食中毒の原因菌はどうやって調べる?患者・食品・調理施設の検査を解説

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複数の人が同じ食品を食べたあと、下痢や腹痛、嘔吐、発熱などを発症した。

このような食中毒が疑われる事例が発生したとき、「原因菌はどうやって調べるの?」と気になる人もいるのではないでしょうか。

2026年9月には、岩手県内のイベントで販売されたカバブロールを食べた21人が、下痢や腹痛、発熱などを訴える食中毒が発生しました。

盛岡市保健所はカバブロールを原因食品とする食中毒と判断していますが、現時点で確認できる公表・報道情報では、具体的な原因菌などの原因物質は明らかになっていません。

実は食中毒調査では、食品だけを検査して原因を決めるわけではありません。

患者への聞き取り、発症までの時間、患者の便などの検査、食品や原材料の検査、調理施設の調査など、さまざまな情報を組み合わせて原因を追っていきます。

食中毒の調査は「連絡・届出」から始まる

食中毒が疑われる事例は、医師からの届出や患者、施設関係者などからの連絡によって保健所が把握することがあります。

厚生労働省の食中毒調査マニュアルでは、食中毒の疑いがある患者の発生を把握した場合、症状や発症時刻、食中毒の原因として疑われるもの、検査状況などを確認することが示されています。

集団で似た症状が出ている場合には、同じ食品や施設が関係していないかを調べることになります。

まず患者に「何を食べたか」を聞き取る

原因食品を探すうえで非常に重要なのが、患者への聞き取りです。

食中毒が疑われる場合、患者が発症前に何を食べていたのかを調査します。

確認するのは、直前の一食だけとは限りません。

原因によって食べてから症状が出るまでの潜伏期間が異なるため、必要な期間までさかのぼって食事内容を確認します。

  • 何を食べたのか
  • いつ食べたのか
  • どこで食べたのか
  • いつ症状が出たのか
  • どのような症状だったのか
  • 同じものを食べた人にも症状があるか

こうした情報を集めることで、複数の患者に共通する食品を探していきます。

食べた人と食べなかった人を比較することもある

集団食中毒では、「症状が出た人」だけを見るとは限りません。

同じ集団の中で、その料理を食べた人と食べなかった人の発症状況を比較することで、原因食品を絞り込むことがあります。

たとえば複数の料理が提供された会食で、特定の料理を食べた人に発症が集中していれば、その料理が原因食品を探る重要な手掛かりになります。

こうした疫学的な調査と検査結果を組み合わせて判断していきます。

患者の便・吐物・血液などを検査する

原因物質を調べるためには、患者から採取した検体も重要です。

状況に応じて、便、吐物、血液などが検査対象になります。

主な検体・調査対象調べる目的
患者の便食中毒菌やウイルスなどの原因物質を調べる
吐物原因物質を調べる材料のひとつ
血液など必要に応じて原因の特定に利用する
食品原因物質による汚染がないか調べる
原材料食品がどの段階で汚染された可能性があるか調べる
器具・設備など施設内の汚染状況を調べる

患者から特定の食中毒菌などが検出されれば、原因を考えるうえで非常に重要な情報になります。

食べ残しや保存されている食品も重要な検体

食中毒が起きたとき、原因と疑われる食品が残っていれば、その食品を検査できる場合があります。

食べ残しだけでなく、同じ食品、使用した原材料などが検査対象になることもあります。

患者から検出された原因物質と食品から検出されたものが一致すれば、原因食品や汚染経路を考える重要な手掛かりになります。

一方、イベントや飲食店で提供された食品は、食中毒が判明するころにはすでに残っていない場合もあります。

原因食品が残っていなければ、同じ食品そのものを検査することが難しくなる場合があります。

包丁・まな板・設備などを調べることもある

調査対象になるのは患者や食品だけではありません。

厚生労働省の食中毒処理要領では、原因として疑われる施設の器具や設備、トイレなどの拭き取り検体も検査材料として挙げられています。

たとえば、調理器具や設備などから原因となる微生物が検出されれば、施設内の汚染状況や汚染経路を考える材料になります。

調理施設では、食材がどのように保管されていたか、どのように調理されたか、加熱後にどのように扱われたかなども確認されます。

調理従事者の健康状態も確認される

食品を扱った人についても調査が行われることがあります。

食中毒の原因によっては、調理従事者が病原体を保有し、食品を介して広がるケースも考えられるからです。

体調不良の有無や健康状態などを確認し、必要に応じて検便などが行われる場合もあります。

食品、患者、調理従事者、施設などをそれぞれ調べることで、どこから原因物質が入り、どのように食品へ広がったのかを追っていきます。

原因菌の検査には複数の方法がある

食中毒の原因物質を調べる方法はひとつではありません。

疑われる原因によって、培養などによる微生物学的検査、血清学的検査、理化学的検査など、必要な方法が選ばれます。

細菌性食中毒では、検体から細菌を検出・分離して調べることがあります。

一方、ウイルスや毒素、化学物質などが疑われる場合には、それぞれに適した検査方法が必要です。

食中毒=すべて同じ検査をするわけではなく、症状や潜伏期間、患者の発生状況などから疑われる原因に応じて調査が進められます。

検査で菌が出なかったら食中毒ではない?

原因となる細菌などが検査で検出されなかったからといって、それだけで食中毒ではなかったと判断できるわけではありません。

検査を行うタイミングや検体の状態などによって、原因物質を検出できない場合があります。

厚生労働省の食中毒処理要領でも、細菌性食中毒が疑われる患者がすでに抗菌薬の投与を受けている場合、検査結果が陰性になる場合があるため注意が必要とされています。

また、原因食品がすでに残っていなければ、その食品を直接検査することもできません。

だからこそ、食中毒の判断では検査結果だけではなく、患者の発症状況や食事内容などの疫学的な情報も重要になります。

「原因食品」と「原因物質」は別々に判明することがある

食中毒のニュースを見ると、「原因となった料理は判明しているのに、原因菌は調査中」というケースがあります。

これは不思議なことではありません。

複数の患者への聞き取りによって、全員に共通する食品がひとつに絞られれば、原因食品を疫学的に推定できる場合があります。

一方、その食品で何が食中毒を引き起こしたのかを確認するには、患者や食品などの検査が必要になります。

そのため、原因食品が先に判明し、原因物質の特定が後になることがあります。

盛岡のカバブロール食中毒も現在はこの段階

2026年9月に岩手県内のイベントで発生した食中毒では、カバブロールを食べた21人が下痢、腹痛、発熱などを訴えました。

患者に共通する食品が、この店が提供したそうざい品だったことなどから、盛岡市保健所は食中毒と判断しています。

つまり、「原因食品」の部分はカバブロールまで絞り込まれています。

一方、2026年9月18日時点で確認できる公表・報道情報では、具体的な原因菌やウイルスなどの「原因物質」はまだ公表されていません。

今後検査結果などが公表されれば、原因物質や発生経路について、さらに詳しい情報が明らかになる可能性があります。

まとめ

食中毒の原因を調べるときには、患者の便や食品を検査するだけではありません。

患者が何を食べたのか、いつ症状が出たのかを調べる疫学調査に加え、便や吐物などの患者検体、食品や原材料、調理器具や設備など、さまざまな情報を集めます。

そして、検査結果と患者の発症状況などを総合して、原因食品や原因物質、汚染経路を判断していきます。

原因食品が先に判明しても、原因菌などの特定にはさらに時間がかかることがあります。

盛岡のカバブロール食中毒についても、今後、原因物質に関する検査結果が公表されるか注目されます。

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