秋の食中毒については、チャーハン症候群とセレウス菌、サバ・サンマのヒスタミン食中毒、ツキヨタケなどの食べ間違いについても別記事で詳しく解説しています。

コメント