学校給食から髪の毛やビニール片、プラスチック片が見つかった――。
そんなニュースを見ると、
「調理中に入ったのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、大量調理における異物混入の経路はそれほど単純ではありません。
食材は調理場に届く前から包装され、納品後には検収、開封、下処理、調理、盛り付けなど複数の工程を通ります。
デリバリー方式の給食なら、さらに容器への収納、配送、学校での受け取りや配膳といった工程も加わります。
2026年9月には、県立広島中学校の給食から緑色の物質、ビニール片、プラスチック片、髪の毛などが相次いで見つかりました。
では、こうした異物はどの段階から入り込む可能性があるのでしょうか。
大量調理における異物混入の考え方を整理します。
- 県立広島中の給食からビニール片・プラスチック片・髪の毛
- 異物混入は「調理中に入った」とは限らない
- ①原材料にもともと付着・混入していた可能性
- ②食材の包装を開けるとき
- ③調理器具や設備の一部が破損するケース
- ④髪の毛はどこから入る?
- 毛髪は「加熱されたか」を調べることもある
- ⑤盛り付け工程も重要
- ⑥配送中・配送後の工程
- ⑦学校での配膳中に入る可能性も
- 異物の「種類」が混入経路を探すヒントになる
- 「プラスチック片」だけでは原因は分からない
- 異物だけでなく「周辺情報」を残すことが重要
- 今回のパエリアは「食べ終える直前」に発見
- 異物混入対策は「出口」より「工程」で防ぐ
- 異物混入が起きたら「どこで入ったか」を追える仕組みを
- まとめ|給食の異物は「どこで見つかったか」だけでは判断できない
県立広島中の給食からビニール片・プラスチック片・髪の毛
広島県教育委員会は2026年9月18日、県立学校の給食における異物混入について発表しました。
県立広島中学校では9月16日、かに玉スープの食缶から直径約3mmの緑色の物質が見つかりました。
翌17日にはパエリアから、
- 直径約1cmのビニール片
- 約1.5cmのプラスチック片
- 約5cmの髪の毛2本
が確認されています。
同じ「異物混入」でも、異物の種類はバラバラです。
だからこそ、それぞれについて「どこから入った可能性があるのか」を個別に調べる必要があります。
異物混入は「調理中に入った」とは限らない
食品に異物が見つかったとき、まず思い浮かびやすいのが調理中の混入です。
しかし広島県は、食品への異物混入経路について、原料由来、製造ライン由来、保管由来、流通・小売由来、消費者由来など多岐にわたると説明しています。
学校給食でも同様に、異物を発見した場所と、実際に混入した場所が同じとは限りません。
給食が児童生徒の前に届くまでには、いくつもの工程があります。
①原材料にもともと付着・混入していた可能性
最初に考える必要があるのが原材料です。
大量調理施設衛生管理マニュアルでは、原材料を納入する際、調理従事者などが立ち会い、検収場で品質や鮮度、品温だけでなく、異物の混入についても点検して記録することが求められています。
つまり異物対策は、調理を始めてからではなく「食材を受け取る段階」から始まっています。
野菜などの食材であれば、土や植物片、虫などが付着している可能性があります。
加工食品なら、製造元での加工や包装工程なども含めて確認する必要があります。
だからこそ検収が重要なのです。
②食材の包装を開けるとき
次に考えられるのが、包装資材を開封する工程です。
大量調理では、多くの食材が袋やフィルムなどに包装された状態で納品されます。
その包装を切った際、切れ端などが食品側へ入り込まないよう注意する必要があります。
たとえばビニール片が見つかった場合には、
- 食材の包装フィルム
- 袋の切れ端
- 作業中に使用する袋類
- その他の樹脂製資材
など、現場で使われているものと照合することが原因究明の手掛かりになります。
ただし、県立広島中学校で今回見つかったビニール片が包装資材由来だったと判明しているわけではありません。
あくまで一般的に考えられる混入経路です。
③調理器具や設備の一部が破損するケース
プラスチック片などが見つかった場合には、器具や設備の点検も重要です。
厚生労働省は食品への異物混入防止について、食品取扱設備などに故障や破損があった場合には速やかに補修し、適正に使用できるよう整備しておくことを求めています。
大量調理では、多数の器具や容器が毎日のように繰り返し使用されます。
そのため、
- 器具に欠けがないか
- 容器に破損がないか
- 設備の部品が劣化していないか
- 樹脂製品などが破損していないか
といった点検が必要になります。
異物と施設内で使用している物品の材質や形状が一致するかを確認することも、混入経路を探す方法のひとつです。
④髪の毛はどこから入る?
給食の異物としてたびたび問題になるのが毛髪です。
厚生労働省は、食品取扱者について衛生的な作業着、帽子、マスクなどを着用するよう求めています。
しかし、髪の毛が見つかったからといって、直ちに「調理員の髪の毛」と断定することはできません。
食品が調理場を出たあとにも、人が扱う工程があるからです。
デリバリー給食なら、盛り付け、容器への収納、配送、学校での受け取り、配膳、喫食まで人が関わります。
そのため、毛髪についても「誰のものか」という推測から入るのではなく、どの段階で食品が開放された状態だったのかを追う必要があります。
毛髪は「加熱されたか」を調べることもある
異物分析では、さらに一歩踏み込んだ調査が行われることがあります。
広島県保健環境センターは、虫や毛髪について「加熱履歴」を確認するため、カタラーゼ試験を行う場合があると説明しています。
これは混入したタイミングを推定する手掛かりになります。
たとえば、異物が調理前から食品に入っていたのか、それとも加熱後の工程で入り込んだ可能性があるのか。
見た目だけでは分からない情報を分析によって絞り込める場合があります。
⑤盛り付け工程も重要
調理が終わったからといって、異物混入リスクがなくなるわけではありません。
完成した料理は、その後に食缶や容器などへ盛り付けられます。
ここでも食品が開放された状態になるため、異物混入防止が必要です。
県立広島中学校の過去の異物混入を受け、広島県教育委員会や保健所は、事業者の調理作業だけでなく「盛付作業」についても実地調査しています。
それだけ、盛り付けまで含めた工程全体を見る必要があるということです。
⑥配送中・配送後の工程
県立広島中学校の給食はデリバリー方式です。
調理施設で完成した給食は、学校まで運ばれます。
そのため原因を調べる際には、調理施設だけではなく、完成後から学校へ届くまでの状態についても確認する必要があります。
容器や食缶が適切に閉じられていたか。
運搬に使用する設備や容器に破損などがないか。
学校到着後、配膳までどのように管理されていたか。
こうした工程も切り分けて考える必要があります。
⑦学校での配膳中に入る可能性も
給食は学校へ到着したら、そのまま児童生徒の口に入るわけではありません。
教室などで配膳する工程があります。
広島県教育委員会は過去の県立広島中学校の異物混入を受け、学校側にも給食当番のエプロンや三角巾、マスクなどの身だしなみを再確認するよう求めています。
さらに、机上を整理することや、教職員が配膳・給食の様子を見守ることなども対策として示されました。
つまり原因究明では、調理事業者だけではなく、学校での配膳工程も確認対象になります。
異物の「種類」が混入経路を探すヒントになる
異物が見つかったとき、その材質や形状は非常に重要な情報になります。
広島県保健環境センターでは、まず異物を観察し、必要に応じて機器分析を行っています。
金属や石などであれば元素分析。
樹脂や有機物が疑われる場合には、FT-IRと呼ばれる分析方法によって材質や成分を推定することがあります。
たとえば食品から樹脂片が見つかった場合、その材質を工場内で使用している樹脂製品と比較することで、原料由来なのか、製造ライン由来なのかを判断する手掛かりになる可能性があります。
「プラスチック片」だけでは原因は分からない
ここで重要なのが、異物の名前だけで原因を決めないことです。
「プラスチックだから調理器具」
「ビニールだから食材の袋」
「髪の毛だから調理員」
と単純に結びつけることはできません。
必要なのは、実際の異物と現場にある物品、作業記録、工程などを照合することです。
異物の色、形、大きさ、材質などが、どの物品と一致するのか。
その物品が食品と接触する工程があったのか。
破損や紛失が確認されていないか。
こうした情報を積み重ねて混入経路を絞り込みます。
異物だけでなく「周辺情報」を残すことが重要
広島県は異物分析について、異物そのものだけでなく、パッケージや開封状態などの情報を集め、総合的に判断することが重要だと説明しています。
これは大量調理の原因究明でも重要な考え方です。
たとえば、
- どのメニューから見つかったか
- どの食缶・容器だったか
- いつ発見されたか
- 配膳前か、食べている途中か
- 同じ異物がほかにもないか
- その日に使用した食材や包装
- 器具や設備に破損がないか
などの情報が原因究明の手掛かりになります。
今回のパエリアは「食べ終える直前」に発見
県立広島中学校で9月17日に異物が見つかったパエリアでは、異物が料理の中に埋もれていました。
教員が発見した時点では、すでにほとんど食べ終えていたと報じられています。
一方、前日のかに玉スープでは、配膳中に食缶の中に浮いていた緑色の物質を生徒が発見し、提供が中止されました。
異物の形や料理の状態によって、発見できるタイミングも変わります。
だからこそ「最終確認で全部見つければいい」という対策だけでは限界があります。
異物混入対策は「出口」より「工程」で防ぐ
完成した何百食もの給食を、異物がないか一つひとつ完全に確認することは簡単ではありません。
特に今回のパエリアのように料理の中へ埋もれた異物は、表面を見ただけでは発見できない場合があります。
そのため異物混入防止では、完成品を最後に見るだけではなく、
- 納品時に異物を持ち込まない
- 包装を安全に開封する
- 器具や設備の破損を防ぐ
- 身だしなみを整える
- 盛り付け時の混入を防ぐ
- 配送・配膳時にも食品を守る
というように、それぞれの工程でリスクを減らしていくことが重要です。
異物混入が起きたら「どこで入ったか」を追える仕組みを
異物混入を防ぐ対策と同じくらい重要なのが、発生したあとに原因を追跡できることです。
厚生労働省は、食品事業者に対して異物混入の可能性を点検し、必要な防止措置を講じることを求めています。
異物が見つかった場合には、保健所などの助言・指導のもとで迅速かつ効果的な原因究明を行うことも重要です。
原因が分からなければ、再発防止策も的確に選べません。
まとめ|給食の異物は「どこで見つかったか」だけでは判断できない
学校給食から髪の毛やビニール片、プラスチック片が見つかった場合、発見された場所だけを見て混入原因を判断することはできません。
大量調理では、
- 原材料
- 検収
- 包装の開封
- 下処理
- 調理
- 盛り付け
- 配送
- 学校での配膳
など、多くの工程があります。
広島県も、食品の異物混入経路は原料、製造ライン、保管、流通など多岐にわたるとしています。
異物混入の原因を調べるには、「誰が入れたのか」と決めつけるのではなく、「どの工程から入ったのか」を一つずつ切り分けることが重要です。
県立広島中学校で今回確認されたビニール片、プラスチック片、髪の毛についても、実際の異物と使用していた資材・器具・設備、作業工程などを照合し、混入経路を明らかにすることが再発防止につながります。

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