
tekowaです。
高齢になると、歯や顎の筋力が衰えることで「噛む力=歯ぢから」が低下していきます。噛む力が弱まると食欲不振や誤嚥のリスクが高まり、栄養不足や生活の質の低下につながります。しかし一方で、無理に硬い食材を食べようとすると危険が伴うことも。そこで今回は、介護福祉士の視点から「高齢者が無理なく噛む力を鍛える工夫」を解説します。安全で続けやすい方法を取り入れることで、健康寿命を延ばすことが可能です。
なぜ高齢者の噛む力は低下するのか
加齢による噛む力低下の要因は一つではありません。
- 歯の喪失: 入れ歯やブリッジを使用していても、天然歯と比べて噛む力は弱まる。
- 筋力の衰え: 顎や舌の筋肉が加齢とともに衰える。
- 唾液の分泌量低下: 唾液は食べ物を飲み込みやすくするが、加齢で減少し噛みにくくなる。
- 病気や服薬の影響: 脳血管疾患や糖尿病、薬の副作用なども噛む力を低下させる要因。
無理なく噛む力を鍛える工夫
大切なのは「安全に、無理なく」咀嚼力を育てることです。以下の工夫を組み合わせることで、効果的に噛む力を維持・回復できます。
① 食材の選び方
- やわらかすぎず、硬すぎない「適度な噛みごたえ」のある食材を選ぶ。
- 根菜類は薄切りにして煮る、魚は骨を取り除きながら焼くなど工夫する。
- 嚙み切りにくい肉類はひき肉や蒸し料理にして取り入れる。
② 調理法の工夫
- 「柔らかく煮る」だけでなく「形や歯ごたえを少し残す」ことを意識する。
- とろみをつけて飲み込みやすくする。
- 食べやすい一口大に切ることで噛む負担を軽減する。
③ 咀嚼トレーニング
- ガムをゆっくり噛む習慣を取り入れる。
- 「あいうべ体操」など口周りを動かす運動をする。
- 歌や会話、笑顔を意識的に増やし、口腔筋を動かす。
④ 姿勢と食事環境
- 背筋を伸ばし、椅子に深く座って食事をする。
- 食事中にテレビなどに集中せず、しっかり噛むことに意識を向ける。
- 家族や介護スタッフが声掛けして「よく噛んでね」と促すのも効果的。
実践しやすいおすすめメニュー
高齢者におすすめの“無理なく噛む力を鍛えられるメニュー”をいくつか紹介します。
- かぼちゃの煮物: 柔らかいけれど、ほくほく感で咀嚼が必要。
- 豆腐ハンバーグ: 噛みやすく、タンパク質もしっかり摂れる。
- 白身魚のムニエル: 骨がなく食べやすいが、適度な噛みごたえがある。
- やわらかれんこんの煮物: 薄切りにして煮ることで食べやすく、噛む回数も自然に増える。
噛む力維持は生活の質を高める
噛む力は「食べる楽しみ」そのものを支える力です。噛めなくなると食べたいものが食べられず、気持ちが落ち込み、さらに栄養状態も悪化してしまいます。逆に、少しでも噛む力を維持できれば、食欲や生活の質を大きく高めることができます。
まとめ:無理のない工夫で歯ぢからを守る
高齢者にとって「噛む力を鍛える」ことは、誤嚥予防や健康寿命の延伸に欠かせない取り組みです。しかし大切なのは無理をしないこと。適度な硬さの食材を選び、調理法や姿勢を工夫し、日常生活に口腔トレーニングを取り入れることが鍵となります。家族や介護者が寄り添いながら、安心して続けられる習慣を築くことが、長く健やかに暮らすための秘訣です。
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