
11月1日の「計量記念日」。この日は、食卓にも深く関わる日でもあります。
なぜなら、料理に欠かせない“調味料”こそ、計量が最も大切な世界だからです。
塩、砂糖、しょうゆ、みそ、油──これらは味だけでなく、健康を左右する要素。
たった1さじの違いが、1日の塩分摂取量やカロリーを大きく変えるのです。
今回は、整活の視点から「調味料をはかる」ことの大切さを、実験形式で紹介します。
◆ 「目分量の味」と「正確な味」の違いを知る
まず試してみてほしいのが、味噌汁やドレッシングなどでの「目分量」と「計量スプーンで測った分量」の比較。
同じ“おいしい”でも、目分量では塩分が1.3〜1.5倍になっていることが多いのです。
たとえば味噌汁1杯分(200ml)に使用する味噌の適量は大さじ1(約18g)。
しかし感覚で入れると20〜25gになることもあり、塩分が1g近く多くなります。
1日3食続けば、塩分は3gオーバー──これは高血圧リスクの目安とされる数値です。
つまり、「おいしい」の裏側には“正確なはかり”が隠れています。
整活的に言えば、「味を整える=体を整える」。
正しい計量が、味覚・健康・家庭の調和を作り出すのです。
◆ 実験①:しょうゆ1滴の世界
しょうゆの塩分濃度は約16%。
大さじ1(15ml)で約2.4gの塩分が含まれています。
たった小さじ1でも0.8g──この数字は健康管理では見逃せません。
だからこそ、「1滴」の重みを知ることが大切。
醤油さしを傾けて1滴垂らし、何滴で小さじ1になるかを調べる実験をすると、子どもも興味津々です。
およそ20滴=小さじ1。
こうして数字を“体感”することが、整活の始まりです。
◆ 実験②:油のカロリーをはかる
油は1g=9kcal。
大さじ1(約12g)でおよそ108kcalになります。
「少し多く入っただけ」で、揚げ物や炒め物の総カロリーが数百kcal増えることも珍しくありません。
キッチンスケールで実際に油の量を測り、「大さじ1と大さじ2の違い」を見てみると、数字が現実的に感じられます。
これを家族で共有するだけでも、“油の見直し”に繋がります。
整活ダイエットの第一歩は、調味料の計量にあります。
◆ 実験③:砂糖の“甘さの錯覚”を探る
砂糖は甘みの感じ方に個人差があり、味覚のトレーニングにも最適です。
コップ3つを用意し、それぞれに水100ml+砂糖2g・4g・6gを溶かして飲み比べ。
どの甘さが「ちょうどいい」と感じるかを家族で話し合ってみましょう。
ここで大切なのは、「甘さの慣れ」を知ること。
普段から甘味の強いお菓子や飲料を摂っていると、2gでは物足りなく感じるかもしれません。
味覚を“整える”とは、感覚をリセットすることでもあります。
◆ 実験④:塩分濃度を数値で見る
塩分計を使って、スープやお味噌汁の濃さを測るのもおすすめです。
「いつもの味が何%なのか」を数字で知ることで、減塩への意識が変わります。
健康的な味噌汁の塩分濃度は0.7〜0.9%が目安。
それ以上になると塩辛さが強まり、味覚が鈍くなります。
逆に0.6%前後の味でも、慣れれば十分おいしい。
“慣れ”こそが整活の味づくりです。
◆ 計量で「味の記録」をつける
整活式料理では、味の再現性を大切にします。
「おいしい」を偶然で終わらせず、数字として記録する。
たとえば、レシピノートに「みそ大さじ1」「砂糖小さじ1」「しょうゆ小さじ2」と書くだけで、家族の“おいしい”がいつでも再現できるようになります。
これは、味の思い出を“データ化”する行為でもあります。
祖母や母の味を引き継ぐときも、数字で残すことで世代を超えて受け継がれていくのです。
◆ 子どもと一緒に“味をはかる”
計量カップ・スプーンを子どもに持たせ、「このくらいかな?」と一緒に予想して量るだけで、遊びながら学べます。
「入れすぎた」「ちょうどだった!」という体験が、数字と味覚のつながりを深めていきます。
さらに、整活的な視点では「五感の調和」も重視。
匂い・見た目・音・触感・味を意識することで、単なる料理ではなく“整う体験”に変わります。
◆ 高齢者・介護食にも生きる計量
介護現場では、塩分・糖分・水分のコントロールが命を守ります。
たとえば、嚥下食や糖尿病食では「小さじ1の違い」が体調に直結。
介護福祉士としての経験から言えば、味が薄くても“香りや温度”を意識すれば満足度は高まります。
塩分を減らす代わりに、だしの旨味や酸味を活かす──これも整活の考え方。
数字で整え、感覚で満たすことが、健康とおいしさを両立させるコツです。
◆ “ちょうどいい”を見つける科学
「おいしい」と感じる塩分濃度は人によって違います。
日本人の舌が最も心地よく感じるのは、0.8〜1.0%前後。
しかし日常的に濃い味を摂っている人は、1.2%以上でやっと「おいしい」と感じることも。
減塩を急にすると味気なく感じますが、0.1%ずつ減らすだけで舌が順応していきます。
数字を味方につけることで、無理のない健康管理が可能になるのです。
◆ まとめ:“1さじ”の整活
調味料の“はかる”は、小さなようでいて大きな行動。
その1さじが、味を整え、体を整え、家庭の健康を守ります。
整活では、感覚と数字の両立を目指します。
“おいしい”を偶然ではなく、再現できるようにする。
それが「整った食卓」の第一歩です。
計量記念日をきっかけに、スプーン1本の重みを見つめ直してみましょう。
次回⑦では、「ダイエットと計量」をテーマに、“数字で整える食べ方”を紹介します。

コメント