
tekowaです。
秋になると、旬の根菜がぐっと甘みを増しておいしくなります。れんこん、ごぼう、さつまいも、にんじん、大根――どれも身近な食材ですが、行事食に取り入れることで、栄養価も食感もぐっと豊かになります。今回は、栄養士・介護福祉士・保育補助の視点から、秋の根菜を活かした「噛む力」「整える力」を育てるアレンジ方法を紹介します。
1. 根菜が持つ“整える力”とは
根菜類は、地中でゆっくりと栄養をためて育つ食材です。そのため、体を温める性質(陽性)を持ち、冷えやすい秋冬にぴったり。食物繊維・ミネラル・ビタミンが豊富で、腸内環境を整え、免疫力を高める働きがあります。
とくに、咀嚼力の発達や嚥下機能の維持に重要なのが「適度なかたさ」と「香り・歯ごたえ」。保育・介護どちらの現場でも、根菜は“食べる力を守る”ための心強い味方です。
2. れんこん:免疫アップと噛む力をサポート
れんこんは秋から冬にかけて旬を迎え、ビタミンCやポリフェノール(タンニン)を多く含みます。風邪予防や抗酸化に優れた食材で、粘り成分のムチンが喉や胃腸を守ります。
おすすめは「れんこんのきんぴら風」。細切りにして炒めるだけで、シャキシャキ食感が楽しく、保育園では噛む練習にもなります。介護食の場合は、すりおろしてハンバーグのつなぎに入れると柔らかく仕上がり、噛む力が弱くても安心です。
3. ごぼう:腸を整え、香りで食欲を刺激
ごぼうは食物繊維の王様ともいえる存在。不溶性・水溶性のどちらも豊富で、腸内の善玉菌を増やし、便通改善に役立ちます。また、独特の香り成分「サポニン」には抗菌・抗酸化作用があります。
おすすめは「ごぼうとにんじんのごま和え」。細くささがきにして軽く茹で、すりごまと白だしで和えるだけ。高齢者向けには、すりごまを増やしてしっとり仕上げると喉に優しくなります。
噛む刺激が必要な方には、少し厚めにカットして炒め煮に。食感が違うだけで食欲が増すこともあります。
4. さつまいも:エネルギー補給と整腸効果
秋の行事食に欠かせないのが、ホクホクのさつまいも。糖質だけでなく、ビタミンC・E・カリウム・食物繊維がバランスよく含まれています。保育園では「おいもほり」の季節に合わせて提供されることも多く、食育にも最適な食材です。
おすすめは「さつまいもとりんごのレモン煮」。砂糖控えめでも自然な甘さが楽しめ、子どもにも高齢者にも好まれます。介護施設ではペースト状にしてヨーグルトと合わせると、嚥下が楽で見た目も華やかです。
また、「さつまいもコロッケ」も人気。つぶしたさつまいもにツナや豆腐を混ぜると、糖質・たんぱく質のバランスが整い、主菜にもなります。
5. にんじん:彩りとβカロテンで免疫を支える
にんじんの鮮やかなオレンジ色は、ハロウィンや秋祭りの行事食にも映えます。βカロテンが豊富で、体内でビタミンAに変わり粘膜を守ります。目・喉・皮膚を乾燥から守るこの栄養素は、秋冬の体調管理に欠かせません。
おすすめは「にんじんのポタージュ」。豆乳で伸ばせば、乳アレルギーにも対応できます。冷めても美味しく、朝食やおやつにも向きます。保育園では食紅を使わず、自然なオレンジ色で「ハロウィンスープ」にするのも人気です。
6. 大根:消化を助ける万能根菜
大根は秋冬に甘みが増し、消化酵素ジアスターゼが豊富。揚げ物や肉料理の後に大根おろしを添えることで、胃の負担を和らげます。介護施設では「おろし和え」「とろみあんかけ」で活用されることが多く、飲み込みやすく仕上がります。
行事食では「彩り大根なます」もおすすめ。赤大根や黄大根を組み合わせると、テーブルが一気に華やかになります。酸味をマイルドにしたい場合は、みりんやはちみつを加えて調整します。
7. 行事食に取り入れるポイント
- 主菜・副菜・汁物のどこかに根菜を組み込む
- 色の組み合わせを意識して季節感を出す
- 噛む・つぶす・飲み込むを意識して調理形態を変える
- 行事名にちなんだ盛り付けを工夫する(例:お月見に見立てた丸い形)
根菜は形を変えるだけで印象がガラリと変わります。切り方・火の通し方・味の濃さを調整しながら、“行事ごはんらしさ”を演出するのがポイントです。
8. 保育園・介護施設での実践例
保育園では、子どもが自分で箸を使いやすいように根菜を短くカット。行事食の際には「星形」「ハート形」など、型抜きして提供すると大喜びです。
介護施設では、れんこん・ごぼう・にんじんをブレンダーで滑らかにし、寒天やゼラチンで固める「三色ムース」も人気。見た目が鮮やかで、食欲が落ちた方にも好評です。
9. 栄養バランスとPFCの目安
根菜中心の行事食では、たんぱく質が不足しがちです。豆腐、鶏ひき肉、ツナ、牛乳、豆乳などを組み合わせて補いましょう。
- エネルギー:500〜600kcal
- たんぱく質:20〜25g
- 脂質:15〜20g
- 炭水化物:60〜80g
行事の華やかさと栄養の両立を意識し、見た目・味・健康のすべてを整えることが「整活ごはん」の基本です。
10. おわりに ― 根菜でつなぐ秋の整活
根菜は、派手ではないけれど“支える力”を持った食材です。保育では噛む力を育て、介護では生きる力を支える。年齢を問わず、根菜は人を元気にする根っこのような存在です。
季節の移り変わりを感じる秋の行事食に、ぜひ一品でも根菜を取り入れてみてください。食卓に温かさが増し、心と体が自然に整っていくはずです。
次回は「子どもと楽しむハロウィンおやつ作り」を紹介します。

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