こんにちは、tekowaです。
今日のブログはアレルギー、特に食物アレルギーについてです。
今回書こうと思ったきっかけはこちらのTwitter記事です。
アレルギーのある子どもさんがおせんべいを食べたら、一口で唇と舌が痛い、目の回りに粉をふく、眠い、吐くなどと次々症状があらわれたそうです。
また、原材料にも表記が無かったようです…
私も保育園でアレルギーの子の食事対応をしていますので、アレルギーの怖さはよくわかっているつもりです。
皆さんにも食物アレルギーがなぜ怖いのか、注意喚起をする意味でも今回ブログにしました。
アレルギーとは
私たちの体には、細菌・ウィルス・寄生虫などの感染性微生物や異物などから、身を守るための「免疫」という仕組みが備わっています。この免疫の働きが、現代文明による環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」です。
つまり、本来は私達の体を守ってくれる「免疫」が逆に攻撃してしまう状態なのです。
アレルギー疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)、薬剤・昆虫アレルギーなど…症状・経過とも多様な疾患が含まれます。
小児期には、これらの疾患が、乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとし、続いて食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と次々と異なる時期に出現してくることが多く、これを「アレルギー・マーチ(atopic march)」と呼びます。近年小児のアレルギー疾患が増加する中で、この「アレルギー・マーチ」の発症、進展を予防することが重要な課題であり、そのための早期診断、早期介入の研究が進められています。
アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」といい、私たちの身のまわりには、食物、花粉、ダニなど多くのアレルゲンが存在します。このアレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、「IgE抗体」という物質が作られ、この状態を「感作」といいます。いったん感作が成立した後に、再度アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体がくっつき、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー症状を引き起こします。
正常な皮膚は、角質に守られており、異物が侵入しにくいつくりになっています。しかし、湿疹などがあり、アレルゲンが皮膚のバリアを通過して、表皮や真皮に侵入すると、免疫細胞と反応して感作が起こります。これを「経皮感作」といいます。
一方、無害なアレルゲンに対しては、制御性T細胞(Tレグ)と呼ばれるリンパ球が働き、アレルギー反応は起こりません。これを免疫学的寛容といいます。アレルギーがある人は、このシステムがうまくいっていないと考えられています。「経口免疫寛容」とは、食べたものに対して過剰なアレルギー反応を起こさないようにする仕組みのことです。
以前まで、食物アレルギーは消化管でアレルゲンが吸収され感作が成立する腸管感作が主体と考えられていました。ところが近年の研究結果から、スキンケア不足による「経皮感作」により食物アレルギーは進行し、食物アレルゲンを症状なく食べて摂取を続けることにより「経口免疫寛容」が誘導されることがわかってきました。
専門用語が多く難しいように感じますが、アレルギーがある人の中では本来無害なアレルゲンをTレグが有害と認知してしまい、過剰にアレルギー反応を起こしてしまうということなのです。また、乳幼児期に適切にスキンケアをして「経皮感作」を起こさせないのが大切ということです。
アレルギーの症状と怖さ
実際にアレルギーの症状はどのようなものがあるのでしょうか?
以下の表がわかりやすかったので載せておきます。
いずれの症状も、数分から数時間以内に急速に進むため、一刻も早く治療をする必要があります。
※特殊なアナフィラキシー:食物依存性運動誘発アナフィラキシー
ある特定の食べ物を食べたあとに運動をすると生じるアナフィラキシーです。特定の食品を摂取して30分~4時間後に運動をすると、呼吸困難やめまい、吐き気・嘔吐、じんましんなどアナフィラキシーの症状が出現します。小麦やエビ・カニなどの甲殻類が多いといわれています。症状が生じてぐったりしたり苦しくなったりした場合はアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を打って医療機関に救急搬送を要請してください。
アレルギーは予防できる!?
アレルギー疾患は、遺伝要因や環境要因などが関与していると言われていますが、様々な原因や悪化因子があり、また年齢や個々の患者さんによってそれぞれ異なるため、予防法が確立していませんでした。しかし、発症のメカニズムや悪化原因などの解明が進み、少しずつ分かってきたこともあります。
アトピー性皮膚炎の予防
成育出生コホート研究におけるランダム化臨床研究介入試験で、新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することが分かりました。
皮膚のバリア機能が障害された状態で、早期に十分な対応がなされず皮疹の改善が遅れると、食物アレルゲンの皮膚感作が進行します。スキンケアを徹底して行い、皮膚バリア機能を改善し、新たな皮膚感作を起こさないようにしましょう。
食物アレルギーの予防
アトピー性皮膚炎のある乳児に対しその湿疹をしっかり治療しながら加熱鶏卵を少量ずつ経口摂取させることで、卵アレルギーの発症を減少させることができることがわかりました。
妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されています。さらに母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されていません。乳児に対して特定の食物の摂取開始時期を遅らせることも、発症リスクを低下させることにはつながらず、推奨されていません。
離乳食の開始時期を遅らせたり、予防的に除去したりすることは、経口免疫寛容の誘導する機会を失うことにつながり、結果的に食物アレルギーの感作を進行させてしまいます。自己判断や血液検査の結果のみを根拠とした食物除去は行わず、医師による正しい診断に基づいて、最小限の食事制限を心がけましょう。
気管支喘息の予防
日常生活におけるポイントとしては、乳児期に風邪の代表的な原因ウイルスである、RSウイルスやライノウイルスといったウイルス感染をくり返すと喘息を発症しやすくなるといわれています。そのため、手洗いなどを行い、ウイルス感染症を予防することが大切となります。
2歳までに抗菌薬を使用したことがある児は、5歳時の気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患のリスクが高まることが分かりました。一般的な風邪のほとんどはウイルス感染であり、抗菌薬は効果がないことからも、不要な抗菌薬の使用は避ける必要があります。
また、アレルギーの原因となるアレルゲンが、乳児期から幼児期にかけて、食物からダニやハウスダストなどに変化していくとされています。そのため、ダニ対策を中心とした環境整備を行うことが、発症予防につながる可能性があります。自動車の排気ガスなどに含まれる大気汚染物質も、その後の喘息発症のリスクとなることが分かっており、発症を防ぐためにはこれらの対策も大切です。
さらに、アトピー性皮膚炎を発症している場合は、皮膚を炎症がない状態に保つことで皮膚から体内にダニやハウスダストなどの吸入アレルゲンが進入するのを防ぎ、喘息の発症予防につながる可能性があるとされています。
もし目の前で誤食・症状が出たときの対応
先程も述べたとおりアレルギーは命に関わる場合があります。
無いに越したことはありませんが、もしアレルギーのある方が誤食してしまった場合、私達はどうしたらいいのでしょうか?
具体的な治療はアナフィラキシーの重症度によって異なります。症状が軽い場合には、症状に合わせた治療を行います。じんましんに対しては抗アレルギー薬の内服、咳症状に対しては気管支拡張薬の吸入などです。しかし、症状が重篤で(重症に該当する場合)、急激に悪くなる場合には、アドレナリンの筋肉注射が最優先になります。
アナフィラキシーを疑った場合には、全身の状態をよく確認します。だんだん元気がなくなっていくように見える意識障害などが認められる場合には、呼吸や心拍がゆっくりになっていっていないかどうか、皮膚の色が赤くなってきていないかどうかなどの状態を確認しながら、必要に応じて一次救命措置を行い、医療機関への搬送を急ぎます。そのうえで、足を頭より高く上げた体位で寝かせます。また、嘔吐してしまう場合に備えて、顔を横向きにしてください。
アナフィラキシーになったことがある患者さんはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方を受けることができます。強いアレルギー反応があらわれたのではないかと思ったらアドレナリン自己注射薬を処方されている人は使用してから受診します(使用法は製薬会社のホームページで閲覧できます https://www.epipen.jp/top.html)。アドレナリン自己注射薬は自宅で自分に注射をするため、誤って使用すると危険です。アドレナリン自己注射薬を処方された場合は、どのような状況のときに使用したらよいのか、また、どのように使用するのかについて医師や薬剤師に確認し、適切に使用できるように準備が必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
身近な方が重篤なアレルギー症状を起こしたときには是非参考にしていただければと思います。
- 免疫の働きが、現代文明による環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」
- アレルギー疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)、薬剤・昆虫アレルギーなどがある
- 乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとし、続いて食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と次々と異なる時期に出現してくることが多く、これを「アレルギー・マーチ(atopic march)」と呼ぶ
- アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」という。
- アレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、「IgE抗体」という物質が作られ、この状態を「感作」という。
- いったん感作が成立した後に、再度アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体がくっつき、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー症状を引き起こす。
- アレルギーがある人の中では本来無害なアレルゲンをTレグが有害と認知してしまい、過剰にアレルギー反応を起こしてしまう
- 乳幼児期に適切にスキンケアをして「経皮感作」を起こさせないのが大切
- 上記の表のようにアレルギーは命を落とす危険性がある場合がある。
- アレルギー疾患は、遺伝要因や環境要因などが関与していると言われていますが、様々な原因や悪化因子があり、また年齢や個々の患者さんによってそれぞれ異なるため、予防法が確立していなかったが、発症のメカニズムや悪化原因などの解明が進み、少しずつ分かってきたこともある
- アレルギーのある方が誤食してしまったら、アナフィラキシーガイドラインに沿って対応する。
引用一覧:
国立研究開発法人国立成育医療研究センターホームページ
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