2026年9月23日、徳島県と鳥取県で、ウェルシュ菌による食中毒が相次いで公表されました。
徳島県では、徳島刑務所の炊事工場と、介護施設向けの食事を提供した食品製造施設に関連する2件の食中毒が発表されています。
一方、鳥取県倉吉市では、飲食店が提供した料理を食べた122人のうち19人が腹痛や下痢などを発症しました。
いずれも原因菌はウェルシュ菌ですが、施設の種類や食事の提供状況は異なります。
今回は、2026年9月に公表された3件の事例を比較しながら、ウェルシュ菌食中毒で共通して注意したいポイントを整理します。
2026年9月に公表されたウェルシュ菌食中毒3件
今回比較するのは、徳島県の2件と鳥取県の1件です。
| 事例 | 食事を食べた人数 | 有症者数 | 確認された原因菌 |
|---|---|---|---|
| 徳島刑務所の炊事工場 | 384人 | 18人 | ウェルシュ菌 |
| 徳島市の介護施設2か所に提供された食事 | 66人 | 29人 | ウェルシュ菌 |
| 鳥取県倉吉市の飲食店 | 122人 | 19人 | ウェルシュ菌 |
徳島県の2件は、県が9月23日に公式発表したものです。鳥取県倉吉市の事例も、同日に報道されています。
ただし、同じ日に公表されたからといって、食中毒が同じ日に発生したわけではありません。
また、3件の間に関連があると発表されているわけでもありません。
① 徳島刑務所では384人中18人が発症
徳島県の公式発表によると、徳島刑務所の炊事工場で調理された食事を食べた384人のうち、18人が下痢や腹痛などを訴えました。
原因菌はウェルシュ菌です。
徳島保健所は、刑務所内の炊事工場を9月23日から26日までの4日間、営業停止処分としました。
刑務所では多くの人に食事を提供するため、ひとつの調理施設で問題が起きると、複数の人に影響が及ぶ可能性があります。
ただし、今回の刑務所の事例で、具体的にどの調理工程に問題があったのかについては、確認された事実と一般的な衛生上の注意点を分けて考える必要があります。
② 徳島市の介護施設2か所では29人が発症
徳島県が同じ9月23日に発表したもう1件は、介護施設向けの食事に関連するウェルシュ菌食中毒です。
県の公式発表によると、原因施設は徳島市の食品製造施設「有限会社エイブルフーズ」です。
9月16日に調理・提供された昼食を食べた66人のうち、29人が下痢や腹痛などを訴えました。
この食事は、徳島市内の介護施設2か所に提供されていました。
原因菌はウェルシュ菌で、徳島保健所は原因施設を営業停止処分としています。
ここで重要なのは、介護施設2か所で症状が出たことと、原因施設が2か所あったことは同じではないという点です。
今回、徳島県が原因施設として公表しているのは、食事を調理・提供した食品製造施設です。
③ 鳥取県倉吉市では122人中19人が発症
鳥取県倉吉市の事例は、飲食店が提供した料理による食中毒です。
2026年9月23日付の山陰放送の報道によると、倉吉市西倉吉町の飲食店が9月19日午後5時から午後8時50分に提供した料理を食べた122人のうち、10~30代の男女19人が発症しました。
主な症状は腹痛や下痢です。
検便を受けた患者6人の便からウェルシュ菌が検出され、倉吉保健所は飲食店の料理を原因とする食中毒と判断しました。
飲食店は9月22日から25日までの4日間、営業停止処分となっています。
なお、今回の倉吉市の事例について、具体的な原因料理は確認できていません。
3件に共通するのは「ウェルシュ菌」
3件の事例に共通しているのは、食中毒の原因菌がウェルシュ菌だったことです。
ウェルシュ菌は、土壌や人・動物の腸管など、自然界に広く存在する細菌です。
熱に強い「芽胞」を形成し、酸素の少ない環境で増殖しやすいという特徴があります。
食品中で大量に増殖した菌を食べると、腸管内で毒素が作られ、腹痛や下痢などの症状を引き起こします。
ウェルシュ菌食中毒は、1件あたりの患者数が多くなることがあるため、多くの人に食事を提供する施設では特に注意が必要です。
原因料理や汚染経路まで同じとは限らない
徳島と鳥取で同じ時期にウェルシュ菌食中毒が発生したからといって、原因料理や汚染経路まで共通しているとは限りません。
徳島県の公式発表では、介護施設向けの事例について、9月16日に原因施設が調理・提供した昼食が原因食品とされています。
一方、倉吉市の事例では、飲食店が提供した料理による食中毒と判断されていますが、具体的な料理名は確認できていません。
ウェルシュ菌食中毒では、カレーやシチュー、煮物などの大量調理食品が原因になることがあります。
しかし、一般的に原因になりやすい料理を、今回の3件すべての原因料理として扱うことはできません。
同じ原因菌でも、それぞれの事例で確認された事実は別々に整理する必要があります。
なぜウェルシュ菌は大量調理で注意が必要なの?
ウェルシュ菌が大量調理で注意される理由のひとつは、加熱後の食品が冷める過程で増殖する場合があるためです。
ウェルシュ菌の芽胞は熱に強く、通常の加熱調理後も生き残ることがあります。
その後、食品がゆっくり冷めて増殖に適した温度になると、芽胞から通常の菌体へ戻り、増殖する可能性があります。
大きな鍋で大量に作った料理は、中心部まで冷めるのに時間がかかります。
また、食品の内部は酸素が少ない状態になりやすく、ウェルシュ菌が増殖しやすい条件が重なることがあります。
ただし、今回の3件すべてで冷却不足が原因だったと確認されているわけではありません。
徳島県が呼びかけるウェルシュ菌食中毒の予防策
徳島県は、9月23日の食中毒発表にあわせて、ウェルシュ菌食中毒の予防方法を示しています。
- 調理した食品は速やかに食べる
- 加熱調理した食品を冷却する場合は、速やかに冷やす
- 保存する場合は、10℃以下または55℃以上で管理する
- 再加熱する場合は十分に加熱し、早めに食べる
- 前日調理を避け、調理後は室温で放置しない
これらは、食品中でウェルシュ菌を増やさないための基本的な対策です。
特に大量調理では、加熱後の冷却と保存温度の管理が重要になります。
刑務所・介護施設・飲食店で共通する衛生管理
刑務所の炊事工場、介護施設向けの食品製造施設、飲食店では、食事を提供する相手や提供方法が異なります。
それでも、調理した食品を安全に提供するための基本は共通しています。
加熱した食品をすぐに提供できない場合には、菌が増殖しやすい温度帯に長く置かないことが重要です。
冷却する場合は、食品の量や容器の深さに応じて小分けするなど、速やかに温度を下げる方法を考える必要があります。
また、冷却した食品は適切な温度で保存し、再加熱する場合は中心部まで十分に加熱します。
食品の安全性は、加熱した瞬間だけで決まるものではありません。
調理から提供までの工程を通して管理することが大切です。
給食・大量調理の経験から考える「冷却」の重要性
私はこれまで、栄養士としての給食業務や食品製造、飲料メーカーの品質管理部門での微生物検査に関わってきました。
大量調理では、料理を決められた時間に仕上げることと、食べるまで安全な状態に保つことの両方が求められます。
ウェルシュ菌のように耐熱性の芽胞を形成する細菌では、「加熱したから大丈夫」という考え方だけでは十分ではありません。
調理後に食品を保存する場合、いつ冷却を始め、どのくらいの時間で適切な温度まで下げられたのか。
さらに、保存中や提供前の温度が適切だったのか。
こうした工程を確認できることが、食中毒予防につながります。
今回の3件についても、個別の調理工程を推測するのではなく、確認された事実を踏まえて予防の基本を見直すことが重要です。
2026年9月に食中毒が相次いだのはなぜ?
同じ時期にウェルシュ菌食中毒が複数公表されると、「今年は特に増えているのでは?」と気になるかもしれません。
厚生労働省は、ウェルシュ菌食中毒について、夏の7~9月に多く発生すると紹介しています。
ただし、今回の3件だけで、2026年9月の全国的な発生件数が例年より多いと判断することはできません。
また、3件の発生に共通する気象条件や調理上の問題があったと確認されているわけでもありません。
「同じ時期に複数の事例が公表されたこと」と、「全国的に食中毒が増加していること」は、分けて考える必要があります。
まとめ|3件は別の事例、予防の基本には共通点がある
2026年9月23日、徳島県と鳥取県で、ウェルシュ菌による食中毒が相次いで公表されました。
徳島刑務所では384人中18人、徳島市の介護施設2か所に提供された食事では66人中29人、鳥取県倉吉市の飲食店では122人中19人が発症しています。
3件はそれぞれ別の食中毒事例であり、原因料理や汚染経路が同じだったと確認されているわけではありません。
一方、ウェルシュ菌の一般的な予防策には共通する基本があります。
- 調理した食品は、できるだけ速やかに食べる
- 保存する場合は、小分けして速やかに冷却する
- 食品を室温で長時間放置しない
- 保存中は適切な温度を維持する
- 再加熱する場合は十分に加熱し、早めに食べる
ウェルシュ菌食中毒の予防では、「加熱した後に菌を増やさないこと」が重要です。
刑務所や介護施設向けの食事、飲食店、そして家庭でも、調理後の冷却と保存を見直すきっかけにしたいですね。


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